累計発行部数1億以上。漫画界のスーパースター、浦沢直樹。幅広い支持を集める理由の一つが、浦沢漫画の人物の表情にある。漫画らしいシンプルなタッチでありながら、心の奥の深い感情を表現することにこだわる。「苦しいのか、悲しいのか、悩んでいるのか、どうともとれる表情になれば、いい顔が描けたと思いますね」。時には、浦沢自身が漫画のキャラクターの演技をし、鏡で自分の顔を確認しながら、ペンを入れることもある。 連載漫画2本、月に5回の締め切りという過密スケジュールをこなす浦沢。その仕事は、デビュー当時から編集者としてともに作品を作ってきた長崎尚志との打ち合わせから始まる。浦沢漫画のユニークなストーリーは、二人があらすじを独自に考え、それをぶつけ合う中から生み出される。ストーリーが決まれば、今度は「ネーム」と呼ばれる作業に取りかかる。ページをコマ割りし、大まかな絵とセリフを描き込む。漫画家の創造性が最も問