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「2.0」とか、「ロングテール」とか、
最近のインターネットは
なにかと難しそうで、タイヘンらしい。
でも、滑川海彦さんの『ソーシャル・ウェブ入門』には
そのあたりのことが
わかりやすく楽しげに、書かれてるんです。
 そこで、糸井重里、滑川さん、
日経ビジネスオンラインの
  山中浩之副編集長が集まって、座談会をやりました。
「グーグル」だとか、「ミクシィ」だとか、
いろいろ便利になってるのは、たしか。
 だけど、ホントにおもしろいことって、どこにある?
 しゃべりにしゃべって、6時間。
そのうち、レコーダーが回っていた
 約3時間ぶんのおはなしを
   ぎゅーっとまとめて、お届けします。


NB online

 

※なお、この鼎談のようすは、山中さんが副編集長をつとめる
日経ビジネスオンラインでも、ほぼ同時に連載中です。
「ほぼ日」バージョンとはまたちがった視点から
編集されていますので、ぜひ、読みくらべてみてくださいね。

山中浩之副編集長のプロフィール

滑川海彦さんのプロフィール
第1回 「ツリー構造」の外側で
第2回 「タグ」と「ソーシャル」
第3回 グーグル時代の広告は
第4回 「文体」が、すべてを変える?
最終回  オンライン化できない、おもしろさ


ツリー構造の外側で
糸井
ずいぶんまえのことですが、
『インターネット的』という本のなかで
僕の考える
「インターネット的であることの特徴」を
みっつ、書いたんです。

ひとつは「フラット」。
つまり、年齢や地位、価値感などが
「平らになる」ということですね。

それから「リンク」。
見えない人と、つながりあうこと。

そして、もうひとつは「シェア」。
「売り買い」ではなく、
「タダで持ってっていいよ」という考えかた。
お金を介さないで、
価値のやりとりができるようになったこと。

このみっつの要素を、
僕の考える「インターネット的」という言葉で
表現したんです。
山中
ええ、ええ。
糸井
本質は、この部分にあるんじゃないか。

つまり「インターネット」が
「すばらしい何か」であるというよりも、
「インターネット」とは、
このみっつの要素を中心としながら、
人と人とがコミュニケーションをとるための
新しいツールに
なっていくんじゃないかと思ったんです。
滑川
なるほど。
糸井
当時、「インターネット」って
ツール以上のなにかであるというふうに
幻想的に語られていましたけど、
だんだんメッキが剥げてきたというか‥‥
ようするに、「道具じゃないか」と。



山中
ええ、そのとおりですね。
糸井
むしろ、その道具の
向こう側とこっち側にいる
「人」のほうが大事なんだ、ということが
わかってきた。

でもそのあと、
なんとも説明しきれないことが
起こってきたんです。
山中
それは、たとえば‥‥。
糸井
いちばん大きかったのは
やっぱり「グーグル」ですね。

登場したときの
「すごい検索エンジンが出たぞ!」という、
あの紹介のされかた。
そして、その後の大躍進とか
本性をあらわしていくプロセスを眺めていたら、
これはどうも、いままでと違うぞ、と。

つまり、たんに「詳しい検索エンジン」、
というだけではないと思ったんです。
滑川
まさに、そのとおりですよね。
検索における
コペルニクス的転換でした。
糸井
そして、もうひとつは
「ツリー構造」という考えに対する
いごこちのわるさ、といいますか。
山中
ツリー構造、ですか。
糸井
その昔、いま任天堂の社長をやっている
岩田聡さんに、
コンピューターのことを
教えてもらうという日があったんですよ。

そのときのレクチャーは、
おおざっぱに言うと「チャートの作りかた」でした。

たとえば「人間」のなかには
大きく分けて「男」と「女」がいる、と。
で、「男」のなかには
こういう人や、こういう人もいて‥‥と
「大分類」から「小分類」へ分けていく。
山中
おおもとのところから細分化していって
系統樹みたいに分類していく、という方法ですよね。
糸井
もちろん、
この「ツリー構造」の考えは、役に立ったんです。

たとえば「ゲームをつくる」とき。
アメリカには、ニューヨークがあって、ロスがある。
ロスには、こんな街がある。
その街には、こんな店があって‥‥というふうに、
「ツリー構造」で考えていくと、
抜け落ちているものを探すときや
どの階層に矛盾が起こったのかを
発見するときなんかに、とても便利だったんです。

つまり、「整合性」をつけて考えるときですね。

‥‥でも、なんだかしらないけど
僕には嫌だったんですよね、その「整合性」が。
山中
嫌だった?
糸井
というのも、自分自身、
階層がどこでどうそろっているかを
無視するところに
おもしろいアイディアって出てくるんじゃないかと
思っているからなんです。

で、そのことを岩田さんに言ったら
「あ、それは、コンピュータのほうが、
 追いついてないんですよ」って。



滑川
うん、うん。

糸井
「ツリー構造」で考えるという
当時のコンピューターの方法論と、
「ツリー構造」の外側にはみ出している
自分自身の考えかた。

そのあいだの違和感を説明しきれないままに
時間が過ぎていったんですけど‥‥
グーグルのなかには、
「ツリー構造じゃないもの」を感じたんですね。
滑川
たしかにあれは「ツリー」じゃない。
糸井
最初は、説明できなかったんです。
でも「これこれ、これなんだよ!」って。

僕が言いたかったのは、
きっとこのことなんだと思っていたら、
滑川さんの『ソーシャル・ウェブ入門』
行きあたったというわけです。
滑川
なるほど、なるほど。
糸井
「ツリーの外側」的な思考法と、
「グーグル」の登場。

滑川さんの『ソーシャル・ウェブ入門』で、
そのふたつの問題意識が、つながった。

そこで、ぜひお会いしてみたいと思って、
こうして本日、
日経ビジネスオンラインの山中副編集長とともに
お招きしているわけなんです。

‥‥と、前口上が長くなりましたが。
滑川
山中
よろしくお願いします(笑)。
 
<続きます>
2007-08-28-TUE
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