工房で製作中の靴を手にする大井さん=福岡市、吉田写す 銀メダルの長島圭一郎選手と銅メダルの加藤条治選手の足元を支えた職人・大井久孝さん(49)=福岡市=は、地元クラブで指導するかたわら、2人の靴を作ってきた。元選手としての観察眼を頼りに工夫を凝らした、世界でたった一つの手作りの靴だ。 「不調になった時、原因が本人にあるのか、靴にあるのか見極めないといけない」。長所を伸ばし、弱点を強みに変えようと心掛けてきた。 採取した足型よりも横幅は1センチ小さく作る。「きつくて1時間も履き続けることはできない」。遊びがない分、スピードに乗っても力が逃げない。加藤選手の靴は、抜群のコーナーワークを生かそうと、滑っている姿で足型を採った。「普通の人ならスタートも切れない」。重心がコーナーの内側方向に傾く特殊な靴になった。 国体に12回出場。靴作りを始めたのは1999年。新素材の靴は約25万円と高価だ