雑 久里洋二はおもに前世紀に実験的なアニメーション作品で名を馳せた人だ。 海外の賞を数多く受賞していて、国内でも紫綬褒章までもらっている、たいへん評価の高い作家だが、遅れてきた世代である私たちにとっては馴染みのない人物だろう。作品集がDVDで出ているが、品切れになってしまった。 実験的作品である以上、同時代性の文脈におかねば評価できない、という意見もあろうかと思う。だが、久里の遊び心に満ちた映像にはそういう問題を棚上げしておいても失せない面白さがある。むしろ、実験の時代を過ぎた今だからこそ感じられる面白さがある、といってもよい。 幸いというべきか、YouTubeで主要な作品が観られるから、ここで紹介してみたい。 「愛」(1963年) 武満徹のミュジック・コンクレート作品「ヴォーカリズムA・I」に映像をつけたもの。声は岸田今日子と水島弘。 武満による、不思議な広がりと切迫感のある音