封じ手開封直後、次の▲88銀では▲86銀が勝りました。対局中はここが重要な分岐という認識はなかったのですが、藤井竜王は局後の第一声で▲88銀△44銀で感じが良くなったと言っていたので、この辺りの判断の差がそのまま結果に出ています。

秋空にカラカラと笑い声がこだまする。 対局時のピンと冷たく張り詰めた表情と、少年のようなあどけない笑顔のギャップに思わず吹き出しそうになる。 幼少時代から同じときを過ごし、同じ頂を目指す戦友にだけ見せる柔らかな表情は、マスク越しにも想像に容易い。 行雲流水、変化を恐れぬ孤高の戦人・豊島将之。 棋士同士の研究の場を退き、ソフト研究に注力し続けた後に感じた違和感。さらには時は流れ、AI研究の世界にはまた新たな風が吹いている。豊島はそれをどう読み解くのだろう。 ぐらぐら煮えたぎる情熱を抱く戦士・糸谷哲郎。 将棋の世界を深く愛し、将棋の神に愛されるフィロソファーは、その新しい波をどのように操るのだろう。 昨年に続き、8人の棋士のライフラインチャートも必見。 我々が知る由もない苦悩や喜び、想像をはるかに上回るレベルで安定した精神力の強さに感嘆するだろう。 まもなく開幕する第71期ALSOK杯王将戦挑
大きく変貌する将棋界に現れた若き天才・藤井聡太。 14歳2ヵ月・史上最年少のプロデビュー後、衝撃の29連勝から始まり、史上最年少でのタイトル獲得など、次々と将棋界の記録を塗り替えていく彼の「すごさ」の源泉とは――。そして、人間はどこまで強くなるのか。 その謎を、史上最年少名人位獲得の記録を持つレジェンド・谷川浩司九段が、自らの経験を交えながら、さまざまな角度から解き明かした『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社)。その一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/前編を読む) 前面に出る「研究者」の側面 棋士は「勝負師」と「研究者」と「芸術家」の三つの顔を持つべきだ、というのが私の年来の持論である。 普段は将棋の真理を追究し、対局の準備も綿密に行う研究者の顔。対局の序中盤は、将棋の無限の可能性を追い、新しい世界を築く芸術家の顔になる。そして終盤は、勝利を求める勝負師に徹する。この三つの顔を自然に切
2010年以降の将棋界について、AIの進化との関わりを避けて語ることはできない。 山崎隆之八段は自らの棋風、将棋観、あるいは人生観から、AIに依拠する風潮への違和感をこれまでずっと語ってきた。 15年にはタイトル戦になる前の叡王戦で棋士代表の座まで登り詰め、最強ソフトとの決戦に臨み、敗れた苦い経験もしている。 「最初は抵抗があったことは間違いないですね。まず、ソフトを使える人と使えない人がいて、棋士によって環境が違うことはおかしいのでは、という思いがありました。将棋界の持つ良い部分のひとつは、新四段として新入社員のように入ってきても、例えば永世名人の資格を持つ社長のような存在の棋士とも対等に勝負できることです。他の世界にない大切な前提が崩れたように思えて、怒りを感じていた部分はありました。だから『あの人はソフトを駆使してすごく勝っている』と聞いても、すごいなんて思わなかったし、全く敬意も持
「デビューしたての頃の棋譜って、もう抹消したいくらいの感じなんです。時間が経ってみると、粗だらけというか、目を覆いたくなるようなものっていっぱいあるので」 羽生善治、48歳。1985年、15歳で中学生棋士としてプロ入り。19歳で初タイトルとなる竜王を獲得し、25歳のときには、7大タイトルを独占するという前人未到の記録を打ち立てた。30年以上、棋士として第一線に立つ。 「進化しているかどうかは分からないです。変わっていることは間違いないけれど、本当の意味で前進しているのかどうか。手応えを感じるのが難しくなってきてるということはあるんです。最初のうちは、例えば基礎を覚えて『うまくなりました』というのがあるんですけど、続けるうちに、ロジックの組み立て方が前よりも優れてくると、曖昧なところでの判断が鈍くなるとか、そういうことがあるんですよ」
「自分と比べたこともないです。彼は、すべてにおいて凄い。若いのに、堂々と横綱相撲を取っている。メンタルも強い。観ていて勉強になります」 そう感嘆するのは、31年前にタイトル挑戦の史上最年少記録を樹立、その強さと棋風で「お化け屋敷」と呼ばれた、屋敷伸之九段(48)だ。 第91期ヒューリック杯・棋聖戦挑戦者決定戦に勝って、その大記録を更新した藤井聡太七段(17)は、現在、初のタイトルを懸けた五番勝負に臨んでいる。 将棋界で、これまでに “真の天才” と認められた棋士は数少ない。彼らは「自分とどっちが凄い」と思っているのか。 冷や汗ものの質問を受けてくれたのは、“現役最強” との呼び声が高く、棋聖戦で藤井七段の挑戦を受けている、渡辺明三冠(36)である。 6月8日、五番勝負第1局で、渡辺三冠は藤井七段に黒星を喫した。本誌はその対局前、渡辺三冠に初戦に臨む決意を聞いていた。 「藤井さんの技術は日々
指先は、盤上に描かれた光の道を辿った。 平成30年12月10日、関西将棋会館「御上段の間」、第90期棋聖戦2次予選。山崎隆之八段との斬り合いの終盤戦を迎えた谷川浩司九段は、一気の攻めに転じた。 まだ自玉が相手の攻め駒に包囲された状態で、薄氷の勝ちを読み切った。最後は美しい詰将棋のような手順になった。代名詞「光速の寄せ」は、今も眩しさを失っていなかった。 藤井聡太七段の「憧れの存在」 谷川浩司九段。56歳。 1976年に14歳で史上2人目の中学生棋士になった。終盤において最速最短の手順で相手玉を寄せていく華麗なスタイルは、80年前後に全国で将棋ブームを巻き起こす起点となり、8歳下の羽生善治らの世代に棋士の夢を見させた。40もの歳が離れた藤井聡太七段さえも「小さな頃からの憧れ」と公言する。 永久に不滅かもしれない史上最年少21歳での名人就位、タイトル通算獲得数は歴代4位の27期を誇る十七世名人
疑惑の発端になったのは、昨年7月26日に将棋会館で開催された竜王戦決勝トーナメントの久保(利明)九段との対局でした。対局中の私の行動から不正を疑い、(日本)将棋連盟に提案したことがきっかけです。「自分は気持ち良く指したいからルール作りをしてほしい」という趣旨で、対局中の電子機器の使用を規制すべきと訴えていたそうです。その提案後、連盟の理事が対局中の私の行動を監視していたそうですが、報告書にもあった通り、私にはソフト指しを疑わせる不審な行動はなかったのを理事自身が確認しています。 このとき対局したのは、丸山(忠久)九段でしたが、丸山さんは私の行動を「不審に思うことはなかった」とはっきり言ってくださったんです。疑惑の対象となった四局のうち、二局が丸山さんじゃないですか。しかも、その前にも一局指しているんで計三局なんです。つまり、疑惑が浮上してから一番多く指したのは丸山さんだった、ということにな
プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトのガチンコ対決――。 かつては指し手が複雑なことから、コンピュータが勝つのは難しいと思われていたが、2016年4月・5月に行なわれた第1期 電王戦で、将棋ソフト「Ponanza」が山崎隆之叡王(八段)を打ち破った。 一時期は準優勝が続いたことから「シルバーコレクター」とも揶揄されたPonanzaだが、ここ最近の強さは圧倒的だ。だが、その強さの裏に、さくらインターネットの計算資源による「機械学習」があったのはあまり知られていない。 Ponanzaはなぜここまで強いのか。開発者の山本一成氏と下山晃氏、ならびにさくらインターネット クラウド開発室の須藤武文氏に聞いた。 Ponanzaはなぜ強い? プロ棋士とコンピュータの対局は以前より「電王戦」として行なわれてきた。2016年春に開催された「第1期 電王戦」はその装いを新たにしたものだ。コンピュータ同士で対決する大
衝撃の7大タイトル全制覇からすでに18年、変わらぬ強さで、棋界の「顔」であり続ける43歳。その天才が「この先、重要視される能力」を磨くべく心がける、一見ありふれた習慣とは──? 「こうすればうまくいかない」と知っている 勉強といっても、私たち棋士にとっては、実戦の中から得るものがやはり大きいですね。新しいアイデアや発想のヒントを実戦から得て、それを日常の練習の中で掘り下げ、全体的な理解を深めていきます。 着手を考える際も、40代半ばの今は、20代、30代の頃とは変わってきました。最初に局面全体の方向性を大ざっぱに、感覚的にとらえて、そこから細かいところをロジックで詰めていくというプロセスじたいは以前とあまり変わりませんが、局面全体をとらえるところに力を傾ける比率が、以前に比べて上がっています。 最初から細かいところにこだわって理詰めで追っていくと、効率が悪い。指し手を読んでいって、この筋は
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く