直接観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 14:07 UTC 版)
詳細は「重力波検出器」および「LIGO」を参照 重力波の直接検出には、地球上にあまねく存在する微小振動と重力波による変位を見分けられる極めて高精度な装置が必要であり、その実現には何十年もの時間を要した。干渉計と呼ばれる技術が1960年代に提唱され、この技術を発展させることが実際の検出に結びついた。 LIGOなど現在の重力波望遠鏡では、レーザー光をふたつに分割し、異なる道筋を通らせたのちに再び一つに合わせることによって重力波を検出する。重力波が検出器に到達すると、光路長がわずかに変化する(あるいは、光が到達するのにかかる時間がわずかに変化する)ため、うなりが生じる。うなりを検出する仕組みは、微小な距離の変化に極めて敏感である。理論的には、長さおよそ4キロメートルの腕を持つ重力波干渉計であれば、陽子の直径にも満たないごくわずかな時空の変動を検出することができるとされる。ノイズとの混同を避けるため、同様の規模のほかの重力波望遠鏡、例えばVirgo干渉計やGEO 600、KAGRA、INDIGOなどと協調して観測を行い、2か所以上で検出されることが理想である。LIGOは1992年に設立され、2010年から2015年にかけてのアップグレードにより性能は当初よりおよそ10倍向上した(Advanced LIGO)。 LIGOでは、およそ3000キロメートル離れたふたつの観測所、ルイジアナ州リビングストン郡リビングストンのLIGOリビングストン観測所(.mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯30度33分46.42秒 西経90度46分27.27秒 / 北緯30.5628944度 西経90.7742417度 / 30.5628944; -90.7742417)と、ワシントン州ベントン郡リッチランドのLIGOハンフォード観測所 (北緯46度27分18.52秒 西経119度24分27.56秒 / 北緯46.4551444度 西経119.4076556度 / 46.4551444; -119.4076556)を同期して観測を行っている。ふたつの観測所の信号は常に比較されており、同時に発生した有意な信号はすぐに同定され、重力波起源であるのか何らかのノイズであるかの判定がなされる。 2002年から2010年までのLIGOの観測では、重力波の検出を示す有意な信号は一度も得られなかった。その後LIGOは複数年にわたって観測を停止し、感度を向上させたAdvanced LIGOとなるべくアップグレードされた。2015年2月、アップグレード作業を終えたふたつの観測所は、試験観測を開始し、本観測に向けた機能の確認作業を行った のちに、2015年9月18日に正式な科学観測を開始する予定であった。 LIGOの建設と初期の観測期間中には、人為的な(偽物の)重力波信号が秘密裏に複数回入力され、研究者による信号検出可能性を試験した。試験の有効性を高めるために、人為的信号が入力されたタイミングを知っていたのはわずか4名の研究者だけであり、すべての検証作業が終わったのちに初めて人為的信号であることが明らかにされた。2015年9月14日、試験観測期間中であったLIGOは、重力波の可能性がある信号を検出した。この信号は人為的信号ではなく、GW150914と名付けられた。
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