1. 「異説・日本経済―通説の誤謬を撃つ」は1992年に日本経済新聞社より刊行されたインタビュー集。よくわからない主張がたくさん並ぶ中、ひときわ目を引いたのが八田達夫さんの都市開発推進論でした。 今では忘れ去られた議論ですが、バブル期には「この地価に根拠はあるか?」が話題となっていました。八田さんは市場を差し置いて「適正価格」を口にするようなことはしない。ただ、その主張を私なりに読み解くなら、かつての東京都心部の地価は、必ずしも不適正だったとはいえないとお考えではないか、と思われます。 同書刊行当時、私は中学1年生。新聞やテレビニュースの好きな子どもでしたが、地価については本音と建前が違いすぎる、という印象がありました。地上げ屋を憎々しげに描くニュース報道に喝采を送る人々が、「うちにも地上げ屋が来てくれないかなあ」と嘯く。嫌がらせに屈した一家に「ごね得」の悪罵が飛ぶ。 土地供給が少ないから