●今年読んだ中で、もっともインパクトがあった本がこの「代替医療のトリック」(サイモン・シン、エツァート・エルンスト著/新潮社)。サイモン・シンによるサイエンス・ノンフィクションは、これまでにも当欄で「暗号解読」「フェルマーの最終定理」「宇宙創成」を紹介している。共通するのは「とても難解なことを扱っているはずなのに、信じられないほど読みやすく、しかも読書の楽しみに満ちあふれている」ということ。 ●まず「代替医療」という言葉になじみがなかったのだが、これは「主流派の医師の大半が受け入れていない治療法」と定義されている。自然科学の観点からは、生物学的に効果があるとは考えにくいものということになる。例として、大きな章が割かれているものを挙げると、「鍼」「ホメオパシー」「カイロプラクティック」「ハーブ療法」。日本人としては、「鍼」のように広く一般社会に浸透し受け入れられているものと、「ホメオパシー」