連載目次 基本契約と個別契約 今回は「契約論」に関わる紛争の例を紹介したい。 ある程度の規模のシステム開発、特にウオーターフォール型の開発では、その全体を1つの契約で行わない場合が多い。まず、プロジェクトの全体を通して大きな1つの契約を結ぶ。そこには実現すべき機能や費用などの詳細は記述されず、ただ全体としてのシステム開発を行うこと、そして機能や費用、具体的なスケジュールなどは別途契約して決めていくという程度のことが書かれている。これはよく「基本契約」と呼ばれる。 この基本契約の約束に従って作業工程を分割し、その小さな単位ごとに結ばれる契約を「個別契約」という。設計、製造、テスト――といった具合に小さな単位で契約し、検収もその単位で行うというわけだ。 大きなシステム開発の場合は、契約時点では先のことが分からず、作るべきものも費用も曖昧なことが多いので、工程ごとにそれらを決めて検収する方法はあ