自民党総裁選は17日、告示を迎えた。新型コロナウイルスの感染者は減少傾向にあるものの、依然として医療体制は厳しい状況だが、テレビは連日、総裁候補の動向をトップ級のニュースとして伝える。政権運営に行き詰まり、つい2週間前に退陣を表明した菅義偉首相は露出も減り、現職なのにまるで過去の宰相のようである。自民党が生まれ変わったかのごとくの雰囲気を国民が抱きがちな現状に、元財務相の藤井裕久さんは警鐘を鳴らす。御年89歳の老政治家が口にする、その危惧とは。 まだセミの声が響く9月の昼下がり、東京都内の藤井さんの個人事務所を訪れた。平日は毎日、来客対応などをこなし、夜は自宅での晩酌を欠かさないという日々だそうで、至ってお元気な様子だ。2012年の衆院選には出馬せず、旧民主党最高顧問を最後に政界を引退した藤井さん。「私はもう『元政治家』ですから」と自らを評するが、今の政治状況についてどう思っているのだろう