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ブラックフライデー
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2019年4月の火災の後、考古学者たちは損傷した大聖堂の床下を発掘する許可を得た。掘り出された遺物は数世紀にわたり行方不明になっていたもので、その多くが現在、パリのクリュニー中世美術館で開催されている「石の声を聴く。ノートルダムの中世の彫刻」展で展示されている。開催期間は2025年3月16日まで。(Photograph Courtesy Denis Gliksman, Inrap) 2022年2月、パリのノートルダム大聖堂の再建を始める準備がようやく整った。だがその前に、考古学者に助言を求めなければならなかった。フランスの法律では、古代の遺物や遺跡が見つかる可能性のある土を掘り起こすような建設プロジェクトには、政府の考古学者による介入が義務付けられているからだ。 今回の考古学者たちの仕事は、尖塔(せんとう)の再建に必要な770トンの足場によって貴重な遺物が押しつぶされないようにすることだっ
足首周りの腱や靱帯を鍛えるかかとエクササイズを実演する理学療法の学生。こうしたエクササイズは、関節の安定性を高め、結合組織全般の健康の促進によい。(Photograph by Izaiah Johnson, The New York Times/Redux) 体を鍛えるというと、筋肉だけに注目しがちだ。だが、力強い動きの裏には、靱帯や腱、関節など、体の動きを支える結合組織というあまり目立たない存在がある。 「バーベルを持ち上げるとき、ランニングをするとき、ゆっくりとヨガのポーズをとるとき。すべての動きには、そうした裏方が不可欠です」と、スポーツ理学療法士でパーソナルトレーナーのジェシカ・ウルキ氏は言う。氏は、米アカデミー・メドテック・ベンチャーズ社の臨床実装マネージャーも務める。 「靱帯や腱は結合組織の一種で、人体のさまざまな構造を支え、固定し、つなぎ合わせる重要な役割を担います」と、米ネ
モロッコ北東部の山岳地帯にある「ハトの洞窟」(タフォラルト)は、かつて石器時代の人々によって利用されていた。その内部にある埋葬穴から、現代も伝統医療で使用されるマオウの球果が見つかった。(Photograph by maghribi, Alamy Stock Photo) 北アフリカ、モロッコの洞窟の古い埋葬穴で、薬または興奮剤として植物を使用していた最古の証拠になるかもしれない遺物が見つかった。11月2日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された研究によると、モロッコ北東部にある「ハトの洞窟」で、1万5000年前の人骨と一緒にマオウ(麻黄)属の低木の球果が埋葬されていた。 マオウに含まれる「エフェドリン」という物質は、強力な興奮剤で、交感神経による脳と体の情報伝達を刺激する働きがある。研究者らは、この植物が埋葬の儀式で摂取されたと考えており、石器時代にこの地域に住む
女児や女性が自閉症と診断される割合が高まっている。研究者らは、その理由のひとつとして、自閉症の人々の体験への理解が深まった点を挙げている。(Photograph by Sophie Chivet, VU/Redux Agency) セレニティ・カイザーさんは48歳で自閉スペクトラム症(ASD、自閉症)と診断された。診断結果は驚きであると同時に、彼女がずっと抱えていた問題に対する答えでもあった。子どものころ、カイザーさんはいつも「度が過ぎる」と言われ、笑い声が大きすぎる、動きが不自然、おかしなタイミングでおかしなことを言うといった指摘を受けていた。11歳のとき、彼女は施設に2度入れられたが、それがなぜなのかは、自分ではよくわからなかった。 自閉症と診断されたあと、カイザーさんは施設に収容されていた当時の書類を調べた。自分が施設に入れられる原因となった特徴が「ほぼ教科書通りの自閉症」だったこと
ドミニカの海で並んで泳ぐ2頭のマッコウクジラ。彼らはエコーロケーション(反響定位)を利用して深海の闇の中で狩りをする。(PHOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 深海に潜って餌をとるクジラには、暗闇の中で餌を見つけるため、音の反響を利用して獲物の位置を特定するソナーのようなしくみが備わっている。しかし彼らのソナーは、海に浮かぶプラスチックごみを好物のイカとして探知している可能性がある。 10月16日付けで学術誌「Marine Pollution Bulletin」に発表された新しい研究によると、ポリ袋(レジ袋)のようなプラスチックごみは、その形状、大きさ、風化の度合い、成分が相まって、イカと驚くほどよく似た「エコー」を返すという。 推定値には幅があるが、世界の海洋には毎年、重さにして数百万トン、数にして合計数十兆個のプラスチ
添加糖類の摂取量を減らすと、気分の改善から老化を緩やかにすることまで、さまざまな健康上のメリットがある。(PHOTOGRAPH BY TENDO23, GETTY IMAGES) 糖類の取り過ぎが体によくないことは、ほとんどの人が知っている。肥満、脂肪肝、2型糖尿病、心臓病、がんなどの健康上のリスクと関連していることから、糖類の摂取をぜひともやめたい悪習リストの上位に挙げる人は少なくない。 糖類の摂取量を減らせば、取り過ぎによる害を避けられるだけでなく、すぐに実感できる驚きの利点をもたらしてくれる。たとえば、「気分や肌の健康、歯の衛生、認知機能、運動能力の向上」が挙げられると、米テキサス州ダラスで活動する栄養学者で登録栄養士のエイミー・グッドソン氏は言う。 そうした恩恵を受けるにはどうすればいいのか、ほかの糖類よりも警戒すべき糖類があるのはなぜか、また、糖類の摂取量を減らすために今日からで
大西洋原産のウミヤツメは、1800年代に北米の五大湖に侵入し、運河を通ってさらに広がった。(Photography by Andrea Miehls/GLFC) 北米の五大湖で、年間70億ドル(約1兆800億円)の規模を誇る漁業を崩壊寸前に追い込んだ外来魚ウミヤツメ(Petromyzon marinus)の駆除プログラムが、まれにみる成功を収めている。数十年におよぶ努力の末、人類は侵略的外来種の広大な湖全域における制御に成功した。世界でも類を見ない、野生生物管理の成功事例だ。 ヤツメウナギの仲間で大西洋原産のウミヤツメは、100年以上前に人間の活動によって五大湖の全域に侵入し、サケやレイクトラウト、ウォールアイといった在来種を食い荒らすようになった。 「ウミヤツメは、ただ泳いで入ってきただけです。我々人間が運河を建設して扉を開けてしまったのです」と、ウミヤツメの管理に取り組む五大湖漁業委員
米国ニューヨークの赤外線サウナに座る女性。赤外線サウナは電気ヒーターや蒸気ではなく光で体を温める。赤外線は痛みの緩和から睡眠の改善まで、さまざまな健康効果が期待されて人気が高まっている。(PHOTOGRAPH BY LAUREL GOLIO, REDUX) サウナやホットエクササイズで体を温める手段として赤外線が人気を集めており、慢性痛の緩和からストレスの軽減までさまざまな効果がうたわれている。従来の暖房が空気を暖めるのに対し、赤外線は人の体や床などの物体を電磁波(光)で直接温める。 米国ミシガン州でピラティススタジオ、パフォーミング・ファンデーションを経営するピラティスインストラクターのブルック・アレクサンドラ氏が初めて赤外線を試したのは、ライム病(マダニにより媒介される感染症)の症状を和らげるために赤外線サウナを使い始めたときだった。(参考記事:「マダニからうつるライム病が急拡大、ワク
ドイツのフライブルクで、魔女の仮装をした2人の人物。1950年頃。(Photograph by Hermann Fuss, Bridgeman Images) 魔女を魔女たらしめるものは何か。黒い服と細長いとんがり帽子を身に着け、ほうきにまたがり空を飛ぶだけではない。ときにはいぼがある老婆であったり、ときには人魚姫のような美女であったりするが、それだけでもない。アメリカン・ポップカルチャーのアーキタイプ(原型)となったこのような魔女のイメージは、近世の魔女狩りの歴史が今に至るまで影響を及ぼし、魔女と呼ばれる人物に対して多くの人が強い関心を持っていることの表れだ。(参考記事:「世界の恐ろしい「魔女」5選、皮を脱ぐ魔女から残忍な吸血女まで」) そこで、魔女の大鍋、とんがり帽子、ほうき、黒猫が、どのようにして魔女の必須アイテムとなったのかを振り返ってみよう。(参考記事:「「アブラカダブラ」は誰が
ローマ皇帝マルクス・オペッリウス・マクリヌスは217年から218年まで在位した。ローマ属州マウレタニアのカエサリア(現在のアルジェリアのシェルシェル)で生まれた。(PHOTOGRAPH BY UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE, UIG/BRIDGEMAN IMAGES) 映画『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で、デンゼル・ワシントンが演じる「マクリヌス」は、3世紀ローマの危険な王宮と闘技場で、権力への道を切り開いていく謎の奴隷商人だ。一方、同時代のローマ皇帝マルクス・オペッリウス・マクリヌスは、現在のアルジェリアで生まれた数少ないアフリカ出身の皇帝だった。 マクリヌスは低い身分からローマ帝国で最も権力のある男へと一気に駆け上がったが、その生涯は映画とは異なる。マクリヌスの急速な出世は古代ローマの多様性、そして、民族や出生地が権力への障壁にならないことを示している。異色
報告書によると、世界の温室効果ガス総排出量は1990年以降、多少の増減はあっても基本的には増加傾向が続いている。1990年の総排出量は378億トンだったが、2010年には510億トンに増加。2020年は世界のコロナ禍の影響もあって前年より減りながらも537億トンになり、23年には571億トンに達した。 各国別の排出量では、中国が160億トンで世界の排出量の約30%を占める。次いで米国が59億トンで、インドも41億トンと排出量が多い。20カ国・地域(G20)加盟国(アフリカ連合の国を除く)の合計は世界全体の77%を占めた。 UNEPの報告書は日本の温室効果ガスの排出量を詳述していないが、環境省によると、2013年度は14億トン。その後減少傾向にあったが、21年度は11億トンで前年度比2.0%増加した。 UNEPだけでなく、多くの地球温暖化に関係する報告書が世界の平均気温が上昇傾向にあることを
2020年、マンモスの牙の発掘作業をしていた作業員が、シベリアの永久凍土の中で約3万2000年前のサーベルタイガーの子どものミイラを発見した。(PHOTOGRAPH BY Alexey V. Lopatin) さまざまな復元図や博物館の模型のほか、映画『アイス・エイジ』シリーズにも登場するが、サーベルタイガー(剣歯虎)が実際にどんな姿をしていたのか、古生物学者はおよそ200年ものあいだ疑問に思ってきた。見つかるのは骨の化石と足跡だけで、長い牙を持つこの肉食動物の本当の容姿はずっと謎だった。だが、シベリアの永久凍土で3万2000年前の子どものミイラが見つかり、ついに外見を披露した。論文は11月14日付けの学術誌「Scientific Reports」に掲載された。 「素晴らしい標本に大興奮しています」と、カナダ自然博物館の古生物学者であるアシュリー・レイノルズ氏は喜ぶ。なお氏は、今回の研究に
Q:不眠症にかかったら医師に相談すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ドイツ、ブラジル、ベルギーは40%以上、中国は20%以上、日本は10%以下 Q:不眠症にかかったら睡眠薬を服用すると回答した国民の割合は? A:スペイン、ベルギーは40%以上、中国、ブラジルは30%以上、ドイツは20%以上、日本は20%以下 このデータは、第44回「寝酒がダメな理由」で紹介した図にもあるように、世界10カ国、 計3万5327人を対象に2002年に実施されたSLE-EP (SLEep EPidemiological) Surveyで得られた結果の一部である。他の不眠対処法についても、自宅でも簡単にできる「カフェインを控える」も最下位、一方で睡眠の質を低下させるため勧められない「寝酒」を選択する人の割合はダントツであった。教育レベルが高い日本人だが、眠ることに関しては落第点のつく残念な結果であった。 さ
「ガス」と名付けられたオスのコウテイペンギンは、2024年11月1日、西オーストラリア州の町デンマーク近くの海岸で発見された。(Photograph By Miles Brotherson/DBCA via AP) ペンギンには優れたナビゲーション能力があり、自分の縄張りよりもはるか遠くへと移動することがよくある。通常、このような冒険はかなり短期間で終わるが、驚くべきことに、やせ細った1羽のコウテイペンギン(Aptenodytes forsteri)が単独で故郷の南極から約3200キロメートル以上も離れたオーストラリアの海岸に上陸した。 2024年11月1日、オーストラリアの西オーストラリア州の町デンマークにあるオーシャンビーチで、おとなのオスのコウテイペンギンがよたよたと浜辺を歩く姿が目撃された。その後地元の野生動物専門家によって保護されたこのペンギンは、ローマ皇帝のアウグストゥスにちな
米セントラルフロリダ大学の生物学者ジェンナ・パルミサーノ氏が持つRaillietiella orientalisの標本。ヘビに肺感染症を引き起こす、外来種の寄生虫だ。(Photograph by Nicolas Conzone) 今、米国フロリダ州の藪(やぶ)の中で、在来種のヘビを襲う恐ろしい病が広がりつつある。ヘビは皆、口から白っぽくて細長い寄生虫を出して死んでいる。もやしのようなこの寄生虫の名はRaillietiella orientalis)。ヘビの体内に入ると、死に至るまで肺を食べるという。 R. orientalisに感染した在来種のヘビが最初に見つかったのは、2012年、フロリダ州南部でのこと。発見者はフロリダ大学と提携する侵入生態学者のメリッサ・ミラー氏だった。 同氏はその後、感染源を、1990年代半ばにアジアから米国に入ってきた侵略的外来種であるビルマニシキヘビ(Pytho
大麻の長期常用と関連付けられるカンナビノイド悪阻症候群(CHS)で入院する人の数が、米国で2017年から2021年までに倍増した。なぜCHSを発症しやすい人がいるのかは、まだ解明されていない。(Photograph by Bill Marr, Nat Geo Image Collection) 繰り返し起こる吐き気、嘔吐、激しい腹痛。そして何度も風呂に入りたがる。こうした胃腸などの異常は、長期にわたる大麻(マリファナ)の常用に関連付けられる「カンナビノイド悪阻(おそ)症候群(CHS)」の典型的な症状だ。 CHSは、2004年に初めてオーストラリアの医師たちによって報告された。米国では患者数が年間275万人と推定され、その数は増えているという。2024年10月号の医学誌「JAMA」に掲載された一般患者向けの記事によると、米国とカナダではCHS関連で救急外来を訪れる患者の数が2017年から20
194平方キロメートルに及ぶユネスコの世界自然遺産ワディ・アル゠ヒタンは、進化の大きな謎の1つを解く鍵を握る場所だとされる。(PHOTOGRAPH BY BELLA FALK) ツタンカーメンの黄金のマスクやギザの大スフィンクスなど、古代エジプトの歴史を鮮やかによみがえらせるものは多い。だが、カイロの南西およそ160キロの砂漠に、はるか昔の栄華を伝えるものが残されている。巨大な生物が暮らしていた頃が垣間見える世界自然遺産の「クジラの谷」ことワディ・アル゠ヒタンだ。人家もなく、水もなく、草木も生えない200平方キロメートルほどの砂漠の谷は、進化の謎を解き明かす鍵を握る場所だと言われている。(参考記事:「エジプト クジラが眠る谷」) 言わば隠れた秘宝 多くの観光客が古代エジプトの宝物を見に訪れる王家の谷とは違い、ワディ・アル゠ヒタンは言わば隠れた秘宝だ。この人里離れた地は、風食と古生物学者たち
1924年に見つかった「タウング・チャイルド」の頭蓋骨。世界初となるアウストラロピテクス・アフリカヌスの発見だったが、人類の祖先だという進化史上の位置づけは、なかなか受け入れられなかった。(Photograph Pascal Goetheluck/Science Photo Library) 最初、その霊長類の頭蓋骨の化石は、暖炉に飾る置物に過ぎなかった。だがまもなく、人類がどこでどのように進化してきたのかを解き明かす初の手がかりとなった。ただし、それは決して簡単な道のりではなかった。 1920年代、科学者たちは人類の先祖の化石を求め、世界中を探しまわっていた。人類がどこで進化したのかという疑問は未解決のままで、チャールズ・ダーウィンはアフリカの可能性があると述べていたものの、当時最も注目を集めていたのは、ヨーロッパとアジアだった。 1924年末、南アフリカで解剖学を学んでいたジョセフィン
バッティスタ・アグネスが製作した、『ポルトラーノ海図帳』に載っている世界地図(写真)のように、古地図では頬を膨らませた人間の顔の絵で風向きを表すことがあった。元々は船乗りのための実用的な道具として13世紀に作り出されたポルトラーノ海図は、その後、流行りの芸術作品になっていった。(PHOTOGRAPH COURTESY THE SUNDERLAND COLLECTION) 地球と星にまつわる謎に魅了されてきた人間は、太古の昔から、探求の成果をさまざまな形で記録してきた。2世紀中頃、エジプトの学者クラウディオス・プトレマイオスが、地図上の位置を表すのに等しく分けられた経緯線を使って地理学に革命がもたらされた。16世紀には地理学者ゲラルドゥス・メルカトルが3次元の地表を2次元に表現する独自の投影法を考案。この「メルカトル図法」は、今でも多くの世界地図で用いられている。(参考記事:「16世紀の世界
アフガン・ハウンドの「ホープ」は、飼い主のヘンリーさんと同じワイルドな毛だ。英国の写真家ジェラード・ゲシングス氏は、飼い主に似ているイヌをテーマにした写真シリーズの一環として、このペアを撮影した。(Photograph by Gerrard Gethings) 世界中でおこなわれた15の研究をレビューした最近の論文で、イヌとその飼い主は見た目と行動が似ているだけでなく、共に過ごす時間が長くなるにつれて性格の類似性が深まっていくことが示された。論文は2024年9月29日付けで学術誌「Personality and Individual Differences」に掲載された。イヌは飼い主に似るという説を裏付ける科学的根拠がまたひとつ加わった。 多くの研究で、ボランティアの被験者にイヌと飼い主の写真を正しく一致させられるかを調査していた。その結果、正解の割合が偶然の確率(チャンスレベル)を上回る
ヒマラヤ山脈のスピティ谷の砂漠を包み込む夜空のパノラマ。こうした風景を見て畏敬の念に打たれることは心身の健康に良いことが、近年、科学的に証明されはじめている。(Photograph by Navaneeth Unnikrishnan) 今や多くの人にとって、天の川を見ることは滅多にない贅沢な体験になっている。光害(ひかりがい)により、世界の人々の3分の1以上が天の川を見られなくなった。北米では約80%だ。人口の増加と都市化により、夜を照らす人工の明かりは世界中で増えている。(参考記事:「天の川見えない人口、欧州60%、北米80%」) 世界の夜がますます慌ただしく、明るくなっている今、静かで暗い夜空を求める人々が増えている。各地の「星空保護区」が、観光地として人気を集めている。人々は光害から逃れて暗闇の中で安らぐために、米カリフォルニアのデスバレーやニュージーランドのテカポ湖にトレッキングに
ネコがニャーと鳴くのは人に対してだけだが、何を言わんとしているのかを理解するのは難しい。(PHOTOGRAPH BY MARTIN POOLE, DIGITALVISION / GETTY IMAGES) 「ネコにはボキャブラリーがあります。そして、注意を払っていれば、飼いネコをより理解できるようになります」と言うのは、飼いネコのニーズを理解する「最高のツールの提供」を目指したAI(人工知能)アプリ「にゃんトーク(MeowTalk Cat Translator)」の生みの親であるセルゲイ・ドレイジン氏だ。にゃんトークは無料アプリで、飼いネコの鳴き声を録音すると、「イライラしてる(I’m annoyed)」「餌ちょうだい!(Feed me!)」など、短いせりふに翻訳してくれる(編注:一部サービスは有料)。 翻訳の精度を評価できるようになっており、それによってコンピューターモデルが改良されてい
2022年6月29日、米国アイダホ州ヘイリーのフリードマン記念空港を移動中のプライベートジェット。毎年7月になると、世界で最も影響力のある人々がサンバレー会議に出席するためにプライベートジェットでやってくるため、この小さな空港は危険な3Dテトリス状態になる。(Photograph by Ellen Hansen, The New York Times/ Redux) プライベートジェットの利用が急増している。11月7日付けで学術誌「Communications Earth & Environment」に発表された論文によると、プライベートジェットからの二酸化炭素(CO2)排出量は2019年から2023年までの間に46%も増えており、その最大の要因は超富裕層による利用だ。 この研究によると、2019年から2023年までのプライベートジェットでのフライトの約半数が自動車での移動も可能な500キ
2005年8月29日に米国に上陸したハリケーン・カトリーナは、米史上最大級の被害を出した。こうした災害の被災地では幽霊の目撃談がたびたび聞かれる。 (Photograph by Erika Larsen, Redux) 奇妙なことに、壊滅的な森林火災、ハリケーン、記録的な洪水の後などには、幽霊を見たという話を実際によく聞くようになる。これには、自然災害によって大きな被害を出した地域の人々が受けるトラウマが関係しているようだ。 悲しみは脳に強い影響を与えると話すのは、災害精神医学の専門家レスリー・ハートリー・ギース氏だ。「愛する人を亡くした後、その姿を見たり声を聞いたりしたという人は多いです。そして、自分は頭がおかしくなったのだと思うのです」。ギース氏は、2023年にハワイで発生した山火事の生存者のカウンセリングを行った。(参考記事:「【解説】ハワイ王国の古都ラハイナで焼失した歴史的遺産」)
生物多様性が危機にあることを示す国内、国際2つの報告書が10月に相次いで発表された。 環境省と日本自然保護協会は、里山や里地に生息する鳥や蝶(チョウ)など身近な生物の個体数が急速に減少していることを示す報告書を10月1日に発表した。長期間にわたる大規模全国調査の一環の結果で、鳥類ではスズメやオナガなどの種が、また蝶類では国蝶のオオムラサキといった以前はなじみ深かった種が、絶滅危惧種認定基準以上の減少率であることが明らかになった。 また、世界自然保護基金(WWF)は生物多様性の豊かさを示す指数が、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下したとする報告書を10月10日に発表。生態系は回復不可能な状況に近づいているなどと強い危機感を示した。 気候変動や森林破壊・環境汚染といった人為的要因によって絶滅の危機に瀕している生物は増え続けている。国連・生物多様性条約第16回締約国会議(COP
2024年7月19日、米シアトルで開催された音楽イベント「キャピトルヒル・ブロック・パーティー」で、チャペル・ローン氏のパフォーマンス中に最前列に集まったファンたち。ローン氏は同年にブレイクしたポップスターだが、8月に「ファンによる行き過ぎた行為に迷惑している」と発言し、セレブとファンとの距離感をめぐる論争を引き起こした。(Photograph by Chona Kasinger, The New York Times, Redux) 2024年にブレイクを果たしたポップシンガーのチャペル・ローン氏が、ファンによる行き過ぎた行為(ストーカー行為、望まない接触、彼女の友人や家族の安全を脅かすような接触)に対して8月に声を上げると、有名人とファンとの関係、いわゆる「パラソーシャル関係」の弊害について大論争が巻き起こった。 一般にパラソーシャル関係とは、例えば、一ファンが有名人を愛していても、有
アフリカゾウの子どもの中には、まれにおとなのゾウの糞を食べるものもいる。消化を助ける酵素を摂取しようとしているのかもしれない。(Photograph By Jasper Doest, Nat Geo Image collection) うんちが私たち人間のメニューに載ることはまずないが、多くの動物にとって、うんちは普通の食べ物だ。 科学者たちは、シカがアジアゾウの糞(ふん)を、イヌやキツネザルが人間の大便を、サラマンダーがコウモリのグアノ(糞化石)を食べていることを確認している。スペインのグアラ山脈ではメスのヤギがハトのグアノを食べているし、ブラジルの大西洋岸森林では、ネズミやオポッサムがカワウソのトイレを訪れて糞を食べている。 タンザニアで行われた研究では、ズキンハゲワシは、新鮮な死骸よりもタンパク質を豊富に含むライオンの糞に強い関心を示したという。2023年5月に学術誌「Vulture
その奇妙な外見から、ギンザメは多くの異名を持つ。写真はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島の沖で撮影されたスポッテドラットフィッシュ(Hydrolagus colliei)。(PHOTOGRAPH BY SHANE GROSS/ NATURE PICTURE LIBRARY) ニュージーランド沖の深海で、幽霊のようなサメの新種が発見された。幽霊のようなサメとは、世界中の海に生息する原始的な魚ギンザメのことで、“ラットフィッシュ(ネズミ魚)”“エレファントフィッシュ(ゾウ魚)”“ラビットフィッシュ(ウサギ魚)”などの別名もある。今回発見された新種は、英語ではオーストララシア・ナロー・ノーズ・スプークフィッシュと名付けられた。論文は学術誌「Environmental Biology of Fishes」に2024年8月に発表された。 大きな丸い目、とがった鼻、翼のようなひれを持つ
北極圏の気温は地球上で最も急速に上昇しており、そこに暮らす動物たちに困難をもたらしている。(PHOTOGRAPH BY OLE JORGEN LIODDEN/NATURE PICTURE LIBRARY) ホッキョクグマはワモンアザラシを狩るため、海氷を何キロも歩き、氷の割れ目や穴を探す。しかし、一部の地域で、氷がホッキョクグマの足を傷つけていることが明らかになった。北方に暮らす2つの集団が裂傷、脱毛、皮膚の潰瘍、そして、毛皮と主に足への着氷に苦しんでいるという報告が、10月22日付けで学術誌「Ecology」に発表された。ひどい2頭の例では、肉球に最大直径30センチの氷塊が着き、出血を伴う深い切り傷を負い、歩くのも困難な状態だった。 論文の著者は、米ワシントン大学の生態学者クリスティン・ライドラ氏とカナダ、ヌナブト準州環境局の野生生物学者スティーブン・アトキンソン氏だ。 アトキンソン氏は
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