芳香族性の有無と反応性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 07:00 UTC 版)
共役ポリエンは、一般に単独で存在するC=C二重結合よるも化学的に安定である。しかしながら、アヌレンは単純な共役ポリエンではなく、条件を満たした場合には芳香族性を獲得するため、芳香族炭化水素としての性質を帯びて、さらに化学的に安定化して反応性も低下する。逆に、特定の条件を満たすとアヌレンは反芳香族性を帯びるため、逆に化学的には不安定化して反応性が増す。これらのように、一口にアヌレンと言っても、その性質は一定の傾向を有しているわけではない。 いわゆるヒュッケル則として知られる、π電子の数が4n+2個の場合に芳香族性を持つのに対して、π電子の数が4n個の場合は芳香族ではないという計算による予測結果を、アヌレンに適用した場合には、nが2である[10]アヌレンも芳香族性を持つはずだったが、この[10]アヌレンは芳香族性を持たなかった。その理由は、炭素がsp2混成軌道の場合に、他の原子と結合できる方向が決まっているため、この[10]アヌレンの場合は、環が平面になれないためであった。確かに[6]アヌレン、[14]アヌレン、[18]アヌレンなどは、ヒュッケル則として知られる予測通り、芳香族だったものの、それは環が平面になれるからだった。つまりアヌレンは、π電子の数が4n+2個であり、かつ、炭素の連なりで作られた環が平面である場合に、初めて芳香族性を持ち得るのである。 もっとも、大きなアヌレンの多く、例えば[18]アヌレンに当たる シクロオクタデカノナエンなどは、内側の水素原子のファンデルワールス歪みを最小化するのに充分な程大きく、芳香族性に必要な平面構造をとることが可能なので、芳香族性を有する。しかしながら、大型のアヌレンに、ベンゼン程に安定な分子は無い。むしろ、大型のアヌレンの反応性は、仮に芳香族性を獲得できる条件を満たしていたとしても、芳香族炭化水素よりも共役ポリエンにより似ている。 これらの要因のため、一部のアヌレンは化学的に不安定である。すなわち、[4]アヌレンは特に不安定であり、[10]アヌレン)、[12]アヌレン、[14]アヌレンは不安定である。
※この「芳香族性の有無と反応性」の解説は、「アヌレン」の解説の一部です。
「芳香族性の有無と反応性」を含む「アヌレン」の記事については、「アヌレン」の概要を参照ください。
- 芳香族性の有無と反応性のページへのリンク