猫はかわいい。お日様のにおいがする毛、りりしい目、ぷにぷにの肉球。ごろごろと喉を鳴らしながらすり寄って来たかと思えば、プイッとそっぽを向いたり、気まぐれなところもたまらない――。京都で暮らす猫を紹介するシリーズ、第1回は小さな盆栽店に住む美しい黒猫「千代丸」に会ってきました。
■ 盆栽店を営む猫好きの店主
「ふくわか洞 盆栽店」は、春は梅、秋は紅葉が美しい北野天満宮から、南西へ10分ほど歩いた閑静な住宅地の中にあります。京都らしい町家の軒先に、鮮やかな緑の盆栽たちが並びます。
ちりんちりんと、首輪に付いた鈴を鳴らしながら出迎えてくれるのは、黒猫の千代丸。1歳の女の子です。
店主の工藤誠さんは、もともとはサラリーマン。まったく興味がなかった植物の世界に足を踏み入れたのは、ルームシェアをしていた同居人の一言がきっかけでした。
「同居人が花を育てていて、不在のときは僕が世話をしていたんです。そしたら、僕が面倒を見た方がよく育つと言われて」
植物の魅力にどんどんとはまっていった工藤さん。次第に根付き植物を愛でるようになり、2009年4月に盆栽のお店をオープンしました。店名は、当時飼っていた猫「福太郎」と「若之助」の頭文字から。
黒猫が福太郎、三毛猫が若之助。今も大事に写真が飾られている。どちらも女の子
(左)多いときで約400の盆栽をそろえる(右)同居人が焼いた天然酵母のパンも販売
■ マイペースに、猫らしく暮らす千代丸
「黒猫が大好きなので、一目ぼれでした。」
千代丸がお店にやってきたのは、2013年3月。ネットを通じて譲り受けました。大好きな遊び場は、お店のはす向かいにある小さな神社。石畳の上でごろごろ寝転んだり、木登りをしたり、最近神木に巣作りを始めたカラスを観察したりと、気ままに毎日を過ごしています。遊びすぎて、美しい黒毛が砂で真っ白になることも。
工藤さんは、目を細めながら、愛おしそうに千代丸について話してくれます。
「千代丸は、マイペースな子。あれ、いないなと思って探すと、2軒隣の方から『うちの庭で寝てるよ』と言われたり(笑)。ふすまに自分が通れる大きさの穴を開けたこともあります。あとは猫なのにすごく暑がりで、毛布が大嫌い。冬でも畳の上に寝たりしています」
そんな千代丸を夢中にさせるのが、テレビに映し出される動物の姿。特にNHK総合の動物番組「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」がお気に入りで、放送中はテレビにくぎ付けになるそうです。
■ 家族だから一緒にいたい
実は「ふくわか洞 盆栽店」には、雪之丞という女の子の猫もいますが、3月末ごろに出かけたまま帰ってきていません。大好きな雪之丞がいなくなってからというもの、ずっとしょんぼりしている千代丸。心配した工藤さんは、新しい家族を迎え入れることにしました。名前は、工藤さんがかつて飼っていた猫と同じ「若之助」。生まれたばかりの女の子です。
「猫は、大切な家族なんです。千代丸と雪之丞、そして若之助。みんなで一緒に暮らせる日を願っています」