2008年03月19日
ないもの、あります
堪忍袋の緒、舌鼓、左うちわ、相槌、思う壺、助け舟など、現実には存在しないけれど、日本語のことばのやりとりには頻繁に登場する「ないもの」のカタログ。架空の商店クラフト・エヴィング商会の店主がすべて書いていることになっている。各商品についてのウィットに富んだ説明文と、いかにもそれっぽいかんじのイラストの組み合わせが愉快。
たとえば「自分を上げる棚」のページにはこんな解説がある。
「ある程度の大人になりましたら、御自分の棚の規模を把握しておきませんと、調子に乗って、どんどん自分を上げてしまい、収拾つかなくなることがあるのです。なにより、棚は、貴方が想像しているほど大きくありません。のみならず、そんなにも次から次へと自分を棚に上げてしまったら、棚に上げている自分が、どんどん減少していき、最後には、自分のすべてが棚に上がってしまって、棚の下には何も残らなくなってしまいます。」
この本に出てくるモノを片っ端から画像検索したり楽天で商品検索にかけてみるという楽しみ方も発見した。売っているものも見つかる。たとえば左うちわは1500円だ。
巻末には赤瀬川源平が書き下ろしエッセイを寄せている。いいナンセンス本をつくるには相当のセンスが要ると思うのだが、この本はハイセンスで面白かった。
2008年02月25日
このへんでドロンします
正直、この本は30代から40代でないと純粋に笑えない、と思う。10代、20代ではこれらのフレーズを生活の中で聞いたことがないであろうし、50代以上はまだ使っていることを笑われたくないはずである。30代、40代の我々が慈愛の心で年配者の使うフレーズを鑑賞し、あれって昭和風だよねと同年代同士でこっそりと味わうのが、よいのだと思う。あ、一部40代には危険な人もいるかもしれない。線引きは微妙なのだが。
飲み会の途中で「それではこのへんでドロンします」というオヤジや、カップルに「俺っておじゃま虫?」とニヤニヤ聞くオヤジとか、「君たちエンジョイしてる?」と声をかけてしまうオヤジは、まだまだ生息している。「だっても、あさってもない!」「でももヘチマもない!」「しかしもかかしもあるか!」「このイカレポンチ!」なんかもまだ使いそうである。「とんでもはっぷん!」「バタンキュー」「グロッキー」もよく聞く。
そこはかとなく昭和を感じるへっぽこフレーズが1ページに1つ、イラスト付きで解説されている。セレクションが絶妙なので笑いを押し殺しながら電車で読んだ。それでも何度か噴き出してしまった。つぼにはまる読者には強烈なインパクトがある。
勉強したこともひとつあった。
私がこの本で数十年間の誤った理解を正すことになったのが「今日は半ドンです」ということば。意味は午前中だけ授業や仕事があることであるが、私は実に30年以上にわたって、土曜は昼に鐘がドンとなるから半ドンであると思っていた。いや、これは恐らく私の幼少期に私の両親か先生がそう教えたはずなのだ。絶対そうだ。誰か大人にそう聞いた記憶があるのである。
ところがこの本にはちゃんとした由来が掲載されていた。「オランダ語の日曜≪Zontag≫」が訛って「どんたく」、そこから土曜を「半分どんたく」それが「半ドン」に」と書いてある。結構有名な由来話らしい。よくよく考えてみれば、土曜の正午に鐘を鳴らすって、どこで誰が鳴らす鐘だったんだよ?私にそう教えてくれた誰か!。
2008年02月15日
東海道新幹線歴史散歩
新幹線で京都へ行ってきた。この本のために窓際を確保して読んだ。
東海道新幹線の東京から新大阪までの間に、窓から見える景色を時系列で順番に写真付きで解説した本。線路沿いの史跡を中心に、主だったランドマーク105ヶ所以上の歴史的な解説がある。この本が片手にあると新幹線がハトバス観光状態になる。
それぞれの景色が見られるタイミングが、のぞみ乗車の場合の実測値で東京駅(新大阪駅も併記されている)から○○キロ、○○分後というように書いてある。東京を出る時に携帯電話の携帯のタイマー表示機能をセットしておけば、今どのへんを走っているか、すぐわかる。片側の車窓からのみ見える景色はA席側、E席側の表記もあって完ぺきである。
鑑賞する上でひとつ気をつけるべきは新幹線の速度である。本にある写真の様子が見えるのは、実際には一瞬のことなのでそれらの景色がくる数分前には心の準備をして目で探していないと、あっという間に通り過ぎてしまう。
新幹線に乗るたびに気になっていた「アレはなに?」問題が次々に氷解した。田んぼの真ん中にこんもりと残された小さな林がいくつもあって、きっとあれは地元の古い祠や因縁の神木があるんだろうなと想像していた場所の多くの正体が判明。やはり神社も多いが、古墳や貝塚であったりした。
ちなみに代表的な史跡の種類を集計すると、
天守閣×9
城跡×9
五重塔×2
古墳×4
貝塚×2
古戦場×6
もあるそうである。
ところで近い将来、新幹線には無線LANが整備されるらしい。これができると新幹線に乗りながら、グーグルマップでリアルタイムに走行中の場所の地図や、Flickrなどにアップされた近辺の最近の写真や、ブログのデータをなどを総合的に参照するサービスなんて大人気コンテンツになるかもしれない。
2008年01月30日
なんたって豚の角煮
角煮がこんなに深いとは。この本すごい。
著者の土屋敦さんは、オールアバウト「男の料理」の2代目のガイドだ。2004年7月にガイドに就任して、オリジナルのレシピの公開を始めた。ふつうは新しく公開したレシピがアクセスを集めるはずなのに、なぜか初代ガイドが残していった「豚の角煮」レシピがアクセス数の上位にあがってくる。がんばって新しいレシピを追加しても、むしろ、じわじわと「豚の角煮」の順位は上がり続けて、ついに首位になってしまったのだという。
「サイトを見てくれている人に会うと、「あの角煮、おいしそうですね」、「角煮作ってみました!」などといわれることが多い。そのたびに、「いや、あれは僕のレシピじゃなくて、前のガイドさんのレシピなんです。そもそも僕は、二代目のガイドで......」などと、まどろっこしい説明をしなければならない」という、悔しい日々。ブロガーとしてこの気分はよくわかるなあ。
そこで初代の豚の角煮を超える究極の角煮を開発すべく、2年に及ぶ執念の角煮づくりの成果報告がこの本である。山菜角煮、ワカメ角煮、山椒角煮、トマト角煮、魚醤角煮 古代ローマ風、アサリとセリのコチュジャン角煮、栗角煮 中華風、自然薯角煮、白菜角煮、ブリ大根角煮、牡蠣角煮、タマネギのオーブン角煮、揚げニンニクと春雨の角煮、豆乳角煮、漬け菜角煮などなど延々と続く27種類の角煮のレシピ。生唾が出そうなカラー写真で作り方を紹介している。
この本は角煮に特化した特殊な料理本であると同時に、田舎暮らしの体験記でもある。著者は佐渡に移住して家族で田舎暮らしを実践している人である。そのスローライフと、煮込みに時間を要する角煮づくりの話が重なっていい味を出している。本当はこれは料理本ではなくて、田舎でゆっくり角煮をつくる人生のすすめ、な本なのだ。
私はこれを電車で読んでいたのだが、もう角煮たまらんと思って、降りてすぐにこだわりの角煮を出す店に食べに走った。角煮はこだわりがないとだめな料理だと思う。普通の店や家の角煮ってあんまり感動しない、というか、ふつうだ。好物ランクで90位くらいだ。店が看板メニューにしているような角煮は時として感動的にがうまい気がする。そういうのは10位以内にアップする。この著者ほどのこだわりがあるならば、開発した角煮は想像を絶するうまさなのだろうなあ、とよだれがでてくる。
なお、究極の角煮のレシピは下記のページで公開されている。本には詳しい豚や調味料の銘柄のすすめもあるので今度自分で作ってみようかなあと思っている。
・極上!豚肉好きのための豚の角煮
http://allabout.co.jp/gourmet/cookingmen/closeup/CU20071108A/
2008年01月27日
愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎
天井から吊るされたワニやエイの剥製、中世の想像で作られた天球儀、女性の臀部にそっくりのエロティックな椰子の実、骸骨の中に埋め込まれた時計、キリストの磔刑を彫った珊瑚細工、カブトガニの甲羅で作った弦楽器、巨人と小人の甲冑、一角獣のミイラ、人相が浮かび上がった石...。
中世ヨーロッパの貴族たちは、こうした世界の珍品を、ヴンダーカンマー(不思議の部屋)と呼ばれる部屋に蒐集することに懸命になった。膨大な数の蒐集品はこれといった分類をされることなく、ひたすら部屋に詰め込まれた。驚くべきもの、珍しいものを雑然と並べる、奇跡のごった煮空間ができあがった。貴族たちは世界の脅威を一所に詰め込んで、そこに小さな宇宙を再現しようとしたらしい。
「ヴンダーカンマーが誕生し発展を遂げてきた過程の根底にあったのは、一切智を重んじる万能主義だった。森羅万象すべてを自らの手で扱おうとする考え方であって、典型的な人物がたとえばキルヒャーだった。彼は一人で、この世界の、この宇宙のすべての情報を集めようとし、その情報で満たすべくヴンダーカンマーの設営に勤しんだ。」
ヴンダーカンマーの多くは近世以降の合理主義、すなわち分類と専門化、細分化の時代の波に逆行することになり、その存在の根底にある思想とともに退潮、消滅していった。だが、21世紀になった現在、にわかにヴンダーカンマーの展示会や紹介が増えて再評価の兆しがある、そうだ(本当か?)。
「この現象の背景にあるのは、ヴンダーカンマー独特の「何でもあり」という価値観や、ジャンルにとらわれないおおらかさへの再評価である。たしかに現実を振り返れば、学問にせよ芸術にせよ、あまりにも細分化、専門化されすぎた結果、一種の閉塞状態に陥っていることは否めない。だからこそ、この状況を打破するために、世界の多様な事物を総合的にとらえようとした一切智の空間、ヴンダーカンマーに立ち返る必要がある。」
必要があるかどうかは知らないが(必要という発想はヴンダーカンマー的ではない気がする)、とにかく見て楽しいビジュアルブックだ。著者がヨーロッパに保存された貴重なヴンダーカンマーをたずねて撮影したカラー写真が多数掲載されていて大変に見ごたえがある。
貴族の収集品といっても華やかさはない。胡散臭くて、不気味で、かび臭いものがほとんどである。その部屋の異様な空気が本から漂ってきそうだ。この本自体がヴンダーカンマーを再現しようとしている。なんだか現代のマニアやオタク文化の源流を見る思いである。クマグスとかアラマタとか好きな好事家に絶対のおすすめ本。
2008年01月23日
クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙
奇才 南方熊楠の人生を写真や資料でビジュアルに振り返る。
俗に30歳まで童貞だと魔法が使えるようになり、40歳まで童貞だと大魔導士になれる、という冗談があるが、南方熊楠は「小生四十になるまでは女を知らざりし」と自伝にあるように、現実に童貞で大魔導士みたいになった天才研究者である。
熊楠の研究範囲は幅広かった。粘菌、キノコ、藻、昆虫、男色、刺青、性、夢などの分野で独自の研究をした。民俗学者、博物学者と呼ばれることが多い熊楠だが、常に未分類・その他な事柄に関心を持って究めていく人であったようだ。既存の枠には収まりきらない、森羅万象の専門家なのだ。
「若き日の熊楠は、自分が学問の対象にしたいのは、「物」と「心」の接触によって生ずる「事」の世界だと語ったことがある。そうした関心から、熊楠は夢や身体といったフィールドに着目する独自の研究のスタイルを作り上げていった。さらに熊楠は、その関心の延長線上にあるものとして、セクソロジーや人肉食といった他の学者が扱わない分野にも果敢に踏み込もうとした。」
熊楠の研究は仕事というより遊びの成果のように思える。複雑なモノを顕微鏡で見たら一層複雑なモノが見つかったと喜んで報告する。わけがわからないモノが大好きなのだ。純粋なこどもの好奇心を大人になっても維持している。
「そして、この世界には単純な因果関係だけでなく、因果関係同士が作用し合うことで、さらに複雑な現象が生ずることを説いている。熊楠は、この「因果と因果の錯雑して生ずるもの」のことを「縁」と呼び、次のように結論づけている。 ”故に、今日の科学、因果は分かるが(もしくは分かるべき見込みあるが)、縁が分からぬ。この縁を研究するがわれわれの任なり”」
「縁」とは、今で言うなら複雑系である。要素に還元できない現象にこそ本質があるということを、明治時代に直観的に見抜いていたのが熊楠だった。
この本には南方熊楠の収集した粘菌標本や、キノコや昆虫のスケッチ、研究ノートの中身が写真で多数収録されている。ビジュアルな研究者の熊楠をビジュアルに紹介するという狙いが成功した、博物館みたいな面白い本である。
2008年01月06日
ジュセリーノ 未来予知ノート
ある筋から読むといいと言われたので素直に読んでみた。
2008年 有効なエイズワクチンが誕生する これによりエイズの予防が可能に
2013年 ガンの治療法が発見される(脳腫瘍を除く)
2019年 北朝鮮で原発事故が起きる
2011年〜2013年 感染からわずか4時間で死亡するエルス(Herus)というウィルスが出現
ブラジルの預言者ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルースは2001年9月11日の世界貿易センターのテロ攻撃、2004年のインドネシアのスマトラ島沖地震と津波などの大事件を事前に予知し、8万9千通もの予言の手紙を各国政府などの諸方面に送ってきた(一種の内容証明である)。これまでにその内容の90%以上を的中させてきたのだという。この本にはこれから起きる事柄が日付入りで何百も予言されている。
日本では2008年2月15日から28日の間に川崎でM6.3の地震、9月13日には東海地方でM8.6の大地震が起きる。2009年1月には死者10万人規模の大震災が大阪・神戸を襲うなどとしている。天変地異の予知が多いが、テクノロジーの未来予測や、次の米国大統領が誰かなど政治経済に関わるものもある。こうした内容をぼやかさず、場所や時間、固有名詞をはっきりと書いているのがジュセリーノの特徴だ。
いやあ、これ、どうなのであろうか?。
予言の手紙8万9千通というのはものすごい数だ。これだけ大量に予言すれば中には当たることもあるだろう。当たった場合の手紙のコピーだけを集めて、私の予言は当たるといえば予言者になれるということなのかもしれない。たぶん、そういうことだと思うのだ。思うのだが...。
ジュセリーノの予言は一部に突拍子がないもの(2040年代に日本海に新しい陸地が現れる、など)も含まれるが、政治や経済、社会の予言の多くは、近未来に起きてもおかしくないことのリストである。私はそれほど信じているわけではないが、読んでいて未来を考えるよいヒントになった。
ジュセリーノは地球環境問題に熱心で、今のままでは地球は温暖化や環境汚染で駄目になってしまうから、人類は生き方を変えるべきだというメッセージを、こうした予言の活動を通して真面目に訴えている。
2007年12月14日
ダーウィン・アワード 死ぬかと思ったインターナショナル
とんでもなく愚かな死に方で人類の自然淘汰に貢献した人を表彰するのがダーウィンアワード。この世界一不謹慎な投稿企画は90年代にインターネットではじまった。
・Darwin Awards
http://www.darwinawards.com/
「たとえばダーウィン賞を受賞したテロリストは、手紙爆弾を送ったが料金不足で返送されてくると、なんとそれを開けてしまうという信じられないことをしでかした。またある男などは、ダイナマイトに火をつけて氷原に放り投げたところ、忠実な飼い犬がそれをくわえて戻ってきてしまい.....、これまた晴れて受賞の運びとなった。」
ダーウィンアワードの評価基準は次の5つ。
1 遺伝子プールから自分を抹殺すること
2 あり得ない判断力の欠如を示すこと
3 自業自得の死であること
4 まっとうな判断力を備えていること
5 裏の取れる事例であること
現在、このアワードをテーマにした映画も公開中。
・映画ダーウィンアワード
http://www.darwin-award.jp/
日本語書籍の編者は「死ぬかと思った」の林雄司氏。ライト感覚の死ぬかと思ったに対して、こちらは本当に死んでしまったヘビーさが特徴。笑っちゃいけないかもしれないのだが、おもしろい。
さて、ついでに私の最近の「死ぬかと思った」体験。
先日、私は生まれてはじめて胃カメラを飲んだ。医師から検査前に説明があったかもしれないのだが、全身麻酔になることを私は理解していなかった。ベッドに寝かされ準備が進められている間、「胃カメラは痛い」という噂を聞いていた私は結構、緊張していた。「これで喉が鈍感になりますから」という看護婦の説明で薬を飲まされた。部分麻酔なのね、と思い込んだ。
いよいよ検査が始まりそうな雰囲気になって看護婦から「では麻酔注射をしますね」というので、その意味を深く考えずに腕を出した。注射が嫌いな私はその間は上を見て数を数える癖がある。数を数えている自分が記憶の最後であった。
ふと気がつくと別の部屋のベッドに寝かされていた。時計が目に入った。検査開始から2時間近くが過ぎている。検査中の記憶がまったくない。なぜ記憶がないのか?検査は行われたのか?喉が少しおかしいから検査は終わったらしい?そうか全身麻酔だったのか?と一瞬のパニックの後に気がついた。
しばらくして看護婦さんが「気がつかれましたか?先生が診断結果をお伝えします」と伝えにきた。医師いわく「病気はみつかりません。いわゆる食べ過ぎですね。薬をだしておきます」とのこと。診断結果はよかったのだけれども、そんなことはどうでもよいくらい、自分の記憶が簡単に飛んだことに動揺していた。
最後の記憶はスーッとフェイドアウトするのではなく、プツッとテレビの電源が消されたかのように途絶えていた。何の覚悟も前触れもなく世界が終っていた。もし私が検査中に死んでいたら、どうだっただろうと考えてしまうのだ。私は目覚めることができたが、もしも死んでいたら、人生の走馬灯を見るまでもなく、あのまま終わっているわけである。
拳銃で頭を後ろから撃たれるとか、ミサイルの爆心地にいたという状況ではなくて、ふつうの睡眠中に「プツッと電源が落ちるような死」は訪れる可能性はあるわけだ。その場合、朝目覚めることがないわけだから、自分が死んだことを振り返ることもない。人生がそれで終っちゃうのである。死とはそういうことか、とはたと思って愕然とした。
激辛ラーメンの食べ過ぎに端を発した胃カメラ診察は私の死生観を変える大事件となった。死ぬかと思ったでもないし、死んでもいないのだが。みなさんもメメントモリ、気をつけてください。
2007年09月05日
駄菓子大全
「駄菓子コーナー」に弱い私は、休日によくひっかかって500円位、駄菓子を大人買いしてしまう。特に好きなのがラムネ。ラムネと言っても飲む方ではなく、食べる方の、である。その原型ともいえる「ピースラムネ」の本多製菓が取材されていた。カンに頼った家内制手工業的な生産体制で、1日1万6千個を生産している。ラムネは「レモネード」に由来すると初めて知った。
この本には昭和の時代から現在までの駄菓子が何百種類も写真で掲載されている。有名な駄菓子の生産現場の取材レポートは興味深い読み物。駄菓子の原材料や作り方という長年の謎がわかった。10円、20円のものなのに、案外手作りが多いのも驚く。
駄菓子屋の御婆ちゃんの日記の公開もおもしろかった。店で起きた日々の出来事を書き綴ったノート。「三年生のT君が来た。まだ子供なのに二年生くらいのおもちゃや駄菓子をみつけて懐かしいといっている。私は苦笑する。」「一年生が千円札の入った財布をなくして、捜してやったがない。小脇に抱えていたらしい。「余り大金を持ってこないでね」といったら「千円なんて大金ではない」といったので、私はギャフンとしてしまった」。
駄菓子屋は薄利で経営は大変らしく店の数はどんどん減っている。その一方で、駄菓子自体は新商品、ヒット商品が新たに開発されたり、コンビニなどの新たな販売ルートを得て、元気であるそうだ。インターネット上にも駄菓子販売サイトはたくさんみつかる。
駄菓子の卸販売・通販[駄菓子屋正ちゃん]
http://www.dagasi-ya.com/
問屋なのでまとめ買いすることで定価より安く買える。駄菓子屋の壁にぶらさがっていた、当たりものやおもちゃまで全部買えてしまう。
2007年08月15日
心霊写真 不思議をめぐる事件史
子供の頃は心霊写真を信じていた。信じていたが故に、怖いもの見たさで、夏にワイドショーの心霊写真番組(「あなたの知らない世界」とか)があると、欠かさずに見ていた。一般人が投稿してくるところにリアリティがあったし、「専門家」があれは地縛霊、これは浮遊霊、それは守護霊などと解説する形式は分かりやすかった。当時は、写ってしまうと嫌なので、お墓にはカメラを向けないようにしようと思っていた。
霊があるかどうかはともかく、いま思えば、そのときに見た、ほぼすべての「心霊写真」は偽物であった。レンズに光学的なフレアなどのノイズが生じるのはよくあることだし、昔のフィルムカメラの場合はコマ送りに失敗して二重写しになることも起きうる。誰だってたくさん写せば、それっぽい「心霊写真」は撮れてしまうことを、後になって知った。
日本の心霊写真史もまた同じような誤解から始まった。明治初期の、写真を撮ると魂が吸われるという迷信が信じられていた頃に、へんなものが写った写真がいわくつきで公開されるようになった。
「明治末期から家庭にカメラが普及しはじめたとき、カメラに関する知識が同時に普及しなかったことが、後の「心霊写真」の歴史に大きく影響したと言える。失敗写真を「心霊写真」と思い込む風潮は、実に百年後の今日まで続いているのである。」」
昔の心霊写真は意図を持って作られたものが多かったが、現代の心霊写真の多くは、カメラのノイズや樹木の影などに幽霊の姿を見立てるものが多い。著者は、なんでもない写真を心霊写真にするポストモダニズムが現代のブームであるという。写真の大衆化によって、一般人が写真を大量に撮影するようになり、それをテレビが取り上げる。ここに「投稿」→「鑑定」→「供養」というシステムができあがったのだという。
心霊写真は偽物であるという前提で、日本の心霊写真について明治初期から現代までの動向を丁寧に調べており、サブカル文化史としてとても読み応えのある一冊だった。
ところで、携帯カメラやデジカメで心霊写真が撮れたという話をブログ上であまり聞かない。写るんですやデジカメ普及で心霊写真の報告数は増えているらしいから、ブログのネタとしてはもっとあってもいいはずだ。いや、探せば事例はたくさんあるのだが、見てもあまり怖くないのである。
考えてみるに、銀塩じゃないと写らない気がする、とか、デジタル写真は合成加工が容易だから信用できないということもある。そもそもデジタル化されてブログに晒されちゃう幽霊というのが間抜けな気がして、怖くない気がするというのが、大きな話題にならない理由なのではないかと個人的には、思う。
・::HIRAX.NET:: : 恐怖!「心霊」を見つけ出すソフトウェア
http://www.hirax.net/articles/2006/07/30/dekirukana8_ghost
STUDIO-蔵:心霊写真工房
http://www.studio-kura.com/download/sinrei/
心霊写真工房は普通の画像ファイルを心霊写真に変えてしまうソフトです。思い出の1枚をちょっとサイケに変身させてみてはいかがでしょう?
・【匠のデジタル工房・玄人専科】 : 初級編&上級編:心霊写真改造講座(1)
http://pchansblog.exblog.jp/2463391/
2007年08月09日
感動する科学体験100 世界の不思議を楽しもう
科学雑誌ニューサイエンティストが2005年のクリスマスギフト用に限定販売したベストセラー「100 Things to Do Before You Die」の翻訳版。人生観が変わる体験が100個紹介されている。面白い。
最初の6個はこんな内容である。
1 ロケットの打ち上げを見る
2 ドラマチックな皆既日食を見る
3 巨大竜巻を追う
4 古代芸術(洞窟壁画)に感動する
5 グルーンフラッシュを見る
6 カエルの原腸胚形成を見る
私が体験した事があるのは、うーん、100のうち3個しかなかった。やりたいことは10個見つかった。すべての体験に共通しているのは、やろうと思わなかったらできないことばかりということである。偶然ミグジェットで空を飛ぶことはないだろうし、散歩の道端で、世界最大の花ラフレシアを見ることもないだろう。地下2000メートルの洞窟に潜ったり。中国奥地の客家円楼に招かれることもないだろう。人生観を変えるような体験は降って湧いてこない。だから○年以内にこれを体験するという目標を立てるのに、よい本である。
翻訳者はアイデマラソンの樋口さんご夫妻。出版の経緯は「私が英国のヒースロー空港で帰国直前に購入し、機内で読み通して、その面白さに感動して、帰国後出版社と交渉し、出版権を技術評論社で結び、私とヨメサンとで翻訳したものです。」であるとのこと。この本には、20万件を超える発想を書いた人が「これはスゴイ」と思った発想ばかりなのである。
・普通の手書きメモがデジタルに エアペン アイデマアラソン スターターキット
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005043.html
・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html
・「金のアイデアを生む方法 ”ひらめき”体質に変わる本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004920.html
2007年07月14日
千利休―無言の前衛
路上観察家として"トマソン"を流行らせ、ライカ同盟結成でカメラオタクとしても著名だが、本当はまともな文学受賞歴もある異才 赤瀬川源平が書いた利休の芸術論。
このくだりがいいなと思った。
「つまり利休の時代の、芸術という言葉の確立していない未分化な汎芸術状態というものは、それを究めれば、先の気功師が示した見えないスイカ玉のようなものになるのである。その時代の茶人たちは互いに茶会を開いてもてなし、もてなされながら、その見えない玉を少しずつ大きくふくらましていったのである。それを右手から出し、茶碗に盛り、茶筅でふくらませて差し出す。相手もそれを右手から体に入れて左手から出し、それを両手に包んで鑑賞する。その両手にお茶室の各所に潜むち茶気とでもいったものが吸い寄せられて、また散らばっていく。そうやって互いの気を感じながら、「私のはもうこのくらいになりました」「そうですか私のはまだやっとこのくらいで」などという具合に、それぞれスイカぐらいの玉や、ミカンぐらいの玉を空中に描いて、そういう見えないものを見せ合っていたというのがお茶の世界にはあったと思うのである。」
あったのだろうか?(笑)。いや、あったのかもしれない。それが芸の本質なのかもしれない。この本はタイトルからして千利休の研究書であり、著者は映画「利休」のシナリオを担当したくらいなのであるが、実は千利休について専門家というわけではないそうである。むしろ千利休をネタに、こんな風に、赤瀬川流の超芸術論を展開している部分こそ、面白いのだ。
「<略> どんな入れ方であれ毎日繰り返すうちには、お茶の入れ方にある筋道ができて、リズムが生まれてくる。そのおこない自体が、目的を離れて、少し浮き上がってくるのを感じる。ただのお茶を入れるというおこないに「道」が出来上がっていくのが、何となく自分でもわかるのである。」
こういう心理って男に多そうだ。そして、路上観察家でクラシックカメラおたく赤瀬川源平そのものだ。男のつまらないこだわりや見栄を張るような心理が、芸術の発達と関係があるのだと、この人が言うのは大いに説得力がある。響いてしまうのである。
千利休は太閤秀吉に切腹を命じられて死ぬ。お茶の先生がなにゆえ切腹を命じられることになったのか歴史の真相は不明だが、男同士の嫉妬の感情が関係していたのではないか
という分析がある。そうしたこだわりは命をかけるほどのものなのだ。
2007年06月24日
「世界征服」は可能か?
私も子供の頃、世界征服は、ちゃんと企んでいた。
この本は岡田 斗司夫が「仮面ライダー」「北斗の拳」「機動戦士ガンダム」「ドラゴンボール」「バビル二世」など、少年向けのアニメ・漫画・テレビ・映画に登場する、世界征服を企む悪者を徹底分析する。
世界征服を企む悪者は次の4タイプに分類できるらしい。簡単な質問に答えると、あなたがどのタイプかがわかるようになっている。
Aタイプ:魔王 「正しい価値観ですべてを支配したい」
Bタイプ:独裁者 「責任感が強く、働き者」
Cタイプ:王様 「自分が大好きで、贅沢が好き」
Dタイプ:黒幕 「人目に触れず、悪の魅力に溺れたい」
この本が面白いのは、それぞれのタイプの世界征服を突き詰めていくと、実際どうなるかを考えてみるところ。たとえば征服感を味わうという目的では、支配者と被支配者にコミュニケーションが成り立たないといけないという指摘がある。昆虫や動物を支配しても楽しくない。
「征服の喜びには、支配されている側の悲鳴とか、感謝の声、称賛の声が必要です。ところが支配/被支配の間にコミュニケーションが可能でないと、支配関係は成立しません。常に感謝されたり、恐れられたり、怖がられたりすること。それが世界征服の醍醐味です。そのためには、ある程度以上、コミュニケーションのレベルが必要になります。」
それから、世界を征服すると本当に楽しいのか。著者はこう分析している。
「しかしいまや、世界を征服して「富を独占」することには、意味がなくなってしまいました。富を独占するのではなく、市場を活性化して、みんなが豊かな世界を作ること。それが支配者がもっとも簡単かつ確実に「栄耀栄華」を楽しめる方法なのです。」
つまり、北朝鮮の独裁者より、ビルゲイツの方が、世界最高の娯楽を楽しめるし、名声も大きいということである。アレクサンダーやチンギス・ハーンの時代と違って、支配者階級の贅沢を、自由社会の「金で買える贅沢」が遙かに上回ってしまったからだと著者は分析する。
おバカなことを真面目に考え抜くのがこの本の魅力。ショッカーの目的から始まって、世界征服の理論化、そして現代文明論まで、熱っぽく語られる。岡田節が全開の楽しい本である。
2007年05月24日
空の名前
「天使の梯子」という気象現象がある。英語ではヤコブの梯子ともいう。画像検索してみると、美麗な写真を見ることができる。雲の切れ間から太陽光が幾筋もの光の柱を降ろす。神々しい。天使の梯子、まず名前がいいなと思う。
・Google画像検索「天使の梯子」
http://images.google.com/images?svnum=10&um=1&hl=ja&rls=com.microsoft%3A*%3AIE-SearchBox&q=%E5%A4%A9%E4%BD%BF%E3%81%AE%E6%A2%AF%E5%AD%90
これは空模様、気象について392種類の状態を意味する言葉と解説を集めた写真集である。気象学の簡単な案内もある。ロングセラーの改訂版。窓際に常備しておきたくなる。
冒頭の気象学上の雲の分類を見て驚く。巻雲、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、層雲、積雲、積乱雲、毛状雲、鉤状雲、濃密雲、塔状雲、房状雲、層状雲、霧状雲、レンズ雲、断片雲、扁平雲、波雲、雄大雲、無毛雲、多毛雲、(雲に毛なんてあったか?)、肋骨雲、もつれ雲、波状雲、放射状雲、蜂の巣状雲、半透明雲、二重雲、隙間雲、不透明雲、鉄床雲、乳房雲、尾流雲、降水雲、アーチ雲、漏斗雲、頭巾雲、ヴェール雲、ちぎれ雲。
気象学にはない雲の名称はこれ以上に多い。入道雲、飛行機雲などがそうだが、雲の状態を形容する言葉は、日本語に何百もあるのである。
雲だけでなく、雨、風、雪、光線、季節の状態も同様に実例の写真付きで、こういう模様はこう言うのだと辞典的に説明がつけられている。インディアンサマー、老婦人の夏、ブロッケンの妖怪、八十八夜の別れ雪、比良の八荒、鰤起こし、狐の嫁入り、風の伯爵夫人などのドラマを連想させる言葉も多い。
日本は南北に長く季節の変化に恵まれた国だから、気象にかかわる語彙が広がったようだ。歌に詠まれる言葉としても発達した。「八雲立つ出雲八重垣妻籠めに八重垣作る其八重垣を(スサノオノミコト)」という古代の歌は有名であるし、明治に小泉八雲というペンネームを使った外国人作家もいた。そして、その「八雲」の写真もちゃんと収録されている。
歌を詠む機会というのはなくなった現代だが、あいさつ文や会話に、的確な季節感のある言葉が入っていると、この人は余裕があるなあと感じる。(話は変わるが、咲いている花の名前が言える人も尊敬してしまう)。写真と一緒に眺めることで、そうした言葉を自然に使えるようになれそうな本である。
2007年04月29日
カメラの雑学図鑑
ニコン退職後、大学で写真を教えている著者によるカメラの雑学本。
35ミリフィルムの1枚に2コマを撮るから、36枚撮りで72枚撮れる「ハーフカメラ」。全盛期にはカメラの出荷台数の半数を占める人気機種であったと聞く。代表格のオリンパスPENを私はちょうど中古オークションで探しているところである。
ハーフカメラは、フィルム送りの方向に横長の35ミリフィルムを1コマを横に分割し縦長の2コマが作られる。だから写真のタテヨコが逆になる。横長に普通に写そうと思ったらカメラを縦にして写さないといけない。だから、ハーフカメラの写真には縦位置のものがおおかったそうだ。おもしろそうでますます欲しくなった。
・しゃべるカメラ「トークマン」
・ラジオ付きカメラ「ラメラ」
・写真に手書き文字を書く「フォトレコーザー」
・シャッターボタンが2つあって自分撮りができる「シルヴィF2.8」
など、ユニークな特徴のある珍しいカメラが次々に紹介される。
フィルムもいろいろあった。35ミリフィルムとAPSフィルムが普通のフィルムである。「110フィルム(1970年代)」「ブローニー(本来はプロの中判カメラ用)」はトイカメラで私もときどき使うので知っていた。見たことはないが、「スパイカメラ」用ミノックスのフィルムや126判(1960年代)というのがあるのも知っていた。
まったく知らなかったのがディスクフィルム。1982年にコダックが開発し、カメラメーカーがこのフィルム用カメラを発売したが不発に終わった失敗フォーマット。直径65ミリの円盤外周に15コマのフィルムが配置されている。これは一度も見たことがない。フィルムは失敗したが、このフィルム用の新型レンズや電池の開発は最新のカメラにも活かされているそうだ。
かつて高級フィルムカメラは一生モノとして売られた。機能は成熟しているので、、フィルムが流通している限りは、使うことができる。電子部品が少ないので修理も比較的容易だ。希少な機種はプレミアがついて数十年後でも高値で取引される。これに対してデジカメの寿命は、長くて5年くらいである。年々、高機能の新機種が発売されて、目立って型落ちしていくから使用価値もゼロになってしまう。モノとしての価値はフィルムカメラが優っている。
オークションの状況を見ていると、その傾向が顕著だ。デジカメの価値の低下スピードはフィルムの何倍も速い。10年前に200万円のモデルが2万円程度で売られていることもある。デジタル分野でも、1000万画素を超えたデジカメ、何万曲を持ち歩けるMP3プレイヤーなど機能が成熟期に入った分野もある。そろそろ一生モノのデジタル製品というマーケティングもありなのかもしれないと思った。
2007年01月20日
空の小話集―元老練機長が明かす裏話
「15歳で海軍操縦練習生となり、海上自衛隊、民間航空のプロパイロットを経て、75歳で飛行機を降りるまでの半世紀もの間、空を翔けつづけた著者が明かす裏話。」。
とても面白かった。空のエッセイ集。
スチュワーデスや管制官とのハプニング話という軽い話題から入って、訓練生時代や現役パイロット時代、教官時代の体験談、そして九死に一生を得たトラブルや生死のかかった戦時の思い出話まで、話のバリエーションが豊か。
定期航空会社の運行規定には「定期航空の四原則」というのがあって安全性、定時性、経済性、快適性で、この順で大切だが、あちら立てればこちら立たずになる。パイロットは総合点でベストを尽くすために実にいろいろなことを考えながら操縦しているのだなと終始感心した。
特に厳しい訓練と定期チェックが印象に残った。日本で年間に階段から落ちて死亡する人は600人。年間に航空事故で死亡する人はそれより少ないと書かれている。飛行機の乗るより2階に住む方が危険という見方もできるほど、現代の飛行機の安全性は高いそうである。
私は飛行機が苦手である。海外へ行くときには仕方がなく乗るが、国内は新幹線で行けるなら陸路を選ぶといった感じなのだけれども、この本を読んで飛行機への興味は高まった。著者の小話のユーモアに笑い、専門知識の披露にフムフムと思い、戦時中のパイロットの壮絶な日常に感動した。
文章が読みやすく、暖かい。
2006年12月07日
頭がよくなる照明術
私は照明の好みがとてもはっきりしている。明るいのが好きだ。家だろうがオフィスだろうが、明るければ明るいほどいい。マツモトキヨシの店舗みたいにまぶしいくらい明るい部屋がいい。高い天井から強烈に照らされるのが好き。蛍光灯万歳。間接照明反対。(妻は間接照明が好きなので、家は実際はそれほど明るくない。)
そんな私の好みはとても頭が悪い照明術なので、ちょっと考え直すべきだということがこの本を読んでよくわかった。
「昼の太陽光のような「青白い光」を頭の上から浴びると”活動的”に、夕焼けのような「オレンジ色の光」を低い位置から浴びると”くつろぎモードに”」
私の好みの照明では「光ストレス」にやられてしまうらしい。また九州大学の研究によるとクリエイティブな作業には蛍光灯より電球の方が生産性があがることが実験で照明されていた。蛍光灯の覚醒効果が高すぎて、脳がリラックスできないからだそうだ。睡眠前に蛍光灯を浴びると眠りが浅くなるという研究も紹介されていた。
脳力アップするための照明のポイントが3つある。照明術の基本要素。
1 光の色
朝方や昼間の色は人を活動的にし、夕焼けの色は心にやすらぎを与える。
2 光の高さ
光が頭の上にあると興奮、下がってくると落ち着く効果
3 光を当てる場所
直接照明と間接照明、どこへ当てるかで異なる効果。
適切な組み合わせの照明を作ることが大切なのである。その方法論がこの本のメイン部分である。かなり参考になった。
光にはさまざまな効能があるのだ。
朝方に強い光を浴びると身体のリズムが調整される。睡眠不足や時差ぼけの解消に光が使える。また光でうつ病を治す光療法というのもある。光の色で体感温度が変わるので照明によって冷暖房の省エネができる。光の威圧効果でプレゼンの効果を高めることができる。料理をおいしそうに見せるだけでなく、味覚を照明で変えることができる。揺れる明かりは異性を口説くのに効果がある。泥棒が入りにくい照明がある、などなど。多数の効能が紹介されている。
照明だけで部屋のリフォームができると著者はそのやり方も紹介していて、部屋の模様替えの参考になる情報もいっぱいあった。調光器で明るさを半分にすると消費電力25%ダウンで電球の寿命は10倍に伸びるなどという節約術まで。
やはり私が一番気になったのはオフィスの明かりである。どんな照明にしようかなんて考えてこなかった。照明を変えることで生産効率を1%でもアップできるなら、何十人もいる部屋だったら全体ではかなりの改善になる。経営課題に乗せてもいいくらい重要な問題なのではないだろうか。
2006年07月25日
LEGO bookmuseum Vol.1
もうすぐ3歳の息子はレゴが大好きだ。近所のショッピングモールにレゴの専門店「Click Brick」ができて以来、連れて行けとうるさい。この店には、売り場の横に、レゴ関連図書とブロックを貸し出してくれるカフェが併設されている。レゴの学習教室もある。こどもを遊ばせながら、待ち時間に借りて読んでいたのがこの本。とても面白かったので、即注文した。
・レゴ教室のご案内:レゴ ジャパン公式サイト
http://www.legoeducation.jp/
3歳になったら行かせてみようと思っている教室。
我が家にはレゴ基本セットの緑のバケツと青いバケツがある。緑のバケツは1.5歳からの大きなブロック(デュプロ)、赤いバケツは3歳から7歳向けである。他に、青いバケツは5歳から10歳向け、ピンクのバケツは女の子向けなどがある。大きなブロックのデュプロは、ブロックの接続部分(チューブ)が、通常サイズのちょうど2倍に設計されていて、通常サイズのブロックと接合することができるようになっている。子供が大きくなっても無駄にならない。
大人になった私もレゴは大好きで、マインドストームシリーズを組み立てて、家や会社の机に飾っていたりした。最近では、子どもと一緒に遊んで、私のほうが夢中になってしまったりするのだが、これは完璧なおもちゃだと感心する。
この本にはレゴ社とレゴブロックの創業から現在に至る70年以上の歴史と、レゴの精神が解説されている。そしてメインは半世紀以上に渡るレゴの作品のカラー写真の図鑑である。組み立てと写真撮影に、3年もかかっただけあって圧巻である。
レゴは毎年たくさんの新シリーズを売り出すが、翌年には3分の1が廃版になるため、入手が困難なシリーズがいっぱい掲載されている。芸術家が数万個のブロックを使って作った建築作品集も息を呑む。
レゴブロックは1949年に生まれ、1954年に現在の形の「スタッドアンドキューブ(突起と管)」を確立した。135カ国で1億人以上に遊ばれ、累積で3200億個のブロックを出荷した。世界の子どもの創造性を育んできた偉大な会社である。
「自分の中の、子どもの部分を育てること」
レゴの社風は惚れ惚れする。知れば知るほど入社したくなってしまう。社名は「LEG GODT」の造語。デンマーク語で「よく遊べ」の意味。ブロックシリーズの開発には10の明文化されたルールがある。
・レゴの10のルール
1 遊びに無限の可能性
2 女の子にも男の子にも
3 どの年齢の子どもも夢中になる
4 一年中遊べる
5 子どもに刺激を与え、調和のある遊び
6 飽きがこない遊び
7 想像力と創造力を伸ばす
8 使うほどに遊びの価値が増す
9 常に現代的
10 安全で高品質
レゴシリーズには大人も楽しめるシリーズがある。最新のマインドストームNXTはブロックで組み立てたロボットをに音、触感、光、超音波の各センサーと、モーターを取り付けて、コンピュータで制御できる。昔のシリーズを持っているのだが、猛烈に最新式がほしい。子どもを口実に強引に買ってしまおうか。結構、高いんだけど。
・LEGO.com MINDSTORMS NXT Home
http://mindstorms.lego.com/
2006年07月10日
世にも微妙なグルメの本
人気ブログ「世にも微妙なグルメガイド」の書籍化。
面白い、面白い。
・世にも微妙なグルメガイド
http://ameblo.jp/japaneasy1/
このブログは、「普通に営業している普通じゃない料理のある普通じゃないお店を紹介」するサイトである。つまりヘンな店ばかり紹介している。そこから厳選された店が、書籍には収録されているので、濃いのであった。
ほんの一部を引用してみると、登場する店はこんなかんじ。
「
●カンガルー肉の料理『ローズ・ド・サハラ』
アフリカ料理の店なんですけどね。カンガルー料理が……。
●フランスチーズのラーメン『九十九ラーメン』
ミスマッチがベストマッチ。苺と大福の関係に似ています。
●牛乳たっぷりラーメン『ラーメン万福』
牛乳を飲みながらラーメンを食べるわけではありません。
●納豆ラーメン『らあめん満来』
納豆+生卵+高速回転。
●納豆コーヒーゼリー生クリームクレープ『アンドレア』
スイーツ2連発第2弾。納豆菌大活躍の生クリームたっぷりクレープ。
●大根おろしイチゴ生クリームスイーツ『梅芯庵』
スイーツ2連発第1弾。セレブ御用達の大根スイーツ。ある意味、ど根性大根。
...
」
微妙な店の体験記だが、意外にもおいしい珍品もいっぱい見つかる。この本が楽しいのは、微妙なグルメ店に対する著者の愛を感じるところ。
さて、私も結構、物好きなので、何件か行ったことのある店も紹介されていた。たとえば3つばかり。
・アフリカ料理 「ローズ・ド・サハラ」 新宿
http://www.sahara.co.jp/htmdocs/menu_a.htm
ワニとかカンガルーとかホロホロ鳥とかダチョウのタタキとかが食べられるアフリカ料理店。まずくはなかった。おいしいものもあった。
・カレー「ナイアガラ」祐天寺
注文したカレーがミニSLに乗せられ「出発進行!」でお客の前まで運ばれてくるカレーハウス。鉄道の展示だらけの店内。マニアに大人気の店。カレーの味はどんなだったか...機関車の記憶ばかり。
・納豆ラーメン「らあめん満来」
ここはときどき行く店。納豆ラーメンを食べたことがない。チャーシュー麺のチャーシューの巨大さに圧倒される店なので、チャーシュー麺がうまい。
関連:
・彦龍の憲彦さん - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/japaneasy/
日本一まずいラーメン屋・彦龍の店主のブログ。
2006年06月26日
世界中のお菓子あります
”ソニプラ”ことSony Plazaは結構好きである。奥さんが化粧品を買うのに同行し、飽くまでつきあいで入ることが多いが、輸入物お菓子のコーナーを物色するうちに、私の方が「まだ〜?」と言われてしまうことが多い。
輸入物のお菓子。パッケージのデザインセンスが日本のお菓子のそれとはと異なるため、外箱からは味が判断できない。クッキーはいきなり大箱で買って好みと合わず失敗も数多い(「結局、食べないの?」と怒られる)が、一応、セレクトされたものが並んでいるため、マイブームを引き起こす、大ヒットも何度かあった。
この本はソニプラの経営者の一人が、ソニプラ一号店開店以来の思い出と、各時代のヒット商品の舞台裏をつづっている。私がソニプラを知ったのは大学の頃の話なので、40年の歴史があったとは知らなかった。
初期は輸入が自由ではなかったので、米国でもヨーロッパでもなく、アメ横で仕入れていたこと、バレンタインのチョコを流行させたのはソニプラであったこと、マカデミアナッツは60年代後半に当時の貨幣価値で1万円相当の高級品だったこと。
歴代ヒット商品の紹介と逸話が面白い。輸入菓子が本当に好きで、愛着を持って語る著者のような経営者がいるから、ソニープラザは人気があるのだと納得した。これでまたソニプラに行くのが楽しくなった。
【ソニプラ 私のこだわりベスト10】
私のソニプラお菓子のおすすめも書いてみる。結構、定番が多いので、なーんだと言わないでください。(最近は流通がしっかりしていて帰りにコンビニで発見してがっかりすることもありますが。)。
これは毎回、買ってしまうマイ定番。コーラのグミ。ぐにゅぐにゅ噛む感触がすきなのだが、ちょっと健康には良くなさそうな?コーラ感がたまらないのでもある。
これも毎回買う。テレビを観ながらボリボリ。本を読みながらボリボリ。塩味なのでついついたくさん食べがちなので、小さめのパックを買うことが多いが、本当は大きなパックで無制限に食べたい。
5回に一回くらい買う。ペッツは中身だけをスーツのポケットに密かに持ち歩いていることが多い。小さいので、隠し持てる。会議中などに目立たぬように糖分補給ができるのが嬉しい。見つかっても薬だと思われて突っ込まれない。さすがに専用ディスペンサーは買わない。コーラ味がいい。
「トラピスト」が好きな人におすすめ(あれもうまいですよね)。ちょっと味は違うけどノリが同じだ。薄いビスケット。個別包装で保存性がいいが、ちょっと食べるのには面倒でもある。機内食でも出てきたりしますね、これ。
塩ピーナッツ系として最強ブランドであると思う。米国出張に行ったりすると、空港などで初日に缶で買って部屋においておく。ホテルの部屋備え付けミニバーにもあったりするが法外に高いのである。
クッキーでもビスケットでもない、ショートブレッドであるこだわり。高級感。コーヒー、紅茶と一緒に、ゆっくり食べるとうまいのである。歯につくため、カウチには向かないが。
で、またもハリボーですが。このミミズのような形状のグミもコーラグミと合わせて買うことが多い。2本、3本いっぺんに食べると、ちょっと気色悪い感じだが、たまにやってみて満足する。
好物のひとつ。メープルクッキー。ソニプラには他のブランドも数種類ある。基本的にカナダ製品が圧倒である。国策なのか。中でも、これはメープルクッキーが相当好きな人向け。あっさりした紅茶と一緒に食べるとおいしい。
これもなかなか日本のお菓子メーカーがつくらなさそうな、濃いチーズ系。お腹が空いているときにコンボスがあると嬉しい。見かけが似ている江崎グリコのコロンとはぜんぜん違う。コロンもうまいけどさ。
高級コンビーフ缶と違ってそのまま食べてもどうかと思う味なのだが、フライパンで焼く、目玉焼きと一緒にロコモコにすると俄然、うまくなる。それ以外の使い道は知らない。ハムのようなコンビーフのような独特のスパム。電子メールのスパムの語源とも関係があるらしい。
まだまだ語れる気がするが、一般に賛同を得られそうなのはこれくらいのような気もするので10本で打ち止め。
なおチョコレートが出てこないのは、一通り試したが、私の口にあうものが海外にはないため。ギラデリをはじめ海外チョコは後味が気に入らない。長らくニューヨーク産と勘違いしていたロイズの生チョコがおいしいのだが、これは北海道製で国産であることに気がついた。
2006年06月01日
ゲームを斬る!
まったく知らない世界を知るのは楽しい。
アナログゲームの評論集。アナログゲームとはボードゲームやカードゲーム、ロールプレイングゲームなどの総称で、プレイステーションやニンテンドーは関係ない。人生ゲームやモノポリーの世界のことだ。
著者はクリエイター集団SNEを率いる業界の有名人らしい。ゲームが好きでたまらない人らしく、思い入れ一杯に約50本くらいのゲームについて熱い語りが続く。こんな世界があったなんて、と驚いた。
・Group SNE Official Site
http://www.groupsne.co.jp/
紹介されるゲームの多くは「ドイツゲーム」だ。この言葉もこの本で初めて知ったが、ドイツはアナログゲームの先進国で、情報の発信地になっている。Wikipediaにも項目があった(こういう言葉が収録されているのがWikipediaの凄いところだと思う)。
・ドイツのボードゲーム - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%AE%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0
「
ドイツのボードゲーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
ドイツのボードゲームとは、ドイツで作られるボードゲームを指し、現代の世界のゲームの一つの潮流を示すキーワードである。
1980年代以降、世界中でコンピューターゲームが席巻しているように見えるが、昔ながらの「紙とコマ」で遊ぶタイプのボードゲームも、依然として受け継がれ、活発に遊ばれている。世界的に見ると、ドイツが最もボードゲームの盛んな国と言える。
ドイツでは、年間数百のゲームが新たに発売される。
本項で述べる「ドイツのボードゲーム」とは、ドイツ人の作者、あるいはドイツのメーカーによるものが中心だが、必ずしもこれに限定せず、周辺のフランス・オランダ・イギリス、あるいはアメリカや日本製の(下記の特徴を持つ)ゲームも視野に入れて語られる場合が多い。
あるいは、狭義の「ボードゲーム」にとどまらず、(形状で分類すると)カードゲーム、ダイスゲーム、立体ゲームといったゲームも含む。
重要なゲームの賞として、ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)、ドイツゲーム大賞(Deutscher Spielepreis)がある。
」
だいたい1コラム1本のゲーム紹介という形式になっている。この5年くらいのアナログゲームの進化の歴史における各ゲームの位置づけが詳しくあるから、読み通すと、だいたいこの世界の全体像と潮流が把握できた。
何本かは購入を検討中。
本書収録作品の中で、私が遊んだことがあったのは2本だけ。どちらも百式管理人の田口さんが購入し、さあ、これやりましょうと誘われ、時にはオフィスを会場として提供したりして、熱い数時間を過ごしたもの。人間同士が顔を突き合わせて知力を戦わせるアナログゲームの面白さは、プレイステーションにはない魅力があるなと実感する。
どちらもおすすめ。
・スタンダードカタン
「
開拓がテーマのファミリーゲーム。3〜4人用で、1ゲーム60分程度。基本的なルールは15分あれば覚えられるというほどシンプル。運と駆け引きと会話が決め手のゲームだ。
プレイヤーは、六角形の土地が組み合わさってできたこの島を開拓する。資源(カード)を使用して「道」「家」「街」を開拓(建設)しながらポイントを獲得していき、一定の点数に到達した人が勝ち。開拓するのに必要な物が産出されなかったり、泥棒や騎士に盗まれたりと開拓の道にはさまざまな障害が待ち受けている。
プレイのたびに、ゲーム盤面(カタン島マップ)をばらばらに組み替えることができるため、何度遊んでも飽きることがないのが特徴。その組み合わせ総数は、なんと2兆9千億通り。運と戦略が半々という絶妙なゲームバランスで、初めての人や子どもでも勝てるチャンスが十分にある。さらに、「自分のカードを他人と交換可能」というカタンならではのルールがあり、プレーヤー同士の会話が弾んでひときわ盛り上がる。移動中や旅先でプレイしたい人には、持ち運びに便利な『ポータブル カタン』がある。
遊び方
1)家を建てて、ゲームスタート。
2)サイコロをふって、カードをゲット。
3)集めたカードで領土を拡大。
4)いらないカードは他の人とトレード。
5)カタン島一番の開拓者を目指す。
「カタン」とは
ボードゲーム大国ドイツで1995年に誕生した、開拓をテーマにしたファミリーゲーム。その年のドイツ2大賞「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」「ドイツゲーム賞」、「エッセン金羽根賞」といったタイトルを総なめにする大人気ゲームとなり、次々に世界各国でも発売され、国際的人気ボードゲームに成長した。毎年ドイツで開かれる「国際ゲームフェア」の特別イベントとして、「カタン ワールドチャンピオンシップ」が開催されている。 ゲームの舞台は、中世、大航海時代のカタン島。複数の入植者たちが島を開拓していき、もっとも繁栄したプレイヤーが勝利するという内容。
」
・キャッシュフロー 101 (日本語版)
「
ロバート・キヨサキが考案した、お金持ちになるためのアイデアがつまったゲーム。楽しみながら、会計、金融、投資について学び、ファイナンシャルIQ向上を狙いたい人に。
プレーヤーはまず「給料のために懸命に働く生活」を表す「ラットレース」と呼ばれる円をまわるところからスタート。この円をまわりながら、株や不動産、ビジネスなどに投資を行っていく。
ファイナンシャルIQを早く簡単に高める方法、お金持ちがお金について自分の子供に教えていること、給料が少なくてもお金持ちになり経済的自由を手に入れる方法、資産がお金を生みそのお金が自分のために働いてくれる方法などを学び、「ラットレース」から抜けることに挑戦しよう。
ほかに、より高度な内容のゲームカートを使ってプレイする『キャッシュフロー202 (日本語版)』や、子ども向けの『キャッシュフローforキッズ』もある。
セット内容
・ゲームボード
・ルールブック
・職業カード12枚
・ゲームカード
(スモールディール56枚・ビッグディール42枚・
マーケット42枚・ドゥーダッド42枚)
・ねずみとチーズのこま各6個
・ダイス3個
・各色トークン
・お札セット
・鉛筆6本
・ゲームシート1冊
商品紹介
「会社や税金のためにだけ働く毎日からぬけだすためにはどうすればいいのか」を学ぶためのゲーム。金持ちになるための概念が自然に身につくとともに、会計、金融、投資についても理解が深まります。プレーヤーは始め「ラットレース」と呼ばれる円をまわります。これは「給料のために懸命に働く生活」を表しており、プレーヤーは、この輪をまわりながら、株や不動産、ビジネスなどに投資を行い、ここから抜けることに挑戦します。ファイナンシャルIQを早く簡単に高める方法、お金持ちがお金について考えていること、給料が少なくてもお金持ちになり経済的自由を手に入れる方法、資産がお金を生み、そのお金が自分の為に働いてくれる方法などをキャッシュフロー101で学べます。
」
2005年12月19日
駅伝がマラソンをダメにした
「お正月はどう過ごされるのですか?」と聞かれるのだが、私の場合、まったく面白い答えができない。子供の頃からずっと、家族と紅白歌合戦を見て、行く年来る年を観て、年越しそばを食べて寝るだけの、典型的な日本の年越しスタイルを何十年も続けているのだから。
そして2日、3日は何をするのかというと、家から歩いて1分の国道に出て、箱根駅伝の往路復路を応援するわけである。走者を見送ったら、母校の応援者が集まる場所があるので、そこへ行き、校歌を歌って帰る。新聞社の配る旗ももらって喜んでいたりする。同じような過ごし方をしている近所の友人知人や親戚と顔を合わせたりもする。
お正月の風物詩に欠かせない駅伝なのだけれど、真剣にスタートからゴールまで観ているわけではない。だらだら観ている。駅伝という競技についても詳しいことは知らない。背景がわかったら面白そうだなと毎年思っていたのだが、いい新書が刊行されていた。
この本はジャーナリストの駅伝論。内容のほとんどは箱根駅伝の話である。駅伝批判かと思わせる題名であるが、著者は駅伝大好きな人間で、駅伝の魅力をたくさん語っている。あまりに駅伝が魅力的なのでマラソンをダメにしてしまった、という程度の意味である。
箱根駅伝は1987年に日本テレビが中継を開始してから、「甲子園化」したそうである。陸上の長距離の選手たちは、全国放送される駅伝に憧れて大学に入ってくる。かつてはマラソンなどの選手が息抜きに箱根を走っていたそうだが、90年代に入ってからは、男子マラソンが衰退し、駅伝が長距離のゴールになってしまったそうだ。
大学としても1月は入試の願書の受付時期である。テレビでの選手の活躍は大変な宣伝効果を持つ。特に知名度の低い新興校にとって意味は大きい。ケニア留学生を起用して箱根の常連になった山梨学院大学などは、駅伝をうまく宣伝に使った例であるが、最近では伝統校までも、駅伝強化に乗り出し始めているらしい。
主要各校の歴史や近況が細かくまとめられている。なんといっても注目は4連覇を達成し5連覇に挑戦する駒澤大学の動向であろう。立役者である大八木監督の指導方法や戦術が分析されている。今年も強そうである。復路を重視しているらしいので、今年は注目してみよう。
長い練習の期間をチーム一体となって頑張るのためには監督の役割は大きい。著者は主要校の出場選手の髪の長さを調べた話が面白い。すると髪が長いロン毛派が11校、短髪派が8校という結果になった。そして優勝記録との関係を分析すると、
「
このロン毛派と短い派の比較に何の意味も見出せない人もいると思うが、日テレ時代になってからの優勝校を振り返ってみると、ロン毛校の学校は、1990年、91年に連覇した大東文化大と、96年優勝の中大しかない。そのほかはすべて短い派の大学が優勝しているのだ。
」
髪の長さや服装には指導者の個性が表れるからだと著者は説明している。長距離の世界では、監督が食事や睡眠も含めて生活全般を管理できなければ、強い選手が育たない。髪の長さと優勝回数の関係は偶然ではないはずだという。髪の長さを気にして、今年は観戦してみよう。
さて、観戦には日テレの中継映像を見ながらNHKラジオの中継を聴くのが著者のスタイルだと紹介されていた。CMの中断がなく、NHKが独自の中継者を走らせているため、情報も濃いらしい。今年はそうしてみよう。ちょうど忘年会議のおみやげでYahoo! Japanさんからラジオをもらったし。
・SAIJO'S箱根駅伝・金利HOMEPAGE
http://www31.ocn.ne.jp/~j_saijo/
駅伝に大変詳しいサイト。通過時刻予想があるため、沿道の応援者にも参考になる。
『東京箱根間往復大学駅伝競走』
http://www.ntv.co.jp/hakone82/main.html
2005年08月07日
新幹線99の謎―知ってるようで知らない意外な事実
出張の多い人に特におすすめの雑学本。
全世界で鉄道を利用する人は1日1億6000万人。そのうち40%にあたる6000万人は日本での利用で、その日本で1日平均利用者数1620万人を誇る世界一の利用者数を誇るのはJR東日本だそうだ。鉄道大国とは聞いていたが日本が世界一だったとは驚いた。世界一の鉄道会社の技術の粋が集められたのが超特急新幹線。
私は鉄道マニアではないけれど新幹線は大好きだ。乗るたびにワクワクする。やはり、あの先頭車両の鼻の長い未来的な形状にこころひかれる。だが、私の世代と今のこどもの世代では、具体的にイメージする形状が違っていることに気がついた。
新幹線には0系、100系、300系、500系、700系、200系、400系、E1系、E2系、E3系など多くの種類があるようで、私のこころの新幹線は0系、100系のままなのだが、実際には今は0系は走行しておらず、100系も珍しい存在になってきているようだ。
2歳になった息子に買ったプラレールは当然100系なのだが、
・プラレール 100系 新幹線 S-04
「発売から40年以上が経つトミーのロングセラー商品。原型は1959年発売の『プラスチック汽車 レールセット』で、手で転がして遊ぶものだった。以来、組み立てやすくする、故障をなくす、などの改良は行っているが、基本的なモデルチェンジは行っていない。1960年代に小型モーター内蔵の3両編成のタイプを発売、現在も車両は3両編成が基本になっている。3歳の子どもがひとりでも遊べるほか、レールレイアウトを追加して走らせたり、さらに親が一緒になって街をつくる大掛かりなレイアウトを作り上げたりなど、遊び方の自由度が高いのも魅力。 」
彼が見ているDVDでは、
・てつどう大好き 走れ!新幹線
年々姿を変え、スピードも超高速化されてきた新幹線の姿を収めた、てつどう大好きシリーズがDVD化。
登場するのは新しい新幹線が主流である。彼は既に「ナナヒャクケイ のぞみ」などと名称を区別し始めているようだ。だんだん私の方がついていけなくなってきた。
この形状の違いは空気抵抗を考えた上での進化だそうで、0系の時点では時速210キロだったため、丸い鼻で十分だった。先頭車両にぶつかる空気は列車にまとわりつき、最後尾を過ぎて列車を引き戻そうとする力に変わる。時速200キロを超えると速度の二乗に比例する。そこで新しいモデルでは、この鼻を尖らせることで空気を上に跳ね上げる。0系では4.5メートルだった鼻が、500系では15メートルもある。
そして、意外なことに高速化の最大の壁は、高速化する技術や安全性ではなく、トンネル侵入時のドンという騒音であるという。技術的には500キロも可能だが、周辺住民の苦情を抑える技術が間に合っていないというのは面白い。
・Wonder in life-be on Sunday 「トンネルドン」抜けろ
http://be.asahi.com/be_s/20050424/042401.html
この本には、
・運転士が自由に操作できるのは時速30キロ以下のときだけ
・新幹線社内でしか買えない限定駅弁がある
・大人気だった食堂車がなくなった理由
・VIP専用車両が一般車両として使われている話
・東京ー大阪を1時間で結ぶリニア新幹線の
など、新幹線についての99の疑問に回答がまとめられている。お盆の帰省シーズン前に読んでおくと、話のタネとして使える。
私の謎。
一人で乗る場合、最前列の窓際を予約する。最前列には電源コンセントがあることが多くて、ノートPCを使えるから。だが、コンセントがない車両もある。どうなっているのだろうか、そもそも使っていて問題ないのだろうか?と疑問に思っていた。ネットで調べたらすぐにでてきた。
・新幹線には先頭の座席にコンセントがついているものとついていないものがありますが、事前に予約する際に、コンセントのある便(車両?)を選択する方法はありますか?
http://www.hatena.ne.jp/1104896147
使っていて問題ないのですね。
・はてな 質問検索 新幹線
http://www.hatena.ne.jp/search?wd=%BF%B7%B4%B4%C0%FE
ここにも新幹線の謎が多数。
次に期待しているのが新幹線社内の無線LANサービス。現在はハラハラしながら停車駅で急いでメールの送受信を行っている。
・JRおでかけネット - 無線LANサービス
http://www.jr-odekake.net/guide/ekilan/
2005年07月04日
本当にあった嘘のような話―「偶然の一致」のミステリーを探る
・本当にあった嘘のような話―「偶然の一致」のミステリーを探る
この本は、偶然に二つの事象が発生すること=共時性についての二人のジャーナリストによる本である。途中、紹介されている駒澤大学小野教授の実験結果は偶然を信じる心理を明らかにする面白い実験だ。
被験者の学生の前に3本のコントロールレバーとカウンターを置く。レバーを引くと得点が出る。実はどうレバーを引いても総得点は変わらないのだが、それを知らない被験者は、高得点が出たときの自分の行為と結果を結びつけて考え始めたそうだ。
・迷信実験
http://www.komazawa-u.ac.jp/~ono/meishin.htm
「
セッション開始後約5分、レバーを引くのをいったん中断して、右手をレバーのフレームに置いたときポイントが出た。続いて彼女はテーブルによじのぼり、右手でカウンターに触れたところで、またポイントが出てきた。それからはシグナル灯、スクリーンやそれを掛ける釘、壁など、いろんなものを触りはじめた。約10分後、被験者が床に飛び降りたときにちょうどポイントが出たのを機に、ものに触れる動作が飛び降りる動作に入れ替わった。それが5回繰り返されたあと、被験者が飛び上がり、手に持ったスリッパで天井に触れたときにポイントが出た。飛んで天井に触れるという行動は繰り返され、ポイントも出たが、25分ごろに止まった。おそらく疲労したからだと思われる。
」
恐らくラスベガスのスロットマシンのお客の行動を調査すれば、同様の結果が出てくることだろう。
カナダのマニトバ大学の学生に対して何年もかけて行った調査では共時性の経験度が高い人は精神の健康度が高いらしい。偶然に意味を見出す人たちは人生を前向きにとらえて、楽しく生きている傾向があるからだそうだ。一方で、偶然に過剰に意味を見出す「アポフェニア」という性向が、ある種の心の病の兆候か原因である可能性があるとも言われる。
この本には無数の本当にあった嘘のような偶然が後半で紹介されている。だが、多くは直感するほど稀なことではないケースも多いようだ。たとえば、苗字が同じゴルファーが二人連続でホールインワンを達成する偶然というのがあったとする。
アマチュアである程度の腕前のゴルファーが二人連続でホールインワンを達成する確率は、ざっと18億5千万分の1。だが、イギリスでは、200万人のゴルファーが週に平均2回ラウンドしている。合計すると年間に2億ラウンド以上、36億ホールになる。18億5千万分の1であっても、年に1度や2度起きていておかしくないのだ。
「コントロールの錯覚」が共時性を感じてしまう原因のひとつとして挙げられている。人間が信号に近づいたときに「変われ」と思うことはよくあるが、そのときに実際に信号が変わると、自分の力が関与したと感じる心理だ。
人類は出来事を関連づける能力によって繁栄してきた。無関係な事柄に意味を見出してしまうのは一種の適応能力であるかもしれない。米国大統領ケネディとリンカーンの二人は共通する偶然の一致が多数あると言われる。二人はそれぞれ1846年と1946年に議員に選出され、1860年と1960年に当選し、苗字はそろって7文字で、ともに市民権運動に取り組み、金曜日に銃で暗殺された。これだけ読むと何か運命のようなものを感じてしまう。
だが、スケプティカル・インクワイアラー誌が世界の指導者同士の「驚くべき偶然の一致」を見つけるコンテストを開催したところ、優勝はケネディ大統領とメキシコのアルバロ・オブレゴン大統領との不可解な16の類似点の発見というものだったそうだ。
さて、昨日に続いて偶然と必然について書いているが、このテーマは学生時代によく考えたテーマだった。その頃、夢中に解読に励んでいたのが、ユングのシンクロニシティ研究を追ったこの本。
・シンクロニシティ
穏れた次元と創造的な宇宙。ユング心理学、量子論、ナスカピ・インディアンの託宣、中国古代文明、デヴィッド・ボームの内蔵秩序、ルパート・シェルドレイクの形態形成場、プリゴジーヌ、グノーシス主義のプレローマ…
この本、後半は難解になり、ユングの晩年に書いたシンクロニシティの神秘を描いた図が掲載されていたような気がする。私にとっては強烈なイメージを残した独特な本だった。今思い起こすと、ほとんど神秘思想に近い内容だったように思うが、大学者ユングが晩年に熱中していたのは妄想だったのだろうか。私が読みが足りないのかはまだわからない。
結局、偶然に何を見るかは、人生観であり世界観であり、宇宙観でもあるということ。
・SYNC なぜ自然はシンクロしたがるのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003279.html
・セレンディピティ・マシン 未知なる世界、発見への航海
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003287.html
・偶然からモノを見つけだす能力―「セレンディピティ」の活かし方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001168.html
・確率的発想法 数学を日常に活かす
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001290.html
2005年05月08日
世界を見る目が変わる50の事実
・中国では4400万人の女性が行方不明
・世界の死刑執行の81%はわずか3カ国に集中している。中国、イラン、米国である。
・ロシアで家庭内暴力で殺される女性は年間1万2000人を超える
・世界にはいまも2700万人の奴隷がいる
・米国は国連に対し、10億ドル以上の未払い金がある
・世界人口の70%以上は電話を使ったことがない
・アメリカの3人に1人は異星人が地球に来たと信じている
など、50項目の世界の知られざる事実について各数ページで考察を重ねていく。
マクドナルドの黄色いアーチがわかる人88%に対してキリスト教の十字架は54%という調査結果や、ブラジルでは化粧品販売員の数が軍人の数を上回っていることのように、ニヤリとさせられる項目もあるが、奴隷制の時代以上に現代は奴隷の数が多いことや、地雷で毎時間1人が死んでいる事実のように重たいテーマもある。硬軟織り交ぜられていて項目を読んでいるだけでも楽しい。
著者は英国BBCのジャーナリスト。政治的にはリベラル。幅広いテーマから50を選んできて中立姿勢で論評しているが、そこに若干のメッセージ色も感じられる。
つまり、著者が言いたいのは、
・世界の資源分配が不平等であること
・取り組むべき課題の優先順位が間違っていること
・深刻で悲惨な問題が知られずに存在していること
といったことだろう。
世界の上位1%の富裕層の収入は下位57%の貧困層の合計に等しいそうだ。国際援助や寄付で富を一時的に再分配することも大切だが、それだけでは根本解決しない問題が多い。
2003年メキシコのカンクン会議で、韓国の農民代表が、EUの自国の農業保護政策に対して自由化を求め、割腹自殺で抗議した。これに対してEUの農業担当委員フランツ・フィッシュラーは、こうコメントしたという。
「
確かに、先進国ではさまざまなことに金を使っている。しかしそれはわれわれが愚かだからではなく、生活水準が高いからだ。次の批判はいったい何だ?アフリカに援助金を送るかわりに政府が病院のベッドに、金のかかる防音壁に、公園のこぎれいな樹木に公金を使っていると批判するのか?世界中いかなる社会にも、どんな公益やサービスが自分たちにとって重要か、選ぶ権利があるはずだ。
」
これは象徴的な先進国サイドの意見だと感じる。
だが、そこには50項目の解決を自ら選ぶ権利もある。政治や宗教が違ってもまだまだ世界が合意できることはたくさんあるように思えた。知ること、議論すること、手段を持つことが大切なのではないか。
こうした課題を広く知らせる役割が、これからの新しいメディアの役割なのだろうと思った。従来のマスメディアはこれらの問題をあまり取り上げていない。たとえば「今日世界に2700万人の奴隷がいる」などは新聞やテレビが1年間トップニュースに掲げてもおかしくないテーマなはずだが、そんなマスメディアはない。
また、手段を持つことという点で、技術が解決できることも多いはずだ。技術の革新は効率関数を大きく書き換えることができる。エネルギー問題や食糧問題、医療の分野などの分野では、技術者にできることもたくさんありそうだ。
現代は歴史の終焉などと言われるが、これらの問題一つ一つを解決することはかなりドラマチックな歴史になるのじゃないだろうか。そのプロセスに参加することの醍醐味、面白さを味わう場が、インターネットであるべきだ、とそんな気がした。
2005年03月29日
通勤電車で座る技術!
企画の勝利。この本は売れそう。
メールマガジンをベースに書籍化された本。通勤電車で座る「シット・ダウン・テクノロジー」について67の技法を考察している。
各技法は、以下の章立てに分類される。
・座るために並ぶ技術
・いざ乗車で座る技術
・座るために立つ技術
・降りる客を見極める技術
・快適に座る技術
・座るために暮らす技術
・座る技術 悪のマニュアル
・譲り合いこそ最大の技術
7人掛けシートの真ん中のドアの前に3列で並んだ場合、計算上、1列目に並べば座れる確率は100%だが、5列目だと66.7%になる、など、一度は誰しも並びながら計算してみようと思って面倒になってやめた経験がある?はずの計算をしっかり分析している。
カップルの後ろに立つな、だが座るなら隣にしろ、だとか、降りる人を探す際は、厚い本を読んでいる人より文庫本を読んでいる人の方が有望だ、とか、降りるサインはこれだといった今日から実践できる超実用ノウハウがある。
私は毎日片道1時間半の電車通勤をしているので、シット・ダウン・テクノロジーは長年、独自に研究してきたが、コミュニティの発想の豊かさにはかなわない。全部を覚えておけば、座れる確率は10%から20%程度向上するのではないかと思ってしまった。とても面白かった。
私の場合は始発駅をうまく使えるため、帰りはほぼ必ず座れる環境にある。私にとってその時間は貴重な読書タイムで、おかげで、このブログが続けられるという事情がある。今の課題は、疲れた帰りに座って本を広げていると眠くなってしまうこと。シットダウン&ウエイクアップ・テクノロジーを現在は研究中。これには、気になったところに付箋紙を挟む枚数のノルマを決めておくと目的意識が高まり、眠気が飛ぶ。本を優先したい日は敢えて立ち上がる、というのが現状のノウハウ。
シットダウン&ウェイクアップ&ファストリーディング(速読)テクノロジーという複合技も開発中だ。私の通勤はJRに1時間+地下鉄に15分、待ち時間15分という構成。まとまっている1時間のJRが重要な時間だ。1時間の半分、30分目にある中間駅通過時に、自分の読書ペースをチェックしている。その時点で予定より消化ページ数が遅れていたら後半30分はスピードアップする。到着5分前に本を閉じて55分間の読書を頭の中で要約する。可能ならばメモを取る。これを続けていると結構速くなった。
ただし、私が読んでいる本を閉じる5分前にはちょうど前の駅がある。このノウハウ本にも出ていたのだけれど、降りる人の見極め方からすると、私の閉じる動作はやはり紛らわしいようで、前に立っている人を期待させてしまって申し訳ないのが悩み。スミマセン、私が降りるのは本当は次の駅なんです。
・通勤電車で座る技術!
http://members.jcom.home.ne.jp/sitdown/
2005年03月28日
「おいしい」となぜ食べすぎるのか―味と体のふしぎな関係
■おいしさの科学
この本によると、味を感じる細胞には5つの受容体があり、それらに対応する甘み、塩辛味、酸味、苦味、うま味の5つの基本味があるそうだ。それぞれ、ショ糖、食塩、クエン酸、キニーネ、グルタミン酸が特異的に作用することで、味細胞を活性化させているらしい。
味覚は音楽に似ていて、ひとつやふたつくらいなら単体で感覚することができる(グレープフルーツは甘くてすっぱい)が、複合的な”おいしさ”はシンフォニーのようなもので、全体として感じることしかできなくなる。
この味覚要素のシンフォニーとしてのおいしさに対する人間の判断力と言うのはかなり曖昧らしく、ある学者が、老舗の一本2400円の羊羹とスーパーの800円の羊羹を目隠しで評価させると、被験者の意見はちょうど半々に分かれたという事例が紹介されていた。ただし、「よく噛んで」と指示を与えると、老舗の羊羹の支持者が増えたという。これは歯ごたえ、風味がよく感じ取られた結果だそうで、注意深く味わえば、料理の価値は分かるものだという結論。
そもそも生き物は甘味を生まれつき好む性質はあるらしい。新生児に甘みと苦味を与えると、甘みでは微笑むが、苦味は嫌な顔をする。甘みはエネルギーに結びつくので、生物は好む。
食後に快感があったり、食事の際の良い思い出と結びつくと人はその味を好きになるという心理効果も大きいらしい。最大の快感は「おいしい」と思うことであり、おいしいから食べ過ぎるということでもある。
私はお菓子のラムネが大好きで、大人になってからもときどき買ってはスーツのポケットに入れて持ち歩いたりしている。理由ははっきりしていて、子供時代に海外に居た頃、このラムネ菓子というのが、滅多に手に入らず、希少で貴重な「夢のようなお菓子」だと思っていたから。ときどき入手できると、薬の錠剤のような外観と、不思議な感じの人工的な甘さが、とてもおいしく感じられた。まさに、甘さと思い出のダブルパンチで30過ぎてもラムネを買っているんだなあ、と納得。
この本では、他にも、マヨネーズ、ピーナッツにはまる理由の科学的な分析だとか、満腹でも甘いものを食べられる別腹の解明だとか、味覚判別センサーの開発、食べ合わせのよさ、悪さなど、おいしさをめぐる謎が解明されていく。なぜおいしいのか、おいしいと思うのかには理由があるのだ。
■究極のおいしいを知る方法
この本では、味の各要素の受容機能は生物学的なものであっても「おいしい」は後天的なものという結論になっている。若者と中年と老人がおいしいと思うものは違うようだし、普段のライフスタイルや所属する社会階層でも「おいしい」は違いそうだ。おいしいものを教えあうソーシャルネットワーキングサービスなんてあったらいいな、と思う。
で、その真似事をここでやってみようかと思いついた。
私は神奈川県民なのでときどき横浜の中華街にでかける。この中華街、本当に美味い店というのがありそうなのだけれどなかなか見つからない。相当に高い値段を払えばそれなりにうまさの保証もあるのだろうけれど、地元民としてはそういう店を知りたいのではない。長いこと中華街で大満足という店がなかった。
先週の休日に中華街に行った際、ぶらぶらと探索していたら、街のはずれに一軒の店をみつけた。質素な店構えなのだけれど何か本物っぽさを感じた。この店を観察していると中国人しか出入りしていない。どうやら華僑が観光客相手の店を避けて集う本格の店らしいと感じた。入ってみると私たち家族以外は皆、中国語で話している。もしかして、この店アタリ?。
結果はというと...。
出てくるもの全部が、物凄く美味かった大アタリ。本場の味付け。私の横浜中華街体験では史上最強だったと思う。値段も手ごろで、素晴らしくおいしい店。土日なのに行列もしていない。
さて、この店について知りたくありませんか?
先着10名さまに店の名前と場所をお教えしましょう。ただし、私から聞いた後、この店は他人にどうか教えないでください。少なくともネットでは。
そして、あなたの究極の店を一軒教えてください(全国で構いません)。知る人ぞ知るでお願いします。私もその情報については少なくともネット上では、黙っています。
おいしい情報のギブ&テイク希望者は、
【締め切りました】
まで、自己紹介メールを送ってください。あなたが先着10名以内ならば情報を送ります。それに対する返信としてあなたの究極の店情報を送ってください。
よろしくお願いします。
###でしたが10人に達して締め切りました。
・感性の起源―ヒトはなぜ苦いものが好きになったか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002597.html
・東京 五つ星の手みやげ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001930.html
2005年03月06日
ガンダム・モデル進化論
■ガンダム
祥伝社新書創刊の第一弾としておそらく期待を込めて出版社が送り出したであろう一冊。マニア的ディティールに止まらず、誕生から現在までのガンダムブームを記録に基づいて分析している。アニメ、キャラクター、エンタテイメントという日本のコンテンツビジネスの変遷と構造をガンダムから炙り出している。
ガンダムのプラモデル(ガンプラ)の誕生と発展をめぐる考察。
前提から語る平易な解説は、普段、雑誌ホビージャパンなどを読まない30代の一般ガンダムファン(マジョリティ)にとって、特に素晴らしい出来だと思う。「あの頃」が蘇り、読んでいて胸が躍った。こどもには見えなかった大人の世界で何が起きていたのかよく分かった。思惑通り、ベストセラーの可能性ありではないか。
ガンプラは私も子供時代に夢中になり玩具店に並んで買い集めた。今でも実家の押入れには何箱か未開封のザク初期モデルが眠っているはずだ。
最後までうまく使えなかったが”コンプレッサー”を買って塗料をムラなくスプレーして塗ったり、表面の塗装を紙やすりで削って、下塗りした銀色の塗料を”汚し”として露出させてリアルさを追及するワザも試した。小学校の工作の時間には、プラモデルを選んだ。100/1スケールのゴッグの背中を切り取り、内部に電源とスイッチとLEDを内蔵して”モノアイ”を点灯させる改造くらいまでは手を出した。
しかし中学生になると急速に熱が冷めガンダムからは離れたように思う。個人的にはパソコンとその頃出会ったせいかもしれない。ガンプラ。ほんの2,3年の熱狂だったが、私の世代に与えた影響は大きいはずだ。ガンダムから科学や大人の世界を垣間見ていた気がする。ガンプラとパソコンがなかったら今の私はこの仕事をしていないと断言できる(だからどうだというわけでもないが(笑))。
■ガンプラの自分史を検証する
記憶を頼りに、昔私が確実に作った覚えのあるガンプラをリストアップし、この本に出ていた発売時期と並べてみた。夢中になっていた正確な時期や数量が分かった。
最初のガンプラを手にした1980年は、私は10歳(小学4年生)で最後にガンプラを作ったのは小学6年生だ。やはり中学入学と同時にガンプラも卒業したらしい。30数個のプラモデルをこの期間に作っていた。この時期、発売された製品の90%以上を買った計算になる。
金額的には当時は大金をはたいた感じだったのだが、計算してみると年間に5000円から1万円の範囲であった。意外にかかっていない。毎年、総額はお年玉で賄える範囲だったのか。(塗料、機材を除けばね)
発売年度 | 月 | スケール | モデル |
1980年 | 7月 | 144/1 | ガンダム |
100/1 | ガンダム | ||
8月 | 1200/1 | 量産型ムサイ | |
9月 | 144/1 | シャア専用ザク | |
11月 | 144/1 | グフ | |
100/1 | ドム | ||
12月 | 144/1 | ズゴック | |
144/1 | シャア専用ザク | ||
1200/1 | ホワイトベース | ||
144/1 | 量産型ザク | ||
1981年 | 3月 | 144/1 | ジオング |
100/1 | ガンキャノン | ||
100/1 | シャア専用ゲルググ | ||
4月 | 144/1 | ジム | |
5月 | 144/1 | ガンキャノン | |
144/1 | ガンタンク | ||
144/1 | ゴッグ | ||
6月 | 144/1 | リックドム | |
144/1 | シャア専用ゲルググ | ||
100/1 | 量産型ゲルググ | ||
7月 | 144/1 | ギャン | |
100/1 | シャア専用ザク | ||
8月 | 144/1 | アッガイ | |
144/1 | ゾック | ||
9月 | 144/1 | ビグロ | |
550/1 | ビグザム | ||
144/1 | ボール | ||
10月 | 144/1 | 旧型ザク | |
550/1 | グラブロ | ||
550/1 | エルメス | ||
144/1 | ドダイ | ||
1982年 | 3月 | 100/1 | ゴッグ |
6月 | 250/1 | ザクレロ | |
6月 | 250/1 | ブラウブロ |
■らせん状に進化するガンダム・モデル
機動戦士ガンダムの初回放送期間は1979/4/7-1980/1/26だそうだが、私が最初に見たのは再放送だったと思われる。テレビで見る前にプラモデルを作ったモビルスーツもあった。毎回、かじりついて人間ドラマに見入っていた。子供の頃の刷り込み効果は大きい。先日たまたまCATVで放送されていた最終回で、主人公のアムロが仲間のもとへと帰還するシーンでは思わず涙ぐんでしまった。そういう大人が多いだけではない。Zガンダムに始まる多数の続編、番外編がつくった下の年齢層のファンがいる。今年も最新作は放映されているそうだ。層が厚いためガンプラも最新製造技術によってらせん状に進化してきたという。
ガンプラはまだ続いている。進化を重ねて最新の”パーフェクトグレード”のザクはこうなった。精密でプラモデルと思えない。価格もそれなりにする大人のおもちゃだ。もちろんその後のシリーズも製品化が続いている。初代ガンダムの世代以降のすべての世代にガンダムは愛されているのだ。老人ホームでもガンダムが話題になるのではないかと著者は書いているが、本当だろう。
この本ではガンプラ前史から始まって、バンダイ、ポピー、田宮模型、イマイ、海洋堂、日本サンライズなどのガンダムマーケットの主要プレイヤーの歴史も語られる。キャラクタービジネスのケーススタディとして読むこともできる充実の一冊。
ガンダムジオラマの世界を写真集に閉じ込めた。
以下にアマゾンでのガンダム売れ筋を表示。
2005年01月26日
問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?
明鏡国語辞典の編者たちが書いた問題な日本語解説。
きもい、きしょい、はずい、きょどい、おもしい、うざい、グロい、こくる、めんどい。
こういう若者言葉、時々、分からないものがある。年を取ったのだなあと実感してしまう。ときどき自分の美的センスに合わないものには不快感を感じてしまったりする。特に可能を表すのに「食べれる」「見れる」「出れる」とする”ら抜き言葉”は大嫌いだ。
一方、この本は、私よりも進歩的だ。新しい言葉遣いを国語の乱れとして批判するのではなく、むしろ、広く使われる言葉がやがては国語の本則になっていくのだ、という意識が感じられる。
■気になっていた日本語の発見の連続
それにしても発見の連続だった。そのうち調べてみようと思っていた疑問が数十個も氷解した。知らないこともいっぱいあった。
たとえば、
・「独壇場」(どくだんじょう)は許容されているが、本来は独擅場(どくせんじょう)が正しい。
どくせんじょうという発音は聞いたことがなかった
・「全然いい」、「全然大丈夫」は間違いではない
間違いだと思っていました。
・「人妻」は「ひとづま」だが稲妻は「いなずま」、神通力は「じんずうりき」が本則。 二つの漢字が単独で意味をなし分離可能なときに「つ、づ」となる
・「おざなり」「なおざり」は別の単語で共に正しい
私はなおざりはスペルミスと思っていました
・「とんでもありません」は必ずしも間違いではない
とんでもございませんの間違いと認識していました
・二十世紀は本来は「にじっせいき」だが「にじゅっせいき」が広く使われる
そうなのか、にじっせいき、なのか
■コンピュータなのかコンピューターなのか
IT業界の人間は「コンピュータ」と書く人が圧倒的に多い。逆にデジタルに縁遠い一般世界の人たちは「コンピューター」と書いていると思う。役所、辞書、新聞では「コンピューター」だ。
この表記はずっと気になっていた。私は相手によって使い分けている。
Web上ではどう使われているだろうかとGoogleで調べてみた。
インターネット上ではデジタル系が多いせいか、
コンピュータ(コンピューターを除く)の検索結果 約 5,230,000
コンピューター(コンピュータを除く)の検索結果 約 2,080,000
で、コンピュータが優勢である。一般書籍では逆転するかもしれない。
ではユーザとユーザーではどうかというと、
ユーザ(ユーザーを除く)の検索結果 約 4,850,000
ユーザー(ユーザを除く)の検索結果 約 6,560,000
この本によると本来はコンピューター、ユーザーと書くそうだが、「外来語の表記」では「ー」は慣例に応じて省くこともできるとあり、間違いというわけではないらしい。ただ、語形が短いメーカー、シャッターなどは省かないほうがいいのではないかとまとめられている。
■リンクを張るのか、貼るのか
この本には出ていなかったが、ずっと気になっている言葉がある。リンクを張る、リンクを貼る、である。
リンクを張る の検索結果 約 169,000 件
リンクを貼る の検索結果 約 99,500 件
おそらく、張るが正しいと思うわけだが、長年、Webを作る側にいると、貼るも正しいことにしてほしくなる。特に画像でのリンクの場合、張るのでなく、貼っている気がする。文字列リンクであっても、コピーアンドペーストで「貼る」場合、感覚的には貼っているのである。張っていない。
普通に考えると「ホームページに画像を貼る」は正しいだろう。ページは紙のメタファーだからだ。「ホームページに画像リンクを貼る」も画像が主ならば論理的には正しいことになると思われる。では、文字列はどうなのか。従来は文字は筆で書くから”貼れ”ないのだが、クリップボードのあるコンピュータでは”貼る”ことができる。認めてもいいような気がする。
いまちょうど使ったが、かつて95年ごろ、ネット上では「ホームページ」論争があった。
「ホームページ」とは、本来、
1 サイトのトップページ
2 ブラウザー起動時に開くページ
であって、その他のページは「Webページ」と呼ぶべきだという議論だった。今ではそう細かい差異を気にせず使うのが一般的だと思う。私はTPOで使い分けているが、古くからの技術系ユーザの中にはこだわっている人も多い。
Googleで調べてみると、利用頻度は
ホームページ の検索結果 約 47,900,000 件
Webページ の検索結果 約 7,910,000 件
ということだった。
それぞれ本来の意味で使われたかどうかは調べていないが、なんでもホームページ派が勝ったような印象である。
言葉はよく使われれば、最初は文法的に間違い、乱れであっても、正しいと認められていく。今まではそれを一部の国語の専門家が決めていたが、この本に登場する専門家たち、結構、ネットで検索して普及状況を確認しているようだ。これからは検索エンジンが国語を決めていくのかもしれない。
2004年12月15日
タブーの漢字学
■男女の性器、性交を表す意外な漢字
いきなりだが、この本によると武士の「士」、先祖の「祖」の原字は「且」。この「且」は3千年前の甲骨文字に由来し、その形は屹立する男性シンボルだそうである。一人前の男性を表すために性器をかたどった文字が作られた。性に関する漢字で衝撃的だったのは「色」。面白いので原文を引用すると、
「
「色」は、ひざまずいた女性を男性が後ろから抱き、背後からおおいかぶさってまじわっているさま、すなわち「後背位」というラーゲ、いわゆるバックからの性交のさまをかたどった漢字である。
」
30へ〜程度あげたくなるトリビアであった。では女性性器を表す漢字はなんだったのか?。答えがこの本に出ていたが、意外にも、私の名前にも入っていて、日本では一般的に男性の名前に使われる「也」だという説があるそうだ。中国の漢字の原典「説文解字」にそのような定義が書かれているという。
ところが「也」は中国でも歴代の立派な書物にも今でも、断定の意味で頻出する字である。西暦100年成立の原典に定義があるからといっても、後世の中国人学者でさえ、納得がいかない定義だったらしい。「也」が女性性器の意味で使われたことは日本では一度もなく、中国でも長い間ないそうだ。良かった。私の名前が危うく「大きな女陰」という意味になるところだった(笑)。
■書いたら死刑の避諱の漢字
「丘、玄、�Y、胤、弘、暦」という漢字を書くだけで死刑になった人が18世紀の中国に実在した。これらの漢字は歴代皇帝の名前に使われていたため、後世の人々は一切使ってはならなかったそうだ。例えば唐の第2代皇帝の本名は李世民であったので、当時、世と民は使用がご法度であった。既に名前に世や民と入っていた人は、世→代に、民→人と意味の似た漢字に改名したそうだ。どうしても禁じられた漢字を書かねばならない場合は、欠筆といって、その漢字の線を一本抜くことで、書いたけれども書いていないことにしたらしい。
避諱という掟があって、皇帝の名前はその死後も使ってはならなかったそうだ。国家が編纂する漢字の辞書からも抜かされてしまう。そんなことをしていたら、使えない漢字だらけになってしまうではないか?と思うわけだが、別にそれで問題なかったらしい。さすがに10万種近くある漢字ならではの慣習だ。アルファベットでAもBもCもダメと禁じていたら、数世代で破綻してしまっただろう。漢字なら100や200欠けても代わりがいくらでもあるわけだ。
その避諱の掟を破り、字義の由来本を出版しようとした学者は、欠筆にせず、そのものずばりを書いてしまったので、前述の通り死刑になってしまったそうだ。皇帝だけでなく、一般の家庭でも先祖の名前の漢字を子孫が使わないことが多かったという。使うことは惧れを知らず不遜な行為だった。それだけでなく子孫がその同じ漢字を使う役職につくことさえ禁じられたりしていた。例えば、「安」という字が入っている祖先を持つ人は都、長安の役人にはなれなかった。折角難しい科挙試験に合格したのに、進士という役職の「進」と同じ読みの「晋」の字を持つ親がいたせいで、不合格にされた人もいたという。私の大也という名前だと私の子孫は大臣や大佐にはなれなかったわけだ。
先祖の一字を子供につけることの多い現代とはまるで逆の習慣が古代中国にはあった。それだけ言葉や文字は霊性の宿るものとして感じられてきたということだろう。日本の言霊思想にもこの中国文化は影響を与えているのだろう。
■タブーの文字を使わない工夫
この本は中国や日本の古典研究から、漢字に隠された性や死、排泄や穢れなどの意味を暴露していく。最も面白いのはそうしたタブーの文字を避けるために、さまざまな言い換えの工夫と努力がなされてきたかの事例解説。
女性言葉で今でもお目にかかるを「お目もじする」ということがあるが、もじとは文字のことだそうである。「あいつにホの字」と同じような婉曲表現で、異性に会うことをそのまま表現してははしたないとか、惚れたと直接言うのは恥ずかしいという心理の結果であるという。しゃもじは本来杓子が正式名称だったが、食べ物にまつわることもはしたないので、しゃもじになったらしい。なんと奥ゆかしい。
今でも、結婚式のスピーチでは「重ね重ね」「またまた」「たびたび」などの繰り返し言葉は避けられていたり、休憩室はどちら?と言ってトイレの所在を聞いたりする。英語でも「pay a call 〔婉曲〕 トイレに行く」という表現があるそうだ。
デジタルの世界にはこうしたタブーが見当たらない。この単語をリンク文字列に使うのは不吉、だとか、メールのサブジェクトにこの単語は汚らわしいという話は聞かない。サーバダウンは不吉だから、サーバがお隠れになるとか、ハードディスクがおめでたくなられたとか言わない。山の仕事、海の仕事には神を畏れて避ける言葉があるものだが、端末室にはやはり神不在ということか。
ところで日本のネットといえば2ちゃんねる管理人のあのお方。いつもひらがなで呼ばれているのは、やっぱり神だからでいらっしゃるのだろうか?。
2004年08月06日
怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか
■ブランドマントラとしてのInspire The Next
音の持つ質感(クオリア)、サブリミナル効果についての本である。
「
「車の名前にはCがいい」(例・カローラ、クラウン、セドリック、シビック等)
「女性雑誌はNとMが売れる」(例・ノンノ、アンアン、モア等)
「人気怪獣の名前には必ず濁音が入っている」(例・ゴジラ、ガメラ、キングギドラ等)」
言葉を構成する音素にはそれぞれ固有の質感があって、それが聞くものの深層心理に影響を与えるのではないか?という仮説をこの著者は徹底的に研究した。ことばを構成する音素を解析して感性イメージ化するのだ。
たとえば日立のキャッチコピー「Inspire The Next」。著者のメソッドで音素分析すると「光の粒が胸の中に飛び込んできて、やさしい閃光を発する」イメージなのだという。こうしたキャッチはブランドマントラと呼ばれ、文章自体にたいした意味がなくとも、繰り返し聞かされるだけで、そのイメージが刷り込まれる、サブリミナル効果があるという。
そして、一般に濁音は若い男性を刺激すると結論している。たとえばB音を発生する際の口腔の動きは「閉じた唇から溜めた息を放出させ、両唇を震わせて出す音である。発音直前の溜めた息が唇を膨らますので、私たちの脳には、まず、膨張の印象が強くもたらされる。」である。この動作は膨張+放出+振動であり、貯めて放出し、増えて賑やかになる音なのだそうだ。男の生殖行為に近いイメージがある故に、若い男性を刺激する。だから怪獣の名前はガギグゲゴなのだという。
ドラゴングループというベンチャー企業がある。創業社長の甲斐さんと5年位前にお好み焼きを食べながら「なんでまたドラゴンという名前になったんですか?」と尋ねたことがあった。答えは「ゴジラとかドラエモンとか濁音が入った名前にしたかったんですよ」。数人だったこの会社は、その後も順調に若い男性社員を魅了して人員拡大、今も成長している。この本流にいえば、二つも濁音が入っている社名だったからだろう。その意味ではデータセクションもリンゴラボも有望であろう(これが言いたかったのですよ)。
■科学とマーケティング
発声する側の口腔内の運動が脳にもたらす質感(強いとか弱い、寒いとか暖かい、乾いている、粘り気があるとか)と、その響きがもたらす質感に注目したのはとてもユニークな視点だと感動した。特に日本語は母音と子音の組み合わせが明確な行列=五十音図として構成されるので、数値分析に持ち込みやすいらしい。著者はこうした要素をチャート化し、言葉の持つイメージを分析するマーケティングメソッドを開発してビジネスにしている。
・株式会社 感性リサーチ
http://www.kansei-research.com/
リサーチ例など情報がある。
世界の言語を広く調べると音素と意味の結びつきが発見できるという。たとえば英語の接頭辞「Co-」と「共」は言語の歴史をたどると同じ語源を持つらしい。そういえば英語の授業のときに日本語の「そう思う」の「そう」と英語の「So」が似ているという話を聞いた。口腔の動きの持つ質感は、人類に普遍のものだから、ことばの類似性が発声していると著者は言う。
この分析が科学といえるかどうかはかなり疑問が残る。口腔内の動きを文章化しているが、記述の仕方は他に何通りも考えられるはずだ。また仮に運動の客観記述ができたとしても、現在の脳科学の技術(MRIなど)ではミリ秒単位の活性化を検出できないので、動作と脳の反応の因果関係が証明できないだろう。言語の類似性は、ある程度は語源の共有例があるのだろうが、たまたま類似したものを取り上げて比べた部分のほうが多そうだ。
またことばの持つ他の効果、たとえば言葉の意味、字形、市場の競合製品名との関係など、他の要素と音素の効果を明確に切り分けることは難しい。音はゲシュタルトであり、全体のまとまりが微妙なはたらきをしているはずだ。音素だけ分析しても、効果の立証といえないと思う。この分析手法は科学的とは言えそうにない。
だが、マーケティングが科学である必要はないのではないか、とも考える。科学を装っても現実の企画実行に移すにはどこかで誰かが「エイヤッ」をやる必要がある。直感にもとづいた創造的跳躍。組織決定者は、ある程度のエイヤッの裏づけが欲しい。その段になって数値や論理の説明が、歓迎される。
このメソッドは科学的で普遍的かどうかはともかくとして、直感的にうなづける部分が多く、ツールとして効果もあるのではないかと感じた。ネーミングを考えるマーケッターには、考え方のひとつとして、とても有益だと思う。一応、理論があるからプレゼンしやすいですしね。
関連情報:
・苗字の最初の文字と名前の最初の文字を入れ替えてみました
http://homepage2.nifty.com/sledge_hammer_web/names.htm
名前と姓の一文字目を取り替えるとマヌケな響きになる
ハシモト ダイヤ → ダシモト ハイヤ
タグチ ゲン → ゲグチ タン
コイズミ ジュンイチロウ → ジュイズミ コンイチロウ
・フォント考、印象の良さ、強さ、周辺ビジネス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000526.html
フォントの持つ誘導場について
2004年02月01日
犬は「びよ」と鳴いていた―日本語は擬音語・擬態語が面白い
イヌが「わんわん」、ネコが「ニャーニャー」鳴く、擬音語。「バリバリの営業マン」「電子レンジでチンしておいて」という具合で使う擬態語。この本によると、英語では350種類しかないのに、日本語には1200以上あるとか、5倍も多いなどの調査結果が紹介されている。著者の調べによると、約半数は900年以上も永続する古い言葉であり、単なる流行語というわけではないらしい。
■この分野の日本の第一人者の書
この本の著者は、日本語における擬音語、擬態語の第一人者。辞書も出版している。
・暮らしのことば擬音・擬態語辞典
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062653303/
擬音・擬態語2000語を集大成した、最大・最高・最新の擬音・擬態語辞典
時代によって、擬音語、擬態語の表現は変る例もあるそうで、江戸時代のイヌの鳴き声は「びよびよ」だったという例が、タイトルにもなっている。古い文献をたどりながら、多数の実例を挙げて、擬音語、擬態語がどう発生し、変化し、消滅して行くかの考察が重ねられる。現代の用法や流行ももちろん、解説されており、チン、ピンポン、ブーなど現代では電子音の擬態語が多いことなど、なるほど、と感心する。
・著者山口仲美氏のサイト
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/index.html
著者のサイトには多数の論文が公開されており、特に以下の文章は、この本のリードとしてぴったりだ。
・擬音語・擬態語の変化(前編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun2.html
・擬音語・擬態語の変化(後編)
http://www.toshima.ne.jp/~yosh8091/ronbun3.html
上記のコラムを読んでさらに知りたいと思う人にこの本、絶対におすすめである。雑誌から集めた擬音語、擬態語のパターン分析などは特に興味深く、これから流行る言葉を作ろうとするマーケターにも参考になる情報が多く書かれている。
■私の身の回りの擬音語、擬態語
擬態語で不思議に思っていたのが「ギャフン」である。「ギャフンと言わせてやる」という表現は普通に使うが、実際に負けて「ギャフン」と言う人などいないわけで、どういうことなんだろうと思っていた。私だけではなかったようだ。
・ギャフンの由来をおしえて!
http://homepage2.nifty.com/osiete/s450.htm
なるほど調べてみるものですね。
日常生活の中にも新しい擬態語、擬音語は頻出する。
・マターリ(2ちゃんねる?)
・するっとお見通しだ(ドラマ TRICK)
・ざわわざわわ(森山良子楽曲:「さとうきび畑」)
・そうそう(夏川りみ楽曲:涙そうそう)
・感動して眼の幅涙ダー(友人の言、分かる気がするが...)
IT業界の職場でも独特の擬態語をよく使う。ざっと身の回りで使う例を思い出してみるだけでも、
「3Dでグリグリ動くやつを作ってくださいよ」(デザイナー)
「ゴリゴリ、プログラムのコードをゼロから書くのが好きで」(プログラマ)
「来週の原稿ですが、ここでサクっと書いちゃってもらえませんか?」(編集者)
など、日常的な言葉である。業界が違う人に前後の言葉を省略してしまうと、きっと伝わらないだろうが、逆に同じ業界内部では、この方が意味が活き活きと伝わるから不思議である。
■Webマーケティングと擬態語、擬音語
(Web)マーケティングの世界でもこの種の表現は、有効なはずだ。検証してみる。検索エンジンは、言葉の検索結果画面に広告枠を販売している。キーワードが広告枠なわけだ。
・Googleで「ピカピカ」で検索すると、
「
スーパークリーニングSet
しつこい汚れもこれ一本でOK
TV通販で人気の家庭用クリーナー
www.shopjapan.co.jp
」
というキーワード広告が見つかった。
「キラキラ」「ガンガン」だと、なぜか、
「
ドラゴンクエストV予約
古本市場で予約受付中!親子三代に
わたる感動の名作がPS2で復活
www.ubook.co.jp
」
という広告がでた。
「カサカサ」など大人気で、
「
温泉で人気かかとクリーム
かかとのカサカサをツルツルに
かかと専用の角質柔軟クリーム
www.concierge-beauty.com/
パラフィンパック
自宅で簡単に手足のうるおいパック
一度使うと手放せませんよー
www.kyoto-wel.com/shop/S81131/
ゲルアンドゲルクリーム
乾燥する季節のお肌には保湿一番
プレゼント有・全国送料・消費税無料
sankoinc.com/
」
と3つも広告が表示される。
Webマーケターも、擬音語、擬態語を意識している証拠だ。焼肉屋の「ジュージュー」のように、擬音語、擬態語には、シズル感の演出効果があると思う。トラフィックを呼び込むキーワードとして、意外にまだ活用例の少ない盲点だったりするかもしれない。
キーワード広告こそひとつも出ていないけれど、「ビンビン」などすごく男らしい(笑)検索結果が出てくる。この種の商品には「ビンビン」は売れるキーワード広告枠かもしれない。
Googleのキーワード広告販売サイトでは、各キーワードの金銭的価値が調べられる。キーワードの人気に応じて入札が行われるので、広告的価値の高いキーワード、つまり、儲かるキーワードほど、高い数字になるはずだ。やってみるとこうなった。(費用/日に注目)
なるほど。擬音語、擬態語にも、商業価値の高低の差はだいぶ、あるみたいだ。もうひとつの広告代理店Overtureのツールでも、一般ユーザがどのくらい頻繁に各キーワードで検索を行うかがわかる。結果は次のようになった。
・Overtureキーワードツール
http://inventory.overture.com/d/searchinventory/suggestion/?mkt=jp
53518 ガンガン
1353 キラキラ
693 ピカピカ
591 ビンビン
63 カサカサ
総合的に見ると、ビンビンはユーザにあまり検索されない言葉らしい。その代わり、広告枠は安く買うことができる。ある種の商品を売るのであれば、もしかすると少数だが商品購入率の高い特定の層をサイトへ呼び込める有効なキーワードだったりするかもしれない。
でも、まだ有効性は良く分からない。Webにおける擬態語、擬音語の研究はこれからの分野だろう。
もう一度この本を違う視点で読み直して、擬態語、擬音語で一儲け、たくらんでみよう、かな?。
関連URL:
・英語表現事典 微妙なニュアンスを英語で言うと?
http://home.alc.co.jp/db/owa/s_kaydic?ctg_in=4
2003年09月12日
こんなこと、だれに聞いたらいいの?―日常生活を笑わすQ&A大全 疑心暗鬼の巻
昨日は、ネットつながり[武沢さん(がんばれ社長)、神原さん(News2u社長)、田口さん(百式代表)、神田さん(KNN社長)、小橋さん(今日の雑学+代表)、吉田さん(点灯夫)、丸山さん(i空間)]な方々と飲み会。私は終電で帰ったけれど、他の方々は、午前3時までカードゲームをしていたのだとか。
人気テレビ番組を真似て、各自手持ちのトリビアを披露し、皆をどれだけ「へえーへえー」言わせられるかを競った。
武沢さんの「5千円札に印刷されているのは富士山ではない。シナイ山なのだ」というトリビアが高得点。帰ってGoogleで「5千円札」「シナイ山」を検索すると、
・帰って調べた、その件詳しいページ(偶然知り合いのWebだった)
http://www.geocities.com/Tokyo/Flats/3694/5senen.htm
というページを発見。5千円札を上下裏返すと確かに富士山とは違った形の山が。イスラエルに何度も行っている神田さんも「イスラエル人からお前の国の5千円札はシナイ山が印刷されているんだぞ」と教えられたそうで、ついでに大蔵省にこのお札をデザインしたのは誰?と問い合わせた経験もあるとのこと。大蔵省の答えは意外にも「調べましたが作者不詳で分かりません」だったとのこと。
シナイ山の真偽はともかく、トリビア、雑学はいつの時代も人気コンテンツ。同席していた小橋さんの本も好調に売れて韓国語版もでているらしい。そういえば私はこんな本を最近は読みましたよ。
こんなこと、だれに聞いたらいいの?―日常生活を笑わすQ&A大全 疑心暗鬼の巻
全知全能のセシル・アダムスが読者の難問奇問になんでも完璧に回答しますという設定で。「シカゴ・リーダー」紙上で1973年より続いている連載「ストレートドープ」コーナーをまとめた単行本。
皮肉交じりで読者を小馬鹿にしつつも、データと根拠をきちんと明示して納得させる、軽妙なセシルの文章は、絶品。翻訳も良い感じ。
セシル・アダムスは最近ではインターネットでも、メーリングリストを立ち上げて読者とのQ&A合戦を繰り広げている。つまり原文ならタダで読めるってことです。
・StraightDope
http://www.straightdope.com/
評価:★★☆☆☆