言わせていただく 「させていただく」、「食べさせていただく」などの表現は単純な「する」、「食べる」とはかなり異なる。使役の「させる」と受益の「もらう」があり、相手の意志に関わらず自分のために実行する決意が感じられる。この不遜(ふそん)な言葉使いは、話者が本来表したいだろう謙譲と一致しない。我々が「させていただく」を聞いたときに不快になるのは、話し手の語法と意図に齟齬(そご)があるためである。試しに「させていただきます」を聞いたら「させてもらいます」に置き換えてみると良い。聞き手を無視した少し失礼な表現になるはずだ。ただし、相手の許可を得る場合や、相手の意志に反して何かを実行するときに使う「させていただく」はもちろん問題ない。「何と言おうと、やらせていただきます」と言うのはおかしくない。 似た表現に「お~する」があるが、これは単純な謙譲ではない。話し手が聞き手に何らかの利益を与える行動にしか