「コンサルの面接で「74冊読みました」と言ったら「それは何がすごいの?」と返された」件について
ホットエントリで盛り上がっているけれど、ちょっとしっくりこないので、コメント。
タイトル通りなわけだが。先日、とあるコンサルの個人面接で珍しい質問をされた。
ミームの死骸を待ちながら
「じゃあ、最近"俺ってスゲー"と思ったことは?」
思いつかず焦った僕は、最近まとめた去年の読書冊数を伝えた。質問に答えた瞬間社員さんの反応が「微妙」であることを悟り、しかるのち軽薄な自分を恥じた。
全然すごくねーよアホ。
コンサルティング、とりわけ戦略コンサルティングという仕事はインプット量が半端ない。なにしろ経験のない事業について、その事業の専門家にアドバイスせねばならないのだから、生半可な情報インプットではまともに会話すらできない。
具体的にその社員さんが何冊くらい読むのかは聞けなかったが、というか恥ずかしくてそれ以降ろくな受け答えが出来なかった*1のだが、明らかに僕は、勝負を仕掛けるフィ−ルドを間違えたのだろう。反省することしきりである。
toriさんのコメントをはじめとして、「意味づけ」についてコメント欄で盛んに議論されている。
みんなすげー丁寧なコメントで議論も活性化してるから、微笑ましく読みました。
(「意味づけ」というよりも、個人的には「納得感」の方がしっくりくる。)
が、厳しいこと言うと、全部アドバイスが表面的。
それっぽく読めるけれどズレズレですね。
とりあえず、
ぜんぜん、違うよ!!
数とその意味なんて、誰も聞いてないんだよ!!
と言いたい。
百歩譲っても、そこが主眼ではないよ、ということです。
「じゃあ、最近"俺ってスゲー"と思ったことは?」
もの凄く難しい質問です。
ブログ主はじめみんな「数値化能力」を試された質問だと勘違いしてしまっているようで、toriさんのコメントに対して
「数」を出した以上それに根拠ある意味づけをする必要がある、というのはアタマでは分かっていましたが、toriさんのように瞬時に仮説を立てて語られるのを見ると自分には数値化能力が足りてないな、と痛感させられます。
なんて返しています。はい、残念。
普通、「スゲーこと」を答えなきゃ!って考えると、
以下のような思考プロセスになりますね。
まず、「数字」で凄いと思わせること。
そして、数字の「根拠」で凄いと思わせること。
この前提が、まったく違います。本当に。
誰が聞いても感心するような、もの凄いことを成し遂げているなら、例外的に「数字」を自慢すればいいと思います。そいういう人には、僕のこんなエントリは不要です。
でも、普通はそうじゃないよね。
変人、とか、天才、って評価されてるような人以外は、これから書くことまで考えを巡らせておきたい。
質問の本当の意図
さて、いきなり質問を答える前に、質問を受けた時点で、考えなければいけないことがあります。
もしあなたが、この質問を受けたとした場合、
まず第一に「質問の本当の意図」について、思いを巡らせましょう。
質問の本当の意図に答えられていなければ、いくら良い事言っても、納得してくれないのが人間なんですね。逆に、質問の意図をわかってくれてるな、と思う人に対しては、非常に良い印象を受ける傾向にあり、納得してもらえることも多くなります。
学生さんを評価する上で、
「きちんと質問の意図を理解できるか?」、
というのは、最初に気になるポイントです。
コミュニケーションの基本ですからね。これができなければ、お客さんに会わせられないどころか、社内の議論に参加させられません。
僕の考え方を一例として。
では、僕の場合の回答例を、あくまで参考までに書きます。参考ですよ、参考。
僕の場合は、今回の質問:「じゃあ、最近"俺ってスゲー"と思ったことは?」の意図を、以下の2つと考えます。
- 「あなたは、どういう価値観を持っていますか?」
- 「その価値観に基づいて、どういう行動を起こし、どういった結果・評価を得ましたか?」
大事なことは、1つの質問に対して、2つ答えるべき質問だ、ということです。
採用担当者なら、普通は、この2つの意図を意識していますので、両方に対してきちんと打ち返してあげる必要があると思います。
(というか、意図のはっきりしない、なんとなくの質問ほど、無意味なものはありませんからね。これくらいを想定しておきましょう。)
1.「あなたは、どういう価値観を持っていますか?」
素直に自分の価値観を伝えるのが良いのではないか、と思います。
「こんなことスゲー、って思うんですよね、なぜならば~」と。論理的にハキハキと答えましょう。
一般論的に言ってしまえば、普通の企業なら、候補者の人間性を知るための前提知識程度に受け止められるはずですし、会社によっては、あなたの価値観と会社の風土や働く社員との相性を推し量ってくれるでしょう。
個人的な見解としては、人の価値観について、善悪の判断はできないので、これを採用のクリティカル・ファクターとしては取り入れたくありません。
普通の就活アドバイスだったら、学生さんには、自分の価値観のありのままを伝えて、その多様性(面白さ)を認めてもらえればシメタモノくらいに軽く考えることをオススメしています。*1
ただし、今回のように相手が戦略コンサルなら、ちょっと話は別かな、と警戒しますね。
価値観を背景にした行動原理や態度が、プロフェッショナルとして適切か?、会社に合いそうか?
もの凄く、厳密に評価されていると考えるのが良いでしょう。
そして、答え方には、一捻り(ひとひねり)の余地があります。
「凄い」と判断する主体を誰に置くか
プロフェッショナルとして、もの凄く重要な視点です。死活問題と言って良いほどです。
コンサルタントという職業は、自分がいくら凄いと思っても、相手にも評価されなければ、「お前は、ノーバリューだ」と即、ダメな評価を受けてしまいます。クライアントさんが物凄く高いフィーを払っているので当然ですね。
プロフェッショナルならば、当然、この考え方を基礎態度として備えている方が良いでしょう。
コンサルタントとして必須要件だと思います。*2
だから、それを答えてあげる、というのが「おっ」と思わせる一工夫となります。
「凄いと判断するのは、自分ではなく、他人であるべき(他人の評価を受けて、凄いことだと判断する)」
「私はこういうことをして、周囲にこういった評価を受け、自分も少し凄いかもと思った」
とするのが一案でしょうか。
コメントにあるような、数字の根拠で意味づけするのは、
自己満足に留まっているレベル。
プロフェッショナルの考え方ではないのです。
誰も、自分のオ●ニー自慢は聞きたくないですから。自慢話は、飲み会の席だけで十分です。
追加的に、
「自分に厳しいので、世界一くらいのことを成し遂げないと、スゲー、って思えません。
同じことで、もっと凄いことをしている人がいる、或いは、そういう人を想像しうるならば、
自分はまだまだだと思ってしまう」
謙虚さと同時に、それくらいの向上心を持っていることを伝えても良いかもしれません。
また、答え方のコツとして、コンクルージョン・ファーストで簡潔に答えた後、つっこんだ説明をする。
ロジカル・コミュニケーションの基本です。
2.「その価値観に基づいて、どういう行動を起こし、どういった結果・評価を得ましたか?」
さて、1つ目の論点に答えたところで、2つ目。もっと重要な論点です。
この論点を、もう少し解釈してあげると、「あなたの強みは何ですか?」「その強みを活かして、どのようなことを成し遂げましたか?」と同義だと捉えられると思う。
したがって、ここは「行動の一貫性」と「結果の再現性」をアピールする。(理由は、"東大生による就職活動論"に書いた通り)
「凄いと判断するのは、自分ではなく、他人であるべき」
「私はこういうことをして、周囲にこういった評価を受け、自分も少しスゲーかもと思った」
に続く、つなぎ方としては、
「評価を得られた理由としては、XXに苦労したけれど、YYという考え方で、
ZZという自分の強みを発揮して、XYZとやったことが評価されたと思います。」
と、丁寧に噛み砕いて、ストーリーを説明してあげる。
もちろん、「強み」と「それに伴う成果」の因果関係が崩れていたら、容赦なく詰められるので、きちんとロジック組み立てる。
さらに、
「他にも、同様の強みを発揮して、・・・・な評価をされた」
なんて、行動の一貫性、結果の再現性があることを語ってあげれば、納得感ありです。
強みが発露した成果を2つ以上語ること、必須でしょう。
以上を踏まえた上で、面接官がどう見るか?
まとめます。
面接官は、まず、質問に対する返しを聞き、「言っていることの意味がわかっているか」を見る。
次に、「いかに説得力を持って語れるか」、を見る。(←ここが皆さんのおっしゃる「意味づけ」)
従って、質問の意図を理解せずして、数字の根拠や意味付けだ、云々の議論は成立しません。
そういう思いで、反論記事を書いてみました。
まとめ
問い:
「じゃあ、最近"俺ってスゲー"と思ったことは?」
答え:
「凄いと判断するのは、自分ではなく、他人であるべき」
「私はこういうことをして、周囲にこういった評価を受け、自分も少しスゲーかもと思った」
「評価を得られた理由としては、こういったことに苦労したけれど、こういった考え方で、
こういう自分の強みを発揮して、こうやったことが評価されたと思います。」
「他にも、同様の強みを発揮して、・・・・な評価をされた」
以上。
追記
2010年7月に大幅修正をしました。
さらに、追記。
「ここまで深読みする意味あるの?」
「もっと素直に答えて、十分じゃないの?」
「面接担当も、そこまで考えていないんじゃない?」
「なにこれ、就活本でも読みながら書いたの?」
「面接官が何も考えてない可能性もあるのに、これが答えだ的な書き方は苦笑。」
という、ご意見も多くあるようですが、
「で、面接官が、もっと考えていたら、どうするの? 簡単にギブするの?」
と問い正したい。
本気で、自分の将来賭けて戦ってる学生さんに失礼だよ。2度目はないのだから。
本気で悩んでいる人に対して、
「諦めろ」
と言っているのとイコールだ、ということがわからないのでしょうか。
こういうコメントを残す人は、他人の悩みや関心を共有できないのか、と悲しい気持ちになります。
僕の口調や、書きぶりに反感を覚えるようでしたら、それで結構です。しまっといてください。
さらに、さらに、追記。
この記事の論点は、
「面接官の質問の、本当の意図は何か?」
ということです。正解はありませんので、いろんな考え方があって良いと思います。
本記事と、コメント欄での意見が、少しでも参考になれば幸いです。
これを自分なりに咀嚼するところから、「考えること」が始まっていますので、ぜひ悩んでみてください。
では。
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