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加湿器シーズン本番 スチーム式が再評価? もう迷わない加湿器選び
2024年12月13日 08:20
乾燥が気になる季節になり、加湿器の利用や購入を考えている人も多いのではないでしょうか。一口に加湿器といっても、加湿器には超音波式、気化式、加熱式、ハイブリッド式などの方式があり、それぞれの特徴やメリット・デメリットが異なります。
最近は各方式ごとにラインナップも増え、選択肢も広がってきました。また、トレンドも時代とともに変化しています。今回は、加湿器トレント変遷と、状況に応じた選び方、おすすめ機種を紹介したいと思います。
安価で大人気だった「超音波式加湿器」の今
2000年前後から、シンプルな構造と視覚的な魅力、求めやすい価格などで、超音波式加湿器が急速に普及しました。超音波振動によって水が微細なミストとなり、空中に拡散される仕組みです。
カラフルなLEDライトやアロマ機能を搭載したスタイリッシュなモデルも多く登場し、家電量販店だけでなく、雑貨店でも手軽に入手できるようになりました。
しかし、近年は、特にファミリー層を中心に利用者が減少傾向にあります。その理由は、広い空間への加湿が難しいことと、衛生面への懸念が強まっているためです。
超音波加湿器は水滴が周辺に落下するため、基本的に加湿器の付近には効果が高いのですが、広い部屋全体の加湿には不向き。また、水タンク内の水が雑菌で汚染されると、雑菌がミストとともに拡散されるリスクがあるため、定期的な清掃と新鮮な水の使用が必要です。
また、もう一つデメリットがあります。超音波式は、超音波振動で水を微細な霧状にして放出しますが、この霧には水道水中のミネラルや不純物が含まれており、家具や床に白い粉として付着することがあります。
ハイブリッド式(加熱気化式)の台頭
加湿性能や衛生面への関心が高まったことで、気化式加湿器やハイブリッド式(加熱気化式)加湿器にも注目が集まりました。
気化式は、水を含ませたフィルターに風を当てて水分を蒸発させるシンプルな構造。水の粒子が小さいため雑菌を抑えられるというメリットがあります。
ハイブリッド式は、2つの方式を組み合わせたものの総称ですが、加熱式と気化式の組み合わせがほとんど。加熱気化式、温風気化式などとも言います。
加湿の仕組みは、水を含ませたフィルターに、ヒーターで温めた空気を当てるという方法。加熱気化式はヒーターを使っているので、超音波式や通常の気化式以上に加湿性能が高く、雑菌の繁殖を抑えやすいというメリットがあります。ヒーターを使っていますが出てくるミストは熱くないので、小さな子供がいても安心な点もポイントです。
部屋がある程度加湿されたらヒーターをオフにして気化式のみで運転するモードなどもあり、節電性も備えているのがハイブリッド式の特徴です。
ハイブリッド式への注目が集まったタイミングで、新型コロナウイルス感染症が流行し、加湿器自体の需要も増加しました。
早くからハイブリッド式(温風気化式)加湿器を販売していたダイニチ工業では、2020年4月における加湿器の出荷台数が前年同月比約300%、2021年2月の加湿器出荷金額は前年同期比約700%となったことを発表しています。
ただ、ハイブリッド式にもデメリットがあり、フィルターやトレイなど、お手入れが必要なパーツが多いという面があります。衛生面に配慮されていても、フィルターやトレイには水垢が付着する可能性があり、定期的な洗浄は欠かせません。特にフィルターは変色しやすく、クエン酸などを使った入念な掃除が必要な場合もあります。
そんな「お手入れが簡単なものがほしい」という声に応え、ダイニチ工業では2019年に「カンタン取替えトレイカバー」を搭載した製品を発売。このカバーは、シーズンごとに交換するだけで済み、手間のかかる洗浄が不要です。
フィルターも使い捨てタイプが登場し、より手軽なメンテナンスが可能になりました。ランニングコストはかかりますが、加湿器の衛生管理の重要性を考えると、手間をかけずに清潔な加湿環境を維持したいという消費者のニーズに応えていると言えます。
ちなみに、ハイブリッド式ではない気化式のみのモデルは、加湿器単体よりも空気清浄機と組み合わせた「加湿空気清浄機」といわれるモデルの方が、売れ行きが良い傾向にあります。加湿空気清浄機に採用されている方式は、ほとんどが気化式なのです。
1台で加湿と空気清浄機どちらもまかなえるので、省スペースに置きたい人におすすめできます。ただし、タンクの容量が限られるので加湿できる範囲には限りがあり、より広い範囲を加湿したい人には、加湿器単体のモデルの方が良いでしょう。
加湿性能の高さでスチーム式が再評価
加湿性能の高さと、衛生的に使える加湿器を求めるユーザーが増加している中で、改めて注目されているのがスチーム式(加熱式)です。
電気ポットのようにお湯を沸かし、蒸気で加湿を行なうだけの、とてもシンプルな構造です。フィルターなどもないのでお手入れはとても簡単。水を高温で沸騰させるため、雑菌が繁殖しにくく、衛生的です。高温の蒸気を出すため、部屋が寒くなりにくく、加湿力も高い方式です。
スチーム式はもともとある方式ですが、ほとんど電気ポットと同じ構造なので、沸騰中の運転音や、電気代の高さといったデメリットが挙げられることが多くありました。
ですが加湿器自体が普及する中で、やはり加湿性能が高い方が良い、部屋も温かくなるから一石二鳥など、再評価する声が高まるようになったのです。
スチーム式加湿器を販売する代表的なメーカーといえば、象印マホービン(以下、象印)です。家電量販店のオンラインサイトなど加湿器の売り上げランキングを見ると、上位はほとんど象印のスチーム式という状態になっています。人気の理由は、上記の加湿性能の高さと手入れの簡単さに加え、電気ポットで長年培われた安全に関する技術を活かした安全性と、操作のしやすさです。
スチーム式加湿器は高温の蒸気を使用するため、安全性が特に重視されています。具体的には、沸騰した蒸気が約65℃まで温度が下がってから放出される設計や、転倒時に湯漏れがしにくい構造です。また、象印は初心者でも迷わず操作できる直感的な操作パネルも人気。
電気代も、同社の算出によると、例えば1時間の加湿能力が350mlの同社35サイズの場合、1時間あたりの電気代は約9.1円(新電力料金目安単価31円/kwh)。就寝時の8時間利用すると約73円、1カ月で約2,200円。冬の時期だけなら高すぎるということもないでしょう。
スチーム式加湿器の電気代を教えてください - 象印マホービン
現在、スチーム式加湿器では象印が市場で主力メーカーとなっていますが、他のメーカーも負けじと使いやすさや省エネ性を重視した製品を展開しています。例えば、水タンクが外れやすくて水の補充やお手入れが簡単なものや、必要な分だけ水を加熱する省エネタイプのモデルも登場し、注目を集めています。
スチーム式は熱湯を使用するため、安全性が最も重要です。熱湯が漏れるリスクを避けるために、信頼できるメーカーから購入することをおすすめします。
ちなみに加熱式が再評価されたことにより、加湿器普及の一役を担った超音波式と組み合わせた「加熱超音波式」というハイブリッド式も、ここ数年で登場するようになりました。
ただ、白い粉の問題は残ったままで、ユーザーにとっては掃除の手間が増えることが不満の原因に。衛生面やメンテナンスのしやすさを重視するユーザーが、他の方式(気化式や加熱式)に切り替える傾向が見られます。
適切、効果的な使い方を
加湿器の「適度な湿度を保つ」という基本的な仕組みに大きなテクノロジーの変化は見られず、現在も超音波式、気化式、スチーム式、ハイブリッド式(加熱気化式・温風気化式・加熱超音波式)の各製品が販売されています。
ただし、細かい機能にさまざまな工夫を凝らしており、省エネ性能や静音性の向上、お手入れの簡易化など、従来モデルに比べて大幅に改良されています。その結果、10年前の製品と比較すると、使いやすさが飛躍的に向上。現在は、スチーム式加湿器のメリットが再評価されていますが、製品を選ぶ際には、ご家庭の環境や用途に合ったモデルを選ぶことが大事です。
狭い範囲での利用で本体価格を抑えたいなら超音波式、高い加湿性能と節電性を求めるならハイブリッド式(加熱気化式・温風気化式)、高い加湿性能に加えて部屋の温かさとお手入れのしやすさを重視するならスチーム式といったところでしょう。
加湿器は使い方によって効果が大きく変わります。窓際や壁際から離し、床から50~100cmの高さに設置するのがおすすめ。特に壁や窓に近い場所にあると、湿気によって結露が発生しやすくなるため、注意が必要です。また、超音波式加湿器は、電子機器から十分に離して置くことが望ましいです。
サーキュレーターを併用も効果があります。空気を循環させることで、加湿された空気が部屋全体に広がりやすくなり、効率的に加湿できます。
寒さが本格的になり、加湿器もシーズン本番を迎えました。これから加湿器を利用する人、購入を検討している人がいましたらぜひ参考にしてみてください。