酵素阻害剤
阻害剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/19 23:35 UTC 版)
EZH2の阻害剤の開発とそれによるがん抑制遺伝子の望まないヒストンメチル化の防止は、がん研究の有望な領域である。EZH2の阻害剤の開発はタンパク質のSETドメインの活性部位を標的としたものに焦点が当てられている。2015年時点で、3-デアザネプラノシンA(英語版)(DZNep)、EPZ005687、EI1、GSK126、UNC1999といった、いくつかのEZH2阻害剤が開発されている。DZNepは、乳がんと大腸がんの細胞でEZH2のレベルを低下させてアポトーシスを誘導するため、抗ウイルス、抗がん作用を有する可能性がある。DZNepはS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)の加水分解を阻害する、すべてのタンパク質メチルトランスフェラーゼに対する反応産物ベースの阻害剤である。DZNepはSAHの細胞内濃度の上昇を引き起こすことでEZH2を阻害するが、EZH2に対して特異的ではないため、他のDNAメチルトランスフェラーゼなども阻害する。 2012年、Epizyme社はDZNepよりも選択性の高い、S-アデノシル-L-メチオニン(SAM)競合型阻害剤EPZ005687を発表した。この薬剤はEZH1(英語版)と比較してEZH2に対する選択性が50倍高い。薬剤は酵素のSETドメインの活性部位に結合することでEZH2の活性を遮断する。EPZ005687はEZH2のY641やA677の変異体も阻害することができるため、非ホジキンリンパ腫の治療への適用の可能性がある。2013年、Epizyme社は他のEZH2阻害剤タゼメトスタット(英語版)(EPZ-6438)のB細胞リンパ腫の患者に対する第I相臨床試験を開始した。2020年、タゼメトスタット(商標名Tazverik)は転移性または局所進行性の類上皮肉腫(英語版)の治療に対してFDAの承認を受け、その年には再発性濾胞性リンパ腫に対する承認も行われた。 シネフンギン(sinefungin)は他のSAM競合的阻害剤であるが、DZNep同様EZH2に対する特異性はない。メチルトランスフェラーゼの補因子結合ポケットに結合することで作用し、メチル基の転移を防ぐ。EI1はノバルティス社によって開発された阻害剤で、Y641変異型細胞も含め、リンパ腫細胞でEZH2阻害活性を示す。この阻害剤の作用機序も、SAMのEZH2への結合に対する競合である。GSK126はグラクソスミスクライン社によって開発された強力なSAM競合型EZH2阻害剤で、EZH1と比較して150倍の選択性があり、Kiは0.5–3 nMである。UNC1999はGSK126のアナログとして開発され、経口投与で活性を示す最初のEZH2阻害剤である。しかしながら、GSK126と比較して選択性は低く、EZH1にも同様に結合するため、オフターゲット効果の可能性が高くなっている。 一次治療が奏効しなくなった際の治療法として併用療法が研究されている。トポイソメラーゼの阻害剤であるエトポシドは、EZH2阻害剤を併用した際に、BRG1(英語版)とEGFRに変異を有する非小細胞性肺がんに対する効果が高まる。しかしながら、EZH2とリジンメチル化は腫瘍抑制作用を持つ場合もあるため(例としては骨髄異形成症候群)、EZH2の阻害がすべての症例に対して有効なわけではない可能性がある。
※この「阻害剤」の解説は、「EZH2」の解説の一部です。
「阻害剤」を含む「EZH2」の記事については、「EZH2」の概要を参照ください。
「阻害剤」の例文・使い方・用例・文例
阻害剤と同じ種類の言葉
- 阻害剤のページへのリンク