参考:天才数学者はこう解いた、こう生きた(講談社選書メチエ:木村俊一著) デカルトは数学理論と同じくらい確実な哲学の基礎を築くため、少しでも疑いのかかる命題は次々と排除していった。我々の感覚は我々を欺くことがあるから、感覚を信じてはいけない。推論も誤りをおかすことがあるから、鵜呑みにしてはいけない。自分で体験した、と思っていることも夢かもしれないから、信用してはいけない。 だが、強く疑えば疑うほど、確実になってゆく命題がある。このように疑う自分、考えている自分が存在する、という命題である。かくて「我思う、故に我あり」という名文句が生まれた。『方法序説』の一節、合理主義の出発点である。 ところがせっかくの確実な基礎から出発しておきながら、デカルトのロジックはここから大迷走を始めるのである。(1)体がないという可能性は想定できるが、自分がない、という可能性は想定できない。だから自分は体と