今も多くの人々の心に刻まれているテレサ・テンさん
「アジアの歌姫」テレサ・テンさん(享年42)が亡くなってから今年で30年。数多の名曲に彩られた彼女の歌手人生の原点にあるのが、1974年に発表された『空港』である。その鮮烈な記憶は、今も多くの人々の心に刻まれている。【前後編の前編】
テレサは「永遠の憧れ」
令和にあってもテレサの人気は健在で、「JOY SOUND」運営会社が集計した「昭和カラオケランキング」(2024年)では4位に『時の流れに身をまかせ』がランクインした。
日本で彼女の存在が広く知られるきっかけとなったのが、1974年12月の『日本レコード大賞』。代表曲となる『空港』で新人賞を受賞し、衝撃を与えた。
当時、その歌声に魅了されたのが俳優で画家の片岡鶴太郎(70)だ。
「『空港』が発売された1974年7月、新人歌手が登場する歌番組の生放送を観て初めて聴きました。耳にした瞬間、圧倒的な歌声にハッとさせられた。テレサさんは清楚で可愛いなかにも色気があって。
見事な歌いぶりに聴き惚れて、見惚れてしまった。思いはグッと伝わるのにどこかあどけなく聞こえる発音の、そのギャップが堪らなくてね。『こんなすごい人が出てきたのか』と思いました」
当時21歳のテレサの歌の世界に魅了されたのは、男性だけではなかった。
「当時はカラオケが流行し始めた頃で、二次会などで女性陣は我先にとテレサさんの曲を歌っていました。歌の世界に没頭して、泣きながら歌う人もいましたね」(同前)
本人に会ったことはないが、テレサは「永遠の憧れ」だという。
「何よりテレサさんの歌は、今だったらコンプラ的にNGな不倫の淫靡な雰囲気、世界観が魅力です。完全に男の妄想や幻想の世界ですが、女性もまた、一途に男性を思う歌の主人公の気持ちに共感するからこそ、今もなお歌い継がれていると思う。アトリエでの制作中に聴くと胸がキュウンとなって、あの時代の匂いや感覚が蘇ります。いつまでも憧れの女性です」(同前)