鬼龍院花子の生涯 「『鬼龍院花子の生涯』の撮影に入るときには、あの子はもう病気だったんですよ。それで、撮影前に「仲代さん、私、病気持ちでして、ここに大きな傷跡があるんです。それで、仲代さんとはラブシーンがあるから先にみせておきます」って、パッと着物をはだけさせて、胸元の手術跡をみせてくれたんです。そのとき、これは凄い人だと思いました。わが身を削ってまで、共演者に気を遣ってくれたんですからね。」 (春日太一「仲代達矢が語る「昭和映画史」第四回 「Voice」2011年12月号221-222頁) 「あの子」とは夏目雅子である。「なめたらいかんぜよ」のセリフで知られる高知九反田の侠客・鬼政の娘・松恵の役は当初、大竹しのぶであった。しかし、五社英雄の映画に出ては何をされるかわからないと、降りられる。そうして白羽の矢は夏目雅子に向けられる。この作品の監督・五社はもともとはフジテレビの社員ディレクタ