もう誰にも頼らない
さて、『魔法少女まどか☆マギカ』をようやく最後まで観たんですよ。
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魔法少女まどか☆マギカ 6 【完全生産限定版】 [Blu-ray]
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夢のある話だった前半から、後半は打って変って絶望に覆われた暗いトーンに変わります。これは魔法少女の成長プロセスとリンクしていて、このプロセスを見せているのが美樹さやかというキャラクター。彼女は想い人の怪我を治すという願いを叶えるかわりに魔法少女になりますが、人間でなくなったという事実に絶望して自暴自棄になり、魔女との戦いに耽溺した末、絶望に支配されて自分も魔女になってしまいます。
まどかや杏子が彼女を救おうと必死になる中、それでもクールでいるほむらですが、実は彼女はさらに深い絶望の中にいることがわかります。
ほむらは一人だけ魔法少女の事情にくわしかったのですが、実はまどかとの出会いから終局までを何度もリピートして体験しているからだったんですね。最初の出会いでは、まどかが先輩の魔法少女でほむらはくっついているだけ、立場が逆だったのですが、まどかとマミがワルプルギスの夜に敗れて死ぬのを目の当たりにして、「まどかとの出会いをやり直したい、今度は自分がまどかを守りたい」と願ってキュウべえと契約します。時間を操作する魔法を身につけた彼女は、今度は自分も魔法少女としてまどかと出会い、彼女とともに戦い、戦士としても成長します。最初は時間操作と爆弾しか武器がなく、仲間から足手まといと言われた彼女が、時間を止めてやくざの事務所に侵入し、銃を盗んでいくあたりは『コマンドー』の「買い物だ」の場面を思い出しました。ワルプルギスの夜と戦うときはロケットランチャーやバズーカ砲も使いますが、きっと説明書を読んだに違いありません。
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時間を止めて銃を連射し、弾丸がいくつも止まった状態から時を動かすあたりは、DIOのスタンド能力にも通じるものを感じます。

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メイトリクス大佐やDIOのように戦闘能力を成長させたほむらですが、それでも終局の悲劇を回避することはできず、何度も何度もまどかの死を体験することになります。何通りものバッドエンドが描かれ、どんどん絶望が深くなります。とくに、トチ狂ったマミが泣きながら仲間を皆殺しにしようとするバージョンのときは、こっちまで泣きたくなりました。
ほむらは今度こそまどかを守ろうとしますが、その行為が結果としてまどかの持つ因果力を強め、魔法少女として、魔女としての才能を増大させてしまうという皮肉さ。それでも、戦うことをあきらめては、今度はほむら自身が絶望して魔女になってしまうという残酷さ。ここで視聴者にもまどかにも「ほなどないせえゆうね」というジレンマを突きつけます。
もうまどかが契約してどうにかするしかないのですが、どんな願いにすればみんなを救うことができるのか。魔法少女というシステム自体を無にすればいいのかもしれませんが、キュウべえはモノリスのような存在であり、人類の発展に魔法少女たちが寄与してきた(クレオパトラとか卑弥呼とかジャンヌ・ダルクとか)以上、それはできません。
ここでまどかは「過去、現在、未来の魔女を全て生まれる前に消す」というウルトラCの願いを打ち出します。それはまどかが人間として消滅し、宇宙の因果律を変える新たな神になるということです。
実はこのラストに表面上はよく似たアニメがあって、1994年の『魔法騎士レイアース』です。

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この終わり方を、山本弘会長は「安易だ」とケチョンケチョンにけなしていたものですが、今回の『まどか☆マギカ』は大絶賛しておりました。
『レイアース』が何の犠牲も払わないで救済されるのに対し、『まどか☆マギカ』では、自分を犠牲にして他人の善意を救済するという、まどかにしか叶えられない願いであり、他の全ての選択肢を排除した上での決断になっているところが高い評価に繋がったのでしょう。
本作は、『2001年宇宙の旅』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』とのテーマの共通も指摘されています。まどかの願いは永劫回帰であり、ほむらのループは『新ヱヴァ』での世界の再構築(前の世界から来ているカヲル君は本作におけるほむらの立場に近い)といえるでしょう。
ただし、『2001年宇宙の旅』が無神論を、『エヴァンゲリオン』がキリスト教をモチーフにしていたのに対し、『まどか☆マギカ』は、輪廻からの解脱という仏教的なテーマが描かれているところが、大きな違いといえるかもしれません。作者がそういう意図で書いたのかわかりませんけど。
初期にはとっつきづらさを覚えた萌え絵柄も、慣れてくると気にならなくなります。未見の方はぜひ一度ご覧ください。
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