国立環境研究所の増冨祐司ポスドクフェロー(現在、埼玉県環境科学国際センター主任)らは、多数の気候モデルによる将来気候予測を用いて、気候変化がアジアの水稲生産量に及ぼす影響を平均値および確率を用いて統計的に評価した。その結果、1990年代に比べ、2020年代には高い確率で水稲生産量が減少することが予測された。また、2080年代には、二酸化炭素を最も多く排出するシナリオにおいて、水稲生産量の平均変化率が最も大きく減少すると予測された。この結果は、近未来(2020年代)の影響を軽減するための適応策を早急に検討・実施する必要があること、また長期(2080年代)の影響軽減に向けた二酸化炭素排出量削減による緩和策の検討が必要であることを示唆している。 本研究のポイントは、統計的アプローチによって、気候変化の影響を定量的に評価した点である。世界中には多数の気候モデルが存在するが、それぞれの気候予測には差