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96のチラシの裏:浦和レッズについて考えたこと

浦和レッズを中心にJリーグの試合を分析的に振り返り、考察するブログ。戦術分析。

【今日のチラ裏】渡邊絶対的凌磨

浦和レッズ、つらい。

www.jleague.jp

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開幕節の引き分けを「ポジティブです」と書いた僕がバカみたいなつらみを注入してくる浦和レッズさん、さすがつらさのレパートリーが違います。さえない結果となった理由は京都のプレスがどうとか湘南は3バックなので戦術の噛み合わせがどうとかいろいろとあると思いますが(むしろ僕はそういう話が好きですが)、今日のチラ裏ではやはり渡邊凌磨選手の負傷離脱に触れておきたいところ。

渡邊絶対的凌磨

今季のボランチはオーバータスクになるんじゃないか的な話を開幕前に書きましたが、ふたを開けてみると単純な運動量や仕事量だけではなく、質的にも凌磨に依存する部分が大きい感じの基本設計だったんだなと思います。特に、セカンドボールなどランダムな状況からボール保持に移るタイミングやビルドアップで捕まりかける場面において、凌磨のダブルタッチ的なあれこれとかなんとかで相手選手を外したりボールを守ったりして時間はかかるけどいったん落ち着くやつ、あれが今季のチームにはめっちゃ重要なのではと感じています。

まだ3試合ですが、やはり正男と金子の両SHはボールが入ると前前の選択肢になりますし、チアゴもずっしりどっしりボールを収めてくれる感じではないしということで、今季も浦和レッズさんのオフェンスは凌磨のアレがないとボールが落ち着くところがあんまりないまま前に前に忙しい感じがします。特に第2節京都戦の15分で凌磨が早々に負傷退場して以降、京都戦・湘南戦どちらもボールが落ち着かないので選手同士の動き出しのタイミングが合っていない印象を僕は強く受けていて、それがユニットのつながりの無さ、オフェンスの単発感、ひいては無戦術的な萎え萎えの試合感に繋がっているような気がしています。

たぶん「あ、凌磨のところでボールが落ち着いたからこれから動き出しのタイミングを計れるな」みたいな状況がチームからなくなっちゃうんでしょうね。当然ボールが安全でなければ後ろもうかつに押し上げられないし、ボールホルダーを追い越すようなサポートも難しいし、前線、逆サイドの選手も裏抜けや動き出しがしにくくなります。組織論で良く言う「チームメンバーの心理的安全性を確保することが積極的で前向きな組織づくりには重要」的なやつです。浦和レッズのオフェンスにとっての心理的安全性を担保していたのはチームで一番走り回っている凌磨、お前だったんだな。明らかにオーバータスクというか依存状況だな。そらいなくなったら厳しいわ。

もうひとつ、最終ラインのビルドアップ性能の怪しさも凌磨不在によってはやくも晒されてきているというか、大丈夫なのかなという感じです。ビルドアップの第一歩の役割としてのマリウスへの(外国人選手としての)能力的な物足りなさはもう慣れっこなのでこれは前提(前提)として、個人的にはダニ郎がこの辺を上手く担ってくれてマリウスの弱点を補完してくれたら今季はハッピーハッピーじゃんと思っていたのですが、京都戦・湘南戦の印象では思ってたんと違うぞ感が凄いです。YouTubeではあんなにチャラチャラとボールを浮かせていたはずなのに、なんでハマってるところにパターキックしているんだ君は。はっきり言って僕は今季の(というかすこの)浦和レッズさんにビルドアップにおける盤面的もしくはサッカー原理的な解決をほぼ期待していないので、相手が2トップでプレスに来るならどうこうとかを細かく検討していく気はないのですが、とはいえ誰かはそういうことをやってくれないと困るのは自明だし、チームビルディングの部分でそういうところに時間を割かない代わりに「できる人」を調達してきたんだと思っていたのですが、なんか不安になってきました。いや日本の寒さにテンションが上がらないだけかもしれないしまだ時差ボケが残っているのかもしれないしバタバタと合流していろいろ落ち着かないだけなのかもしれないのでまだ評価には早いのだと思いますが。

もしダニ郎もマリウスも寄せられたらモームリ属性のセンバなのだとしたら、基本的には今季の浦和レッズさんはビルドアップの第一歩を有利に踏み出すことができないチームということになるので、プレスを頑張っていく方向性の(つまりほぼすべての)J1クラブに対して根本的なアドを取られることになります。2枚のセンバに対して2枚ぶつけたら即困るわけですから相手からしたらコスパがいいですよね。従って浦和レッズさんは最終ラインに3枚目を用意する(今のところたいていボランチを落とす)わけですが、これによって…(昨シーズンと同様)。

まともなサンプルが開幕節神戸戦の90分+αしかない中で、このあたりのビルドアップの不安を凌磨が一手に引き受けていたとまでは言いませんけど、困った時に凌磨に渡せば比較的高い確率でなんとかしてくれるかも、という信頼はあったはずです。しかも自分のところで一枚剥がすなりボールを守るなりしてくれるのでそこでいったんボールが落ち着いて前述の話に繋がると。安居はセカンドボールハンターとしてなかなかの仕事ぶりを見せていますが、オンザボールではこれまでにも増してワンタッチで近い味方に預ける傾向が強いような気がしていて、それはそれでボールを繋ぐ手段だし効率的な場合もありますが、前述のボールを落ち着けるみたいなところからは離れます。ではビルドアップ宣教師の不遜様であれば問題なかろうと言われると、ここ2試合の感じではやっぱり凌磨のようなボールの収まりとはちょっと違う感じです。高い展開力は随所に見せていますけど、突然の出場だった京都戦はともかく湘南戦もあれだけしっかり消されてしまうとそこからなんとかして一枚処理しておくれというオーダーは厳しそう。となると不遜プランはまた別のロジックで考えるということなのでしょうが、京都戦・湘南戦ではその辺の具体的な仕組みや仕掛けを見出すのはちょっと難しかったなという印象でした。

つまるところ、単純な移動距離やプレー強度、攻守におけるタスクの多さといったバイブス面に加えて、チームがやりたいことの根本的な質的前提を凌磨が担うことになっていて、その上で存在感のある2列目やパシージョがどうとかいったオプションが乗っかっているというのが今季の浦和レッズさんの基本設計であり、凌磨がプレーできないとなるとこれが根本的に崩れちゃうのでは、というのが今の時点での心配事です。両腕両肩に半端ない研究開発費をかけためちゃつよの武器を装備した人型ロボットを製造し実戦配備したところ、出撃2回目で股関節の大事な部品がぶっ壊れて動けなくなったみたいなイメージです。詰んどるやんけ。というわけで僕は渡邊凌磨選手の今季のチームにおける絶対的存在価値を評して「絶対的」の称号を彼に付与し、ここに早期復帰を祈念します。まじで軽症であれ。

で、じゃあなんですこは凌磨になんでも背負わせるのさ!基本設計がおかしいやろ!となるわけですが、それはその通りなんですが、すこの気持ちもわからないでもないです。去年はチームナンバーワンのリーグ戦3,385分出場、走行距離はリーグでナンバーワン、6G5Aは12G2Aのチアゴに続く成績ですからね(ご参照)。こいつを軸に設計しないでどうするんやと言うのは確かにそうです。さはさりながら特定の選手への依存度が高すぎるのはリスクやろ!というのもわかるんですが、じゃあ凌磨を責任身分から解放するならどうするのと言うと、やっぱサッカーの原理的な部分にアプローチしてビルドアップは盤面で解決しようみたいな方向性になるのかなと思いますが、それができるなら最初からそういうアプローチになるわけで、その片鱗はもう見えてないとおかしいし、それができる選手を別のリスクを負ってでも使うべきであって、そういう考え方じゃないからこういうメンバーなわけで…となっていくわけで。結局のところボールの収まりどころがもう少し必要ならトップにとんでもないボール包容力を持つ選手を置いてみようとなるわけですが、とはいえプレスにも行きたいし裏抜けして相手の最終ラインを引っ張ってほしいし1試合1ゴールくらい期待したいしとなるとそんな化け物どこで見つければってなっちゃうみたいな現実もあるんでしょうし(実際シーズン中の補強の可能性はあるんでしょうけども)。僕もなんでもかんでも現場は頑張ってるんだからと擁護したいわけではないんですが、与えられたカードでプレーするしかないという話に従うならば、できるしやってくれる凌磨をレバレッジにチームとしての期待値を追い求めようみたいな発想はわかってしまう部分もあります。

そんな感じの思考ループがあったうえで、とりあえず正男と金子も来てくれたしこいつらがサイドでボールを収めてくれたら負担感もマシじゃない?みたいな落としどころに辿り着き、前回のチラ裏に書いたような印象に繋がっていくという感じです。実際、凌磨が真ん中である程度ボールを落ち着けてくれれば相乗効果でサイドに余裕ができるわけで、その分SHが時間を謳歌して相手の目線やマークを引っ張れば松本なりチアゴなりSBなり凌磨なりが前に絡んでいく可能性が拡がるわけで、そうやって前でバランスがとれてチーム全体がバイブスを掴んでいければ前向きにゲームを展開できるので安居の仕事やセンバの強さも活きてくるわけで、正のループが回る感じがしたんですよ、神戸戦は。したんですよ、そんな感じが。それがまさかこうなるとは思わんやん。つらい。みんな頑張れ。

 

今日のチラ裏はここまで。