した‐え〔‐ヱ〕【下絵】
版下 (浮世絵)
(下絵 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/18 06:09 UTC 版)
版下(はんした)とは、書画版木の下書きである。本項では、版本ではない、一枚摺りの浮世絵版画に限定して述べる。
概要
浮世絵版画は絵師だけで生まれるものではなく、版元-絵師-彫師-摺師の分業によって成り立っている。また画題も、版元もしくは出資者が決めるものであって、絵師は彼らの要求に応えねばならない。
版元ないし出資者から注文を受けた絵師は、作図案を提出する。これが「版下」である。輪郭線のみの図である。版元の了承を得た後、名主、或いは版元業界の自主組織から、検閲を受ける必要があった[注釈 1]。
審査を通り、「改印(あらためいん)」を捺された版下は、彫師に渡る。そのまま彫摺すると、像が裏向きになってしまうので、版下を裏返して版木に貼り付け、小刀で輪郭を切り出し、不要な部分を各種鑿で浚う。鏡像を見やすくする為、版下には薄手の和紙を用い、版木に貼って乾かす[3][4][5]。彫られた結果、版下は木屑と共に消亡する。
但し、葛飾北斎の『千絵の海』や『百人一首うばがゑとき』[注釈 2]のように、揃い物が完結しなかった為、版下が現存するものもある[7][5][8][注釈 3]。
脚注
注釈
出典
- ^ 菊池ほか 1982, pp. 120、122-123.
- ^ 小林・大久保 1994, pp. 218–219森山悦乃「江戸幕府の出版統制」
- ^ 菊池ほか 1982, pp. 82–83.
- ^ 小林・大久保 1994, pp. 177–178製作の場から-企画から完成まで
- ^ a b 国際浮世絵学会 2008, p. 411大久保純一「版下」
- ^ モース 1996, p. 16.
- ^ 菊池ほか 1982, p. 83.
- ^ 鈴木 2017, pp. 480–503.
- ^ 小林・大久保 1994, p. 188小林・安達「浮世絵と共に50年」
参考文献
- 鈴木重三「『千絵の海』をめぐって」 『葛飾北斎千絵の海』アダチ版画研究所、1972年。
- 鈴木重三「『千絵の海』をめぐって」 『改訂増補絵本と浮世絵』ぺりかん社、2017年10月30日、480-503頁。ISBN 978-4-8315-1485-1。
- 菊池貞夫、ほか「版下」 『原色浮世絵大百科事典3 様式・彫摺・版元』大修館書店、1982年4月15日、82-83頁。
- Morse, Peter (1989-8-1). HOKUSAI:One Hundred Poets. New York: George Braziller. ISBN 978-0-80761-213-2
- モース, ピーター 著、高階絵里加 訳 『北斎百人一首うばがゑとき』岩波書店、1996年12月12日。ISBN 4-00-008184-5。
- 大久保純一 著、小林忠、大久保純一 編 『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年5月20日。ISBN 978-4-7843-0150-8。
- 国際浮世絵学会 編 『浮世絵大事典』東京堂出版、2008年6月30日。ISBN 978-4-4901-0720-3。
関連項目
下絵(シノピア sinopia)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/01 06:40 UTC 版)
「フレスコ」の記事における「下絵(シノピア sinopia)」の解説
中間層に、水で溶いたシノピア、ヴェルダッチョなどの顔料による下絵を描く。下絵を描く目的は全体像を確認するとともに、ジョルナータの区分を明確にすること。この層は完全に次の層に被われるため顔料の定着に留意する必要はない。そのため区分せず全画面は一度に描かれる。また次の漆喰層の定着のために下絵完成後、表面にケガキで筋状の傷を付けることが多い。原寸大の紙に描かれた下絵(カルトーネ cartone)を漆喰に転写する方法には、壁の上に重ねたカルトーネの上を尖ったものでなぞるけがき法(インチジオーネ incisione)と、カルトーネに針で穴を開け、その穴から顔料を透過させる方法(スポルベロ spolvero)とがある。
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「下絵」の例文・使い方・用例・文例
- 下絵を書く
- 刺繍の下絵
- これを下絵にして彫刻して貰いたい
- 下絵師
- 蒔絵で器物に直接下絵を描くこと
- 絵の下絵を描くこと
- 日本画の下絵として,墨で線書きしたもの
- 日本画の下絵として,墨で線書きをする
- 墨描きの下絵に彩色すること
- 墨描きの下絵に彩色した絵
- 洋裁において,型紙の下絵
- 日本画で,念紙という,下絵を写しとるための紙
- 下絵を描くために木の枝の先端を焼いて筆にしたもの
- 下絵用の筆
- 陶磁器の素地に下絵の具で絵付けをすること
- 油絵の具で書いた下絵
- 下絵の具という,陶磁器用の絵の具
- 細部は省略した簡単な下絵
- 手ぬぐいの下絵を描くとき,私はその絵がどのように染められるのかを常に考えます。
- 下絵に何度も手を加えます。
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