インドからやって来たという菩提(ぼだい)達磨(だるま)を祖と奉じつつ、中国の唐の時代にはじまった禅。夏目漱石や西田幾多郎といった日本の著名人はもとより、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブスも傾倒していたことはよく知られています。また、最近では「マインドフルネス」と禅との関係といったことも、よく耳にするようになりました。時代を超え、国を越えて生き続ける禅の生命とはいったいなんなのでしょうか。中国禅宗史を研究する小川隆先生にお聞きしました。 ――禅宗というと「坐禅をして悟りを開く宗教」というイメージが一般的ですね。でも、先生はそうではないとおっしゃっています。まず、そのあたりから教えていただけますか。 坐禅は禅宗が生まれる以前から行(ぎょう)として実践されていました。禅宗独自のものでなく、通仏教的な行であり、さらには仏教独自のものでさえもない。ですから、坐禅がいくら重要であろうと、それを