準決勝に続いて1点差という僅差の勝利には、「勝ったとは思っていたけど、本当にホッとした」——。顔中にできた無数の傷が、決勝の激戦ぶりを物語っていた。 試合後、プロ転向を改めて否定した。「アマが、プロより下と思っていない」。村田の持論だ。「プロの世界チャンピオンは何人もいて、すぐに価値が下がる。僕は最もシビアで価値のあるもの、金メダルを目指してきた」 東洋大の学生時代に北京五輪を目指したが、果たせず、母校のコーチに。その後、東洋大職員として現役に復帰した。プロでも戦える実力を持ちながら、アマチュアにこだわる。村田の目指すものは、お金や生活の安定ではないのだ。 大会中、リングに向かう村田には、常に笑顔があった。「妻がいて、息子がいて、ボクシングができる。僕は恵まれている。そう思うと笑顔がでてくる」。自分を支えてくれる人のために戦い、世界の頂点に立った。 「金メダルを取ったことがゴールではない。