取材ノート ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。 1950年代から60年代にかけて東南アジア諸国ではクーデターが多発した。発展途上のため政情不安になりやすく、国内で唯一まとまりのある軍部が民間政権に揺さぶりをかけたり、軍部の派閥間の争いが表に出たりすることが多かったからだ。 そのころ東南アジアで特派員をした記者は大なり小なりクーデターの洗礼を浴びている。私は行くところ常にクーデターにぶつかり「クーデター男」になった感があった。 ●サイゴン…「上を向いて歩こう」 古い話になってしまうが、南ベトナム共和国(当時)のゴ・ディン・ジエム大統領が殺害されたクーデターは1963年11月だった。短期の取材旅行で、このクーデター直前にサイゴン(現ホーチミン市)を訪れ、クーデターを知ったのはラオスにいるときだった。そのときのサイゴンの暗い雰囲気はいまだに