おみやげに、聖護院の黒胡麻八ツ橋をいただいた。 皮も餡も真っ黒な八ツ橋。 甘さが控えめでたいへん美味。 包装紙の裏に「黒の詩」と題された文章が掲載されていた。 詩というには長く、短編小説というにはやや短くて状況背景の説明があっさりしている。 不思議な内容で、短編怪奇文という感じ。 なかなか心を惹く。 作者名がないが、どなたが書いたんだろう。 「黒の詩」 黒い夜だというのに、黒い衣が翻ったのがはっきりとわかった。 本当ならば、この夜分に何をと問い詰めるべきだったのだろう。 闇の中でこちらを認めた漆黒の瞳は、口では見えていなかったというのにはっきりと妖艶にこちらに笑いかけたのが分かった。 何奴だ、などという言葉をかけるのは無粋な気がして、黙って目を合わせる。 「見逃せ」 今度は、声の調子から笑いかけてきているのを知った。 「今宵は、月が無いので、ふと現れてみた」