◆一歩店に入れば“昭和”へタイムスリップ 東京・笹塚駅前の商店街。平成生まれだから知らないけれど、きっと「昭和」とはこういう佇まいだったんだろうと教えてくれる店がある。1951年創業のラーメン店「福寿」だ。 透き通った醤油スープとちぢれ麺は、口にするたびにほっと温まる優しい味がする。どこにでもありそうだけど、どこにも同じものはないラーメンだ。 ほとんどの客がスープを飲みほし、最後まで味わう。毎日のように通う地元客もいる。 二代目店主・小林克也さん(80)は、45年前に父から店を受け継ぎ、その味を守り続けてきた。いつも、傾いたカウンターの向こう側に立つ。大きな鉄鍋にぐつぐつと煮立つお湯に、ひと玉ずつ麺をくぐらせ、湯切りをしながら、客と軽快に言葉を交わしていた。 そんな名店が、4月24日にひっそりと店を閉じていた。 閉店を伝える張り紙もない。時折、常連客らしき人が店の前で立ち止まるが、普段から