_ 妖説忠臣蔵 山田風太郎の『妖説忠臣蔵』読了。 遥か昔に買ったまま放置していたわけだが、八犬伝を見て思い出したので本棚の深淵から引きずり出して読んだ。 一読、なぜ放置していたかも思い出した。 昭和30年代の山田風太郎の小説は下手くそなのだ。アイディア走って筆走らず、説明へたでリズムも悪い。というわけで捨て置いたのであった。 が、そこを無視して読み進めれば一読三嘆、既にこの頃から虚実のボーダーを突き進む孤高の人の姿あり。 結局、プログラミングでもなんでもそうだが、量は力なのだ。昭和30年代後半から忍法帖が時流に乗って書き飛ばし書きまくった量のおかげで、明治伝奇から室町婆娑羅の見事な文章へと転化したのだろう。 それはさておき、文章は下手でも小説としては実におもしろい。 吉良家一の剣術使いの清水一学に三平とお軽の姉を配して東海道の追いかけっこを描く『赤穂飛脚』(いささか長過ぎるというか、文章が