カネボウ化粧品の場合、(いま社長になっている)知識賢治さんという人は、理と情のバランスが取れた人間ですが、中から上がっていますから、基本的には情の世界の出身者です。そうすると、血が流れるようなことには限界があるんです。合理的にやる人も必要なので、うちから、元マッキンゼーの、余語さんという血も涙もない人に行ってもらって(笑)。ああ、これは余語さんを褒めているんですよ。 だから、経営というのは頭がいいとか悪いとかより、ちょっと違うところにあるんです。これは新しい概念ではなくて、渋沢栄一が近いことを言っています。「経営の要諦は何か」と問われて、「右手にそろばん、左手に論語」と言ったでしょう。松下幸之助も同じようなことを言っているから、この肝のところは変わっていないんです。ああいう大経営者も若いときに散々、理と情の相克で苦労し、血の小便が出るような思いをしている。 経営は、ある意味、罪つくりな仕事
