小学生の頃、自転車に行ける距離のところに児童養護施設があった。自分はそのすぐ隣、というかその敷地内にある建物で、こども工作だかなんだか忘れたけど、紙とか粘土とか木の板とかを使って色々作る夏休み限定の教室に通っていた。 ある時、親戚が来るとかなんかで親が車で送迎してくれた。粘土で鳥を作ったあと、後片付けをして、親が来るのを待っていた。車の音がして、向こうから母親が歩いてくるのが見えて、来た来た、と駆け寄ろうとしたら、間に知らない子供が割り入ってきた。 その子は母親の手を取って、お母さん!と叫んだ。 お母さん、お母さんでしょう、お母さんだよね、俺のお母さんだよね。みたいなことをずっと話しながら、まとわりつく男の子。年は自分より下だったと思う。小さくて、痩せてた。 母親はあらあらまぁまぁと困ったように笑ってていた。 その時そこだけが、ものすごく時間がゆっくり流れていた。 お察しの通り、隣の施設か