「21世紀の戦争と政治」 [著]エミール・シンプソン 21世紀の戦争はいかなる変化を遂げるのか。19世紀前半に書かれたカール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』を基に、自らの実体験を踏まえ、研究者としての立場から論じた書である。クラウゼヴィッツの理論では見通せなくなった時代の戦争論と政治論だ。 本書には二つのキーワードが頻出する。「ナラティヴ(物語)」と「オーディエンス(対象者)」である。戦争を正当化する言い分と、戦争に関わる人々との意味になろうか。戦争は「敵」と「味方」からなる、というクラウゼヴィッツの二元的発想を超えているのだ。 著者は、英国の王立グルカ連隊の小隊長としてアフガニスタン紛争に従軍した。戦略ナラティヴの重要性を知り、オーディエンスとの接触でクラウゼヴィッツの理論が必ずしも及ばないと知る。 クラウゼヴィッツの『戦争論』は、理性擁護の啓蒙(けいもう)主義からロマン主義に向か