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vol.1 はこちらをご覧ください。
田原 一つ素朴な質問をしたい。パソコンの基本ソフトを作ったのも、iPhoneやiPadも全部アメリカでしょ。なんで日本ではできないんですか。
孫 マイクロコンピュータが生まれたのがアメリカで、シリコンバレーですよね。シリコンバレーでスタンフォード大学を中心に、その周りにインテルだ、フェアチャイルドだと、全部集まっている。メッカに近ければ近いほど、距離の二乗倍に反比例して影響は大きい。一番メッカに近いところで激しい革命が起きている。だから絵描きがパリに行くように、メッカに世界中から強者が集まるわけですよ。
田原 そう言えばグーグルもスタンフォードですね。
孫 そうです。グーグルの創業者もスタンフォード、ヤフーの創業者もスタンフォード。僕は隣のバークレーでしたけれども、学生時代からスタンフォードと車でしょっちゅう行き来して、友達はみんなあのへん仲間内ですからね。そういう持代の風を感じてたわけですね。
田原 日本は逆ですよね。日本はそれどころかやや落ちこぼれてる。これから落ちこぼれないためには、さあどうする。
孫 そう。日本は農耕社会から工業社会にいくとき、明治5年に義務教育を作りました。では工業社会が終わったとき、どういう教育をするかです。「ものづくり日本」と経団連の経営者の方々からそういう質問は出てくる。それで話すとはすぐいうんですけど、ものづくりを組立業と捉えている経営者が未だに多い。
田原 ようするに日本では組立業が中心なんです。トヨタにしても、パナソニックにしても、全部、組立屋なんです。
孫 組立業にノスタルジアを感じたり、そこに仏と魂があると思っている。そんなうちは日本はもう復活できない。
田原 まだ経団連は思っている。
孫 これでは復活できない。なぜ組立業では復活できないとかというと、組み立ての労働賃金が、いまだ農民の奴隷解放以前の世界にある国と比べると、十倍なわけですよ。月収に十倍の競争力の差がある。昔でいう奴隷と同じような扱いを受けている人たちが安い賃金でつくる農作物のほうが価格競争力がある。同じように組立業も安い賃金で組み立てられたら競争に負けるわけです。
田原 日本は他の国の十倍も高い。
孫 高くて競争はできないですね、単に組み立てということでいくならば。
田原 だからみんな工場が中国やアジアへ行ってますね、安いところへ。
孫 安い賃金に立脚する組立業に頼るのはもう無理。日本は1980年代以前はまだ賃金が安かった。そのときの勢いを使って、頭脳も使って電子立国した。80年代には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だと。これからは組み立てに頼るのではなくて、もっと頭を使ってIT立国だと。