Location via proxy:   [ UP ]  
[Report a bug]   [Manage cookies]                

U1_snRNAとは? わかりやすく解説

U1 snRNA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/20 01:05 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
U1 snRNA
識別
略称 U1
Rfam RF00003
その他のデータ
リボ核酸の種類 遺伝子; snRNA; RNAスプライシング
ドメイン 真核生物
GO 0000368 0030627 0005685
SO 0000391
PDB構造 PDBe

U1 snRNA(U1 small nuclear RNA)は、U1 snRNP核内低分子RNA(snRNA)構成要素である。U1 snRNPはRNA-タンパク質複合体であり、pre-mRNAスプライシングの際に、他のsnRNP、未修飾のpre-mRNA、そしてさまざまな他のタンパク質とともに、巨大なRNA-タンパク質複合体であるスプライソソームへと組み立てられる。スプライシング(イントロンの除去)は主要な転写後修飾であり、真核生物でのみ行われる。

構造と機能

ヒトでは、U1 snRNAの長さは164塩基であり、4つのステムループを形成し、5'末端にトリメチル化グアノシンのキャップを有している。3番から10番までの塩基の配列は保存されており、RNAスプライシングの際にイントロンの5'スプライス部位を塩基対を形成する。126番から133番までの塩基はSm部位を形成し、その周囲にSmタンパク質英語版のリングが組み立てられる。ステムループIはU1-70K英語版タンパク質に、ステムループIIはU1-A英語版タンパク質に、ステムループIIIとIVはコアRNPドメイン、SmB/B'、SmD1/2/3、SmE、SmF、SmGからなるヘテロ七量体Smリングに結合する。U1-C英語版は主にタンパク質間相互作用を行う[1][2]

5'スプライス部位へのU1 snRNAの結合はスプライソソームの組み立てに必要であるが、十分ではないことが実験的に示されている[3]U2 snRNPとU5.U4/U6 tri-snRNPのリクルートの後、スプライソソームはスプライシング反応の触媒の前に5'スプライス部位をU1 snRNAからU6 snRNAへと受け渡す[4]

後生動物と酵母のU1 snRNAの配列と二次構造には大きな差異が存在し、酵母のものはかなり長い(568ヌクレオチド)。しかしながら、すべてのU1 snRNAにはヘリックスI、II、IIIの近位領域、IVという共通したコアが存在している[5]

近年、選択的ポリアデニル化部位の選択の調節に関するU1 snRNPの標準的でない役割について記載された[6]。転写率の増加はU1 snRNPを「吸収」し、その利用可能性を低下させることが提唱されている。このモデルは実験的に支持されており、アンチセンスモルフォリノ英語版オリゴヌクレオチドによるU1 snRNPレベルの低下は量依存的にポリアデニル化部位の使用頻度の変化をもたらし、より短いmRNA転写産物が形成されるようになる。

疾患における役割

U1 snRNPは多くの疾患、特にミスフォールディングしたタンパク質によって特徴づけられる疾患への関与が示唆されている。例えば、U1 snRNPのタンパク質構成要素の1つであるU1-70Kに関して、健康な人物の脳細胞由来のU1-70Kはアルツハイマー病患者の脳細胞由来のアミロイド凝集体の存在下で不溶性となることが判明している[7][8]

同様に、家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者由来の線維芽細胞では、U1 snRNPのコア構成要素(すなわちSmタンパク質とU1 snRNA)は、変異型FUS英語版タンパク質との細胞質での誤った共局在がみられる(本来、FUSには露出した核局在化配列が存在するため核に局在するべきである)。この研究では、U1 snRNPの実験的なノックダウンによって運動ニューロンの切断が引き起こされており、スプライシングの欠陥がALSの病因に役割を果たしている可能性が示唆されている[9]

また、U1の過剰発現はオートファジーのレベルを上昇させ、リソソームの生合成を変化させる[10]

Telescriptingにおける役割

Telescriptingは、U1 snRNPがpremature cleavage and polyadenylation(PCPA、上流での切断とポリアデニル化)を抑制し、長い転写産物の合成を可能にする過程である。イントロンにはポリアデニル化シグナル(PAS)呼ばれる部位が存在する。これらの部位はpre-mRNAの切断とポリアデニル化による末端形成が行われる部位である[11]。5'スプライス部位における役割に加えて、U1 snRNPは、pre-mRNA中のこうした露出したPASを隠すことによって新生転写産物を保護し、pre-mRNAの伸長反応が継続されるようにする。U1によるtelescriptingは長距離の転写伸長に特に重要であり、U1の阻害によってPCPAを受ける遺伝子の長さの中央値は39 kbである[12]

出典

  1. ^ “Structure and assembly of the spliceosomal snRNPs. Novartis Medal Lecture”. Biochemical Society Transactions 29 (Pt 2): 15–26. (May 2001). doi:10.1042/bst0290015. PMID 11356120. 
  2. ^ “Arrangement of RNA and proteins in the spliceosomal U1 small nuclear ribonucleoprotein particle”. Nature 409 (6819): 539–42. (January 2001). doi:10.1038/35054102. PMID 11206553. 
  3. ^ Weaver, Robert Franklin (2005). Molecular Biology. Boston: McGraw-Hill. pp. 433. ISBN 9780072846119. OCLC 53900694. https://archive.org/details/molecularbiology00weav/page/433 
  4. ^ “Spliceosome structure and function”. Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 3 (7). (July 2011). doi:10.1101/cshperspect.a003707. PMC: 3119917. PMID 21441581. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3119917/. 
  5. ^ “The uRNA database”. Nucleic Acids Research 25 (1): 102–3. (January 1997). doi:10.1093/nar/25.1.102. PMC: 146409. PMID 9016512. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC146409/. 
  6. ^ “U1 snRNP determines mRNA length and regulates isoform expression”. Cell 150 (1): 53–64. (July 2012). doi:10.1016/j.cell.2012.05.029. PMC: 3412174. PMID 22770214. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3412174/. 
  7. ^ “Aggregation properties of the small nuclear ribonucleoprotein U1-70K in Alzheimer disease”. The Journal of Biological Chemistry 289 (51): 35296–313. (December 2014). doi:10.1074/jbc.M114.562959. PMC: 4271217. PMID 25355317. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4271217/. 
  8. ^ “U1 small nuclear ribonucleoprotein complex and RNA splicing alterations in Alzheimer's disease”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110 (41): 16562–7. (October 2013). doi:10.1073/pnas.1310249110. PMC: 3799305. PMID 24023061. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3799305/. 
  9. ^ “U1 snRNP is mislocalized in ALS patient fibroblasts bearing NLS mutations in FUS and is required for motor neuron outgrowth in zebrafish”. Nucleic Acids Research 43 (6): 3208–18. (March 2015). doi:10.1093/nar/gkv157. PMC: 4381066. PMID 25735748. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4381066/. 
  10. ^ “U1 small nuclear RNA overexpression implicates autophagic-lysosomal system associated with AD”. Neuroscience Research. (January 2018). doi:10.1016/j.neures.2018.01.006. PMID 29395359. 
  11. ^ “U1 snRNP determines mRNA length and regulates isoform expression”. Cell 150 (1): 53–64. (July 2012). doi:10.1016/j.cell.2012.05.029. PMC: 3412174. PMID 22770214. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3412174/. 
  12. ^ “U1 snRNP telescripting regulates a size-function-stratified human genome” (英語). Nature Structural & Molecular Biology 24 (11): 993–999. (November 2017). doi:10.1038/nsmb.3473. PMC: 5685549. PMID 28967884. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5685549/. 

関連文献

  • “Crystal structure at 1.92 A resolution of the RNA-binding domain of the U1A spliceosomal protein complexed with an RNA hairpin”. Nature 372 (6505): 432–8. (December 1994). doi:10.1038/372432a0. PMID 7984237. 
  • “Two functionally distinct steps mediate high affinity binding of U1A protein to U1 hairpin II RNA”. The Journal of Biological Chemistry 276 (24): 21476–81. (June 2001). doi:10.1074/jbc.M101624200. PMID 11297556. 

関連項目

外部リンク


U1 snRNA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/04 09:44 UTC 版)

核内低分子RNA」の記事における「U1 snRNA」の解説

U1 snRNPは、pre-mRNA5'スプライス部位対合してスプライソソーム活性開始する因子である。メジャースプライソソームにおいてはU1 snRNPU2U4U5U6 snRNP等量存在することが実験的に示されている。しかし、ヒト細胞内のU1 snRNP存在量は他のsnRNPよりもはるかに高い。HeLa細胞でのU1 snRNAの遺伝子ノックダウンによって、U1 snRNAが細胞機能大きな重要性を持つことが示されている。U1 snRNA遺伝子ノックアウトされたとき、スプライシングされていないpre-mRNA蓄積増加することがゲノムタイリングアレイ(英語版)によって示された。加えてノックアウトは主に転写開始点近傍イントロン異常な切断とポリアデニル化引き起こすことが示された。他のウリジンに富むsnRNAノックアウトされときにはこのような影響見られない。そのため、U1 snRNAとpre-mRNA塩基対形成pre-mRNA異常な切断とポリアデニル化から保護する考えらえる。この特別な保護効果が、細胞内でU1 snRNAが過剰に存在することの説明となる可能性がある。

※この「U1 snRNA」の解説は、「核内低分子RNA」の解説の一部です。
「U1 snRNA」を含む「核内低分子RNA」の記事については、「核内低分子RNA」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「U1_snRNA」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「U1_snRNA」の関連用語

U1_snRNAのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



U1_snRNAのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのU1 snRNA (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの核内低分子RNA (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS