び‐ぶん【微分】
読み方:びぶん
[名](スル)
2 ある関数で表される曲線の、ある点における接線の傾き、すなわち変化率を極限値として求めること。その傾きを微分係数といい、関数f(x)の導関数をf′(x)とすると、x=aにおける関数f(x)の微分係数はf′(a)で表される。ここで微分してf′(x)になる関数f(x)を逆の演算として求めることを積分とよび、f(x)はf′(x)の不定積分となる。
[補説] これら微分と積分が互いに逆の演算であるという関係性は微分積分学の基本定理とよばれ、17世紀後半にニュートンとライプニッツによって独立して導かれ、やがて解析学という数学の一大分野に発展した。とくに物理現象の多くは微分方程式によって記述され、それらを解くことによって時間とともに変化する数量を見積もったり、現象を予測したりできる。このように、微分は積分とともに、現代においてさまざまな現象を数学的に記述するための重要な手法となっている。
微分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 14:24 UTC 版)
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数学における実変数函数の微分係数、微分商または (どうかんすう、英: derivative)は、別の量(独立変数)に依存して決まる、ある量(関数の値あるいは従属変数)の変化の度合いを測るものであり、これらを求めることを (びぶん、英: differentiation)するという。微分演算の結果である微分係数や導関数も用語の濫用でしばしば微分と呼ばれる。
概要
微分は解析学分野(特に微分積分学分野)の基本的な道具である。例えば、動く物体の位置の時間に関する導函数はその物体の速度であり、これは時間が進んだときその物体の位置がどれほど早く変わるかを測る。
一変数函数の適当に選んだ入力値における微分係数は、その点におけるグラフの接線の傾きである。これは導函数がその入力値の近くでその函数の最適線型近似を記述するものであることを意味する。そのような理由で、微分係数はしばしば「瞬間の変化率」として記述される。瞬間の変化率は独立変数に依存する従属変数である。
微分は実多変数函数にも拡張できる。この一般化において、導函数はそのグラフが(適当な変換の後)もとの函数のグラフを最適線型近似する線型写像と解釈しなおされる。ヤコビ行列はこの線型変換を独立および従属変数を選ぶことで与えられる基底に関して表現する行列であり、独立変数に関する偏微分を用いて計算することができる。多変数実数値函数に対して、ヤコビ行列は勾配に簡約される。
導函数を求める過程を微分あるいは微分法、微分演算(英: differentiation)と言い、その逆の過程(原始函数を求めること)を反微分という。微分積分学の基本定理は反微分が積分と同じであることを主張する。一変数の微分積分学において微分と積分は基本的な操作の二本柱である[1]。
1変数関数の微分法
直観的な説明
初めに最も簡単な場合を扱う。すなわち、実数値の変数を1個もち、値も1個の実数であるような関数 f(x)(または単に f とも書く)を微分することを考える。「微分する」というのは、より正確には、微分係数または導関数のいずれかを求めることを意味している。
説明を単純にするため、f(x) はすべての実数 x に対して定義されているとしよう。すると各々の実数 a に対して、f の a における微分係数と呼ばれる数がある(定義されない場合もあるが、ここでは理想的な状況のみを想定して説明する)。これを f′(a) で表す。また、実数 a に対して微分係数 f′(a) を対応させる関数 f′ のことを f の導関数という。
微分係数 f′(a) とは何であるか直観的に説明するには、いくつかの方法がある。
- 微分係数 f′(a) とは、関数 f のグラフに x = a において(すなわち点 (a, f(a)) において)接線をひいたときの、その接線の傾きのことである。
- 微分係数 f′(a) とは、変数 x の値の変化に伴う f(x) の変化を考えたときの、x = a における f(x) の瞬間変化率のことである。
- 微分係数 f′(a) とは、関数 f のグラフの x = a 付近を(すなわち点 (a, f(a)) 付近を)限りなく拡大していったときに、グラフが直線に近づいて見える場合における、その直線の傾きのことである。
これらはいずれも、論理的に厳密な定義とはいえない。それは、「接線」や「瞬間変化率」について厳密な定義が与えられていないし、またグラフを「限りなく拡大する」ということの意味も定かではないからである。
ごく単純な関数については、上記の説明が微分係数の具体的な値について十分な示唆を与えるのは確かだ。たとえば一次関数 f(x) = Ax + B を考えると、そのグラフは直線なので、「x = a における接線」もその直線自身であると考えるのが妥当だろう。直線 y = Ax + B の傾きは A だから、微分係数 f′(a) の値も A とすべきだと考えられる。また、二次関数についても、グラフの接線の概念を微分とは無関係に定義して、その傾きを求めることはできる。だが、ほとんどの関数にはこのような手法は通用しないから、一般的な定義を与えるためには新しい考えが必要である。
厳密な定式化
一点における微分可能性と微分係数
関数 f(x) が開区間 一方で、関数がある一点で連続だったとしても、そこで微分可能でないことがある。 実用上現れる関数の大半は、ほとんど至るところで微分可能である。微分積分学の歴史の初期には、多くの数学者は連続関数はほとんど至るところで微分可能であると考えていた。この仮定は緩やかな条件、たとえば単調写像やリプシッツ連続などのもとでは確かに満たされる。しかし1872年にワイエルシュトラスは、至るところ連続だが、至るところ微分不可能な関数の例を与えた(ワイエルシュトラス関数)。1931年にステファン・バナフは、連続関数全体のなす空間において、少なくとも1点で微分可能な関数全体のなす集合が痩せている(meager)ことを示した[2]。くだけた言い方をすれば、ほとんどあらゆる連続関数がすべての点で微分不可能なのである。 高階微分
関数 f が区間 I で導関数 f ′ をもち、それがさらに I で微分可能なとき、f ′ の導関数を f の2階導関数とよび f ″ で表す。より一般に、関数 f が区間 I で n 回繰り返して微分できるとき、f は I で n 回微分可能であるといい、n 回微分して得られる関数を n 階導関数といって f (n) で表す。
f が n 回微分可能であって、さらに n 階導関数 f (n) が連続であるとき、f は n 回連続微分可能である(または C n 級である)という。何回でも微分可能な関数は無限回微分可能である(または C ∞ 級である)という。C ∞ 級関数のことを滑らかな関数ということもある(ただしこの語の用法は必ずしも一定していず、たとえば単に微分可能であることを指して滑らかであるという場合もある)。
微分と関数の増減・凹凸
導関数の符号と関数の増減
微分可能な関数 f(x) について、導関数 f′(x) が正の値をとる区間では、f(x) の値は単調増加する(より詳しくいえば、狭義単調増加する)。導関数 f′(x) が負の値をとる区間では f(x) の値は単調減少する。導関数 f′(x) の値がつねに 0 であるような区間では、関数 f(x) の値は一定である。
2階導関数の符号と関数の凹凸
2階微分可能な関数 f(x) について、2階導関数 f′′(x) が正の値をとる区間では、関数 f(x) は凸(下に凸)である。f′′(x) が負の値をとる区間では関数 f(x) は凹(上に凸)である。
関数 f(x) が x = a の前後で凸から凹に、あるいは凹から凸に切り替わるとき、点 (a, f(a)) は f(x) のグラフの変曲点であるという[3]。2階微分可能な関数 f(x) については、これは2階導関数 f′′(x) の符号が切り替わる x の値に対応する点ということができる。
多項式近似への応用
関数 f が開区間 I で n − 1 階微分可能で、n − 1 階導関数 f(n − 1) が x = a で微分可能なとき、f(n − 1) の x = a における微分係数を f(n)(a) とすれば
脚注
注釈
出典
- ^ 本項に述べる微分法は多くの情報源を持つ非常によく確立された数学の分野である。本項に書かれているような内容の大半は Apostol 1967, Apostol 1969, Spivak 1994 に含まれる。
- ^ Banach 1931.
- ^ Apostol 1967, §4.18.
- ^ a b Cajori 1923.
- ^ de Morgan 1836, pp. 267–268.
- ^ Cauchy 1840, p. 5.
参考文献
- Apostol, Tom M. (1967). Calculus, Vol. 1: One-Variable Calculus with an Introduction to Linear Algebra (2nd ed.). Wiley. ISBN 978-0-471-00005-1
- Apostol, Tom M. (1969). Calculus, Vol. 2: Multi-Variable Calculus and Linear Algebra with Applications (2nd ed.). Wiley. ISBN 978-0-471-00007-5
- Banach, Stefan (1931), “Über die Baire'sche Kategorie gewisser Funktionenmengen”, Studia. Math. 3 (1): 174–179
- Cajori, Florian (1923), “The History of Notations of the Calculus”, Annals of Mathematics. Second Series 25 (1): 1-46
- Cauchy, Augustin Louis (1840). Exercices d'analyse et de physique mathematique. 1. Bachelier
- de Morgan, Augustus (1836). The differential and integral calculus. Baldwin and Cradock
- Spivak, Michael (1994). Calculus (3rd ed.). Publish or Perish. ISBN 978-0-914098-89-8
関連文献
印刷物
- Anton, Howard; Bivens, Irl; Davis, Stephen (February 2, 2005), Calculus: Early Transcendentals Single and Multivariable (8th ed.), New York: Wiley, ISBN 978-0-471-47244-5
- Courant, Richard; John, Fritz (December 22, 1998), Introduction to Calculus and Analysis, Vol. 1, Springer-Verlag, ISBN 978-3-540-65058-4
- Eves, Howard (January 2, 1990), An Introduction to the History of Mathematics (6th ed.), Brooks Cole, ISBN 978-0-03-029558-4
- Larson, Ron; Hostetler, Robert P.; Edwards, Bruce H. (February 28, 2006), Calculus: Early Transcendental Functions (4th ed.), Houghton Mifflin Company, ISBN 978-0-618-60624-5
- Stewart, James (December 24, 2002), Calculus (5th ed.), Brooks Cole, ISBN 978-0-534-39339-7
- Thompson, Silvanus P. (September 8, 1998), Calculus Made Easy (Revised, Updated, Expanded ed.), New York: St. Martin's Press, ISBN 978-0-312-18548-0
オンライン本
Derivativeに関する 図書館収蔵著作物 |
- Crowell, Benjamin (2003), Calculus
- (Govt. of TN), TamilNadu Textbook Corporation (2006), Mathematics- vol.2
- Garrett, Paul (2004), Notes on First-Year Calculus, University of Minnesota
- Hussain, Faraz (2006), Understanding Calculus
- Keisler, H. Jerome (2000), Elementary Calculus: An Approach Using Infinitesimals
- Mauch, Sean (2004), Unabridged Version of Sean's Applied Math Book, オリジナルの2006年4月15日時点におけるアーカイブ。
- Sloughter, Dan (2000), Difference Equations to Differential Equations
- Strang, Gilbert (1991), Calculus
- Stroyan, Keith D. (1997), A Brief Introduction to Infinitesimal Calculus
ウェブサイト
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Derivative”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- Khan Academy: "Newton, Leibniz, and Usain Bolt"
- Weisstein, Eric W. "Derivative". mathworld.wolfram.com (英語).
- Online Derivative Calculator from Wolfram Alpha.
- Derivatives of Trigonometric functions, UBC