Time誌の「2005年の人」には、貧困に苦しむ途上国の「よき隣人」として、U2のボノとビル・ゲイツ夫妻が選ばれた。これまであまり「おしゃれ」な話題ではなかった途上国の貧困が、「ホワイトバンド」のような形でファッションになったのは、まぁ悪いことではない。そのボノが「教師」とあおぐのが、本書の著者ジェフリー・サックス(コロンビア大学地球研究所長)である。 著者は28歳でハーバード大学の教授になった秀才だが、その学問的な評価はわかれる。とくに彼が顧問として招かれたロシアの経済改革においては、エリツィン政権の経済顧問として、急速な市場経済化による「ショック療法」(彼はこの言葉をきらっているが)を提案し、ロシアを貧困のどん底にたたきこんだ張本人として知られている。 その後、著者は国連のアナン事務総長の特別顧問として、途上国とくにアフリカの貧困対策に努力する。本書の中心となっているのも、毎日1万