7月刊行のちくま学芸文庫『餓死した英霊たち』(藤原彰著)より、一ノ瀬俊也氏による文庫版解説を公開します。みずからも中国戦線に従軍し、その体験から歴史学を志した著者。日本兵の大量餓死の実態を告発する本書の根底には、著者自身の深い怒りが秘められています。その思いに、私たちはどう向き合うのか。本書から何を汲み取るべきなのか。旧版刊行後の議論も踏まえつつ、いま改めて考えます。 本書の目的は、著者藤原彰いうところのアジア太平洋戦争、別の呼び方をすれば1937(昭和12)年に始まった日中戦争、41年にはじまって45年まで続いた太平洋戦争の日本側戦死者230万人のうち、実に140万人の死因が文字通りの餓死と、栄養失調による戦病死、いわば広義の餓死の合数であったことを明らかにすることである。2001年の刊行時、この数字は衝撃をもって社会に受け止められた。そして今日に至るまで、先の戦争の惨禍を語る際にはよく