2025年消費&マーケ大予測 第5回

今、オフィスのありようが揺れている。テレワークと出社のハイブリッドワークが定着したかと思えば、週5出社を推奨する企業もある。多様化する働き方に対して、企業はどのようなスタンスを取るか。働き方と働く環境への考え方は、各企業のキャラクターを反映するだろう。また、生産労働人口の減少に伴い、企業間の人材獲得競争は今後激化する。どのような働き方や働く環境を提供するかは、選ばれる企業になるための一要素となるはずだ。採用や企業の強さにもつながる、働く環境づくりの2025年時点での解とは。

働き方が多様化する中で人を集められるオフィスとは?
働き方が多様化する中で人を集められるオフィスとは?

 会議をするなら対面がいいという社員と、リモートで十分という社員。オフィスのほうが作業に集中できるという社員と、出社を強制されるとモチベーションが下がる社員。個人の好みや作業内容によって求められる仕事環境が多様化している。

 結果的に、同じ部署にいながらオフィスで顔を合わせないため、ほとんど話したことがない人がいる。あるいはフリーアドレスが浸透したがゆえに、フロアを探し回らないと話したい人に会えない。そもそもその人は今日、出社しているのかさえ分からないといったこともしばしば。

 新型コロナウイルス禍以降の働き方の多様化に伴って、従来では生じ得なかったオフィスでの“プチ問題”が発生している。

 そこにあるのは、コロナ禍を経て明らかになった企業と従業員の考え方の齟齬(そご)。従業員側は仕事はオフィスでなくてもできると捉えるようになった半面、企業側はオフィスに集まることで生まれるコミュニケーション、さらにはそこから醸成される企業風土の重要性を再認識している。

 事実、企業からのオフィス需要は堅調だ。オフィスビルのテナント仲介などを手掛ける三鬼商事(東京・中央)の調査によると、2023年12月以降、東京にあるオフィスの空室率は低下傾向にある。また、オフィスの延べ床面積は微増を続けており、企業からのオフィスフロアの引き合いの高さがうかがえる。

三鬼商事の調査 オフィスの空室率は2023年12月以降、低下している
三鬼商事の調査 オフィスの空室率は2023年12月以降、低下している

 だが、従業員側の認識が前述のように変わった今、単に場を用意するだけではオフィスに従業員を集められなくなっているのが現状だ。企業が主導して働く環境を整え、「人を集めるオフィス」を提供する必要が出てきた。

 そのヒントとして、オフィス家具の製造販売や働き方のコンサルティングを行うイトーキの調査からは、従業員がオフィスに求める高い理想がうかがえる。

 この調査によると、オフィス環境が仕事の生産性やモチベーション、自社への帰属意識に影響すると答えた人の割合は、おしなべて約6割。従業員もオフィスの重要性は理解しており、それゆえに高いレベルを求めていることが分かる。企業がどのような場を提供しているかが鋭く判断される時代になったということだろう。

従業員もオフィスの重要性は高く見ている(出所/イトーキ「WORK PLACE DATA BOOK2025」。調査期間:2023年9月、n=5000)
従業員もオフィスの重要性は高く見ている(出所/イトーキ「WORK PLACE DATA BOOK2025」。調査期間:2023年9月、n=5000)

 しかもこの問題は、今後さらに深刻化する。

 24年に入社した新社会人は、コロナ禍でのオンライン講義に慣れた世代。さらに、講義型から討論型の授業への移行が進んだことにより、対面でのコミュニケーションの際は、レイアウトを自由に組み替えられる教室に慣れている世代でもある。旧来型の固定的なオフィスでは飽き足らないニーズがあるはずだ。

 2030年以降は全社員がバブル世代以降に、2040年代にはZ世代が40代に突入する。企業の中核を担う層は、これまでとは異なるコミュニケーション環境になじんできた世代となる。

 生産労働人口の減少にともない、優秀な人材の確保は企業にとって喫緊の課題となると予想されている。そのとき、魅力的な労働環境を提供できるかが、人材確保の重要な要素の1つとなっていくだろう。

リアルとオンラインの差をなくす会議

 オフィス改革の取り組みは、既に始まっている。

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