青森県東部の中心都市・八戸といえば、良質な魚介類が水揚げされる港町を真っ先に連想するのではないだろうか。近年は、知的好奇心が刺激されるスポットや、老舗酒蔵の新たな挑戦など、これまでのイメージとはちょっと違った角度で注目されている。2020年11月に訪ねたそんな八戸を、2回にわたって紹介したい。 (文・写真:吉川明子、トップ写真は手描きポップがずらりと並ぶ木村書店の棚) 創業90年余り 店員手描きポップが躍る 八戸には、全国的に注目されている老舗書店がある。JR陸奥湊(むつみなと)駅から歩いて約10分の木村書店だ。創業して90年余り、店内の奥には斎藤茂吉の肉筆を写した看板が掲げられている。店内は雑誌や漫画、小説、文庫本、実用書、文房具などが並び、地元の人が日常的に立ち寄る書店だが、他の書店にはないのが、カラフルな手描きのイラスト入りポップ。すべて“ポプ担”(ポップ担当)の書店員である及川晴香