Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

グロッグとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 食物 > 飲料 > 飲み物 > グロッグの意味・解説 

グロッグ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/02 07:22 UTC 版)

Grog

グロッグ英語: grog)は、ラム酒水割りのこと。特にイギリス海軍の乗員に支給された酒 (ラム・レーション英語版) を意味する。近年では、下記のようなカクテルとしても飲まれている。カクテル名はラムに水を混ぜることを考えたイギリス海軍提督のあだ名から付けられた。

由来

キャヴァリア艦内にあるグロッグの樽

大航海時代、長期の航海では樽に入れた飲み水にが生えて飲めなくなるため、船員への水分補給に酒を配給していた。もともとはビール1ガロン=8パイントであったが、航海の長期化は液体の保存の困難さや積み込み量を増大させたことから、これをワインまたはスピリッツ蒸留酒)1パイントに置き換えることができるとされた。1655年ジャマイカ征服後は、入手の容易さからラム酒がブランデーに取って代わり、1731年には正式に規則で 1/2 パイント (284ミリリットル〈mL〉) が配給量として定められた。

イギリス海軍の提督エドワード・バーノン英語版は、配給されたラム酒を水兵がすぐに飲まず、数日分をためてから飲み干すという悪癖とそれが引き起こす問題への対策として、保存できなくするために 1/2 パイントのラム酒(rum)と水を 1:4 の割合に混ぜて、さらに1日2回に分けて配給する事にした(1740年8月21日)。これは船員には不評で、提督の着ていたグログラム (Grogramという絹と毛の混紡の粗い布地の上着から “Old Grog” というあだ名が提督に付き、この飲み物は “Old Grog'ram” すなわち “Grog” と呼ばれるようになったという(ラム酒のエピソード項参照)。ラム酒の支給は1823年には半分の 1/4 パイント (142 mL)、1850年にはさらに半分の 1/8 パイント (71 mL) に削減されている。ラム酒と水の割合は初期には 1:4 であったが、第二次世界大戦までは 1:3、戦後は 1:2 であった。また、罰則として 1:6 に薄められることもあったとされる。

後にレシピにレモンジュースが加えられるが、これは壊血病対策として、1795年に当時の医学的意見(医療関係者によって体内の腐敗が原因であるという誤った主張がなされていた)を無視して提督たちの遠征結果から英海軍本部がレモンジュースと砂糖を通常の食事の一部として導入したためである。スペインフランスが対イギリス同盟を組んだ第二次サン・イルデフォンソ条約以降、レモンが入手できなくなると代替品として西インドライムが使用された。イギリス人のあだ名に「ライミー英語版」が使われるようになったのはこれがきっかけである。

アメリカ海軍においては1794年に議会によってビール1クォートまたはスピリッツ1パイントが認められていたが、1797年にスピリッツ 1/2 パイントに削減された。この当時、配給に使われたスピリッツとはラム酒であったが、トーマス・ジェファーソン大統領のもとで海軍長官を務めたロバート・スミスは、1805年で4万5000ガロンが配給で消費されたラム酒を国内産であるアメリカ製ライ・ウイスキーで代替することを発案し、1806年には2万ガロンをライ・ウイスキーとし、また、バーノン提督同様に水で希釈して配給するよう指示した。これが受け入れられたことから配給はライ・ウイスキーへと永続的に変更されたが、水兵たちはイギリス海軍に倣って水で割ったライ・ウイスキーを「ボブ・スミス」と呼んだと言われる。

イギリス海軍では1970年7月31日までグロッグ(正確には水で希釈済みを渡されるのは下士官兵で、士官にはラムがそのまま支給された)の配給を続けた。この最後の配給日は水兵の嘆きをもって「ブラックトットデイ英語版」と呼ばれている。スピリッツの配給はアメリカ海軍は1862年、カナダ海軍が1972年、ニュージーランド海軍では1990年に廃止されているが、21世紀の今日においてラム酒の配給が完全に無くなったわけではない。

Splice the mainbrace英語版
帆船時代の「戦闘中に切れた主檣の転桁索を繋ぎ直す」という困難な任務の達成においてラム酒の追加配給を行ったことを起源とする報奨の婉曲表現がある。ただし、この命令の発令者は非常に限られている[注釈 1]。ブラックトットデイ以降でこの命令が出された例として、チャールズ皇太子の成婚、ウイリアム王子の誕生、フォークランド戦勝、エリザベス女王在位50周年、トラファルガー戦勝200周年記念観艦式、カナダ海軍100周年、エリザベス女王在位60周年、ルイ王子の誕生[1]などがある。

現代での用法

北欧諸国などではグリューワイン(ホットワイン)を「グロッグ」(: Gløgg: Gløgg)と呼ぶが「海軍で配給されたラム酒 (rum ration)」との関連は無い。スウェーデン語での glödgad は焼きなましを意味し、転じて焦げた、温めたの意味であり、起源は16世紀に遡るため全くの別物である。北欧諸国や英語圏の一部サブカルチャーで用いられるラム酒を起源とするグロッグは、ソフトドリンクで割った蒸留酒一般を指す。

オーストラリアでは開拓初期から数十年間、労働者階級にとって “Sly grog shop(酒類販売免許を持たない非合法な酒店)” の希釈あるいは粗悪なグロッグが入手できる唯一のアルコール飲料であったことから、現代のオーストラリア、ニュージーランドではグロッグはアルコール飲料に関連する俗称となっている。

また、酔ってふらふらの状態をグロッキーと呼ぶ事があるが、グロッグを飲み酩酊状態に陥った者という意味の「グロッギー (groggy)」が転訛したものである。

標準的なレシピ

作り方

  1. 温めたタンブラーに、ラム、レモン・ジュースを注ぐ。
  2. 角砂糖、シナモン・スティックを入れる。
  3. 熱湯で満たす。
  4. かき混ぜる。
  5. クローブを浮かべる。

備考

  • 各材料の割合は、飲む人の好みに応じて増減される場合もある。

バリエーション

コーヒーにラムを入れたもの(ラムのコーヒー割り)を、コーヒー・グロッグと呼ぶ。ただし、通常はラムの他に適量の砂糖やバターを加える[2]。このコーヒーにラムを入れるという飲み方は特に北ヨーロッパで好まれている[3]。なお、バターの代わりに生クリームを使う場合もある[2]

類似の飲み物

オーストリアからドイツ南部にかけて、ヤーガーテー(ドイツ語: Jagerteeもしくはイェーガーテー (Jägertee) と呼ばれるホットカクテルが冬季の名物となっている。名称は「猟師のお茶」を意味し、紅茶と「国産ラム」(アルコールと水を混和し、色素や香料でラムに似せたスピリッツ)を混ぜ合わせてスパイスや砂糖を加えてから、グリューワインのように温めて提供される。瓶詰めされた調味済みイェーガーテーも市販されている。

出典

注釈

  1. ^ たとえば、イギリス海軍であれば国王(女王)、王族、海軍委員会。カナダ海軍であれば国王(女王)、カナダ総督、国防長官のみとなる。

出典

  1. ^ FC Brunssum Public Affairs Office. “JFC BRUNSSUM ROYAL NAVAL PERSONNEL SPLICE THE MAINBRACE” (英語). Allied Joint Force Command Brunsum. 2024年4月14日閲覧。
  2. ^ a b 柄沢 1995, p. 49.
  3. ^ 柄沢 1995, p. 153.

参考文献

  • 柄沢和雄『コーヒードリンク246』柴田書店、1995年8月10日。ISBN 4-388-05755-X 

関連項目

外部リンク


グロッグ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/29 05:42 UTC 版)

Yoho ahoY」の記事における「グロッグ」の解説

イメージカラーイエロー両腕失った男。料理担当で、普段厨房にいる。

※この「グロッグ」の解説は、「Yoho ahoY」の解説の一部です。
「グロッグ」を含む「Yoho ahoY」の記事については、「Yoho ahoY」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「グロッグ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「グロッグ」の例文・使い方・用例・文例

  • ちょうどグロッグを1杯飲んだところだ。
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



グロッグと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「グロッグ」の関連用語

グロッグのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



グロッグのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのグロッグ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、WikipediaのYoho ahoY (改訂履歴)、トライピース (改訂履歴)、ノウンスペース (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS