たいめん‐こうつう〔‐カウツウ〕【対面交通】
対面交通
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 16:19 UTC 版)
対面交通(たいめん こうつう)とは、道路交通における双方向輸送の一つであり、道路交通上のルールの一つ。車道と歩道の区別が無い道路で、車両[1]は左側、歩行者は右側、のように車両と歩行者が左右に分かれて通行し[2][3]、道路の片側では車両と歩行者とが対面する(互いに向かい合う)形で通行すること[2][3]。また、その方式をも指す[3]。車両が右側を通行すると定められている国家・地域では、対面交通の場合、歩行者は左側を通行することになっている(あるいは、定められている)。
車両と歩行者とが相互を認識しながら通行することで安全性が高まるという考えに基づいている。
各国の状況
日本とは逆に車両が右側通行である国々では、歩行者は左側通行となっている例が多いが、規定のない国や両側が認められている国もあり、必ずしも全ての国で「対面交通」が法的に定められている訳ではない[4]。
国 | 車両の通行側 | 歩車非分離道路における歩行者の通行側 |
---|---|---|
イギリス | 左側 | 規定なし(右側を奨励) |
インド | 右側 | |
香港 | 規定なし(右側を奨励) | |
オーストラリア | 道路際(両側) | |
日本 | 右側 | |
フランス | 右側 | 左側 |
スペイン | 道路際(両側) | |
ドイツ | 左側 | |
スイス | ||
アメリカ | 規定なし(左側を奨励) | |
カナダ | 左側 | |
中国 | 道路際(両側) |
沿革
日本
1900年(明治33年)6月21日、警視庁は道路取締規則を制定し、左側通行を初採用した[5]。日本では、車両と歩行者が同じく左側通行であったが、終戦直後死亡事故が頻発した[注 1]ことから、道路交通取締法改正施行により1949年(昭和24年)11月1日に車両左側・歩行者右側通行の対面交通が採用された。その際、歩行者の通行区分を右側通行(歩道・路側帯と車道の区別のない道路に限る)に変更した[注 2][6][7]が、鉄道駅構内は現在も左側通行が採用されている所が多い[注 3]。また、盲導犬は道路の左側を歩くよう訓練されており、道交法でも左側通行が認められている[9]。
韓国
大韓帝国時代の1905年に「大韓帝国規定」で右側通行が規定され、日本統治時代の1921年(大正10年)に内地に合わせて左側通行となった[10]。そして米軍軍政期の1946年に車両が右側通行に変更され、対面交通が始まった[11]。しかし、2009年10月1日に駅、空港等の公共交通施設や公共交通機関内で歩行者も右側通行に変更され[12]、長らく韓国でも続いた対面交通は廃止された。
参考文献
- 事辞典
- 小学館『デジタル大辞泉』. “対面交通”. コトバンク. 2022年7月24日閲覧。
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “対面交通”. コトバンク. 2022年7月24日閲覧。
- “bidirectional traffic”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2022年7月24日閲覧。
- 書籍
- 警視廳(警視庁)、東京府 編『警視廳東京府公報』警視廳(警視庁)、東京府、1898年(明治31年)10月1日〜1943年(昭和18年)6月29日 。。全国書誌番号:00016561。
- 『警視廳東京府公報 明治33年綴』
- 論文
- 牧野 浩志; 平沢 隆之; 洪 性俊; 竹平 誠治; 沼野 猛 (2012-11). “キープレフトの徹底による歩行者と自転車の通行方法の改善に関する研究” (PDF). 土木計画学研究・講演集 (土木計画学研究委員会) Vol.42 (No.213,2012). 201202286643246510 2022年7月25日閲覧。.
脚注
注釈
- ^ 例えば1946年(昭和21年)の交通事故の3件に1件は死亡事故であった。また、死者数は昭和20年代前半(1945年〜1950年)で既に毎年4000人前後に上っており、2014年(平成26年)の死者数4,113人とほとんど変わらない。
- ^ この対面交通取り入れには連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)からの強い要請があったとされ、GHQはアメリカと同じ「車両の右側通行」を求めたが、日本政府が莫大な予算を要することを理由に断り、歩行者の方を右側通行に変えたとされている。
- ^ これは、車の走らない駅構内にはGHQの指導が及ばなかったからとされている[8]。
出典
- ^ 自動車、オートバイ、自転車など。
- ^ a b kb1.
- ^ a b c kb2.
- ^ a b 牧野ら 2012, p. 4, 表5を参照のこと。
- ^ 警視廳東京府公報 M33.
- ^ “俗語辞典”. 日本放送協会 (2015年7月6日). 2018年1月27日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、35頁。ISBN 9784309225043。
- ^ 中村亮一(保険研究部 研究理事) (2016年11月14日). “右側通行?左側通行?(1)-「車は左、人は右」と言われている歩行者の通行ルールは本当はどうなっているのか-”. ニッセイ基礎研究所. 2018年1月30日閲覧。
- ^ “広報はにゅう 2016年5月1日号 No.751” (PDF). 広報誌『はにゅう』. 羽生市. p. 8 (2016年5月1日). 2018年1月19日閲覧。
- ^ 「なぜ「右側通行」に変更?」『中央日報』、2009年10月6日。2018年1月30日閲覧。
- ^ 朴永均(論説委員)「[オピニオン]右側歩行」『東亜日報』、2009年4月30日。2018年1月30日閲覧。
- ^ 「きょうから歩行者も「右側通行」、駅・空港などで実施」『聯合ニュース』株式会社聯合ニュース、2009年10月1日。2022年7月25日閲覧。
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