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買ってよかったもの
pop1280.hatenablog.com
『アトランティック』★★★ 『海賊のフィアンセ』★★½ 『乙女の星』★★ マティ・ディオップ『アトランティック』(Atlantique, 2019) ダカールの高層ビルの建築現場で働く青年スレイマンは、彼と同じく貧しい家の娘アーダと恋仲である。しかし、アーダには親が決めた金持ちの婚約者がいた。彼女は家を捨ててでもスレイマンと一緒になるつもりだったが、現場で給料の未払いが何ヶ月も続いている状況に絶望したスレイマンは、アーダに黙って、仲間の男たちとともにボートで海を渡って新天地を目指す。しかし、やがて、彼らが乗った船は遭難し、みんな海の藻屑と消えてしまったという噂が流れてくる。スレイマンが死んだものと思ったアーダは、あきらめて婚約者と結婚するが、そんなとき、スレイマンの姿を見たものが現れる……。 非近代的な社会における恋愛を描いたメロドラマで嫌というほど繰り返されてきた物語──そんなふうに思わ
F・W・ムルナウ『都会の女』 [DVD] バズビー・バークリー『ゴールド・ディガース36年 [DVD]』 『サスペンス映画 コレクション 陰謀の世界 DVD枚組』 ジーン・ネグレスコ『深夜の歌声』、オットー・プレミンジャー『堕ちた天使』、ロバート・モンゴメリー『桃色の馬に乗れ』、ドン・シーゲル『仮面の報酬』、ロバート・シオドマク『クリスマスの休暇』、ジョセフ・H・ルイス『脱獄者の叫び』、ジーン・ネグレスコ『見知らぬ訪問者』ほか 『サスペンス映画 コレクション 脱獄の掟 DVD10枚組』 アンソニー・マン『脱獄の掟』、エリア・カザン『影なき殺人』、フリッツ・ラング『ハウス・バイ・ザ・リバー』、アイダ・ルピノ『ヒッチ・ハイカー』、ボリス・イングスター『3階の見知らぬ男』、ジャン・ルノワール『浜辺の女』、ヴィンセント・ミネリ『底流』ほか。 『ホラー ミステリー 文学映画 コレクション 笑ふ男 D
「ル・モンド」に掲載されたカトリーヌ・ドヌーブの(ものとされる)発言が話題になっている。#MeToo をきっかけに過剰になってゆくセクハラ告発に対して、女性の立場から異を唱えたものである。これに対しては、彼女の姿勢を称賛するものや、逆に、批判するものなど、日本でも様々な反応がすでに出ている。しかし、元の記事を読めばわかるように、ツイッターなどでドヌーヴの発言として言及され、リツイートされている言葉は、実は、どれも彼女自身が言ったものではないし、このテクストも彼女が書いたものではない(彼女の発言だという事実がどこかにあるのなら教えて欲しい)。 問題のテクストは、Sarah Chiche (作家・臨床心理学・精神分析), Catherine Millet (美術批評家・作家), Catherine Robbe-Grillet (女優・作家), Peggy Sastre (作家・ジャーナリスト・
6月24日に神戸映画資料館で行う予定の「連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見 第2回 ジョン・フォードと西部劇の神話──『駅馬車』をめぐって」(タイトルはいつものように適当につけたもので、実際の内容はちょっと違うものになると思います)が、あと一週間と迫ってきたので、さすがに焦っている。なんとか間に合わせるつもりだ。 それまでのあいだ、様々な映画監督がジョン・フォードについて語った言葉を、順次アップしてゆく(ほぼ毎日このページに追加してゆく予定)。フラーとヴェンダースの言葉は雑誌「リュミエール」掲載のテキストからの引用だが、それ以外はすべて筆者による拙訳である。急いで訳したもので、中には英訳からの重訳も混じっている。不正確な部分もあるかもしれないが、とりあえず今は、これでご勘弁いただきたい。時間の余裕ができたときに、再チェックするつもりだ。 古い記事だが、「ジャン=マリー・ストローブ、ダニ
"His people come to life simply and believably; more believably than most of the people in the Chabrol and Truffaut cinema... the film has a thematic and formal beauty that is remarkable." - Jonas Mekas "[…] the most exciting new filmmaker in recent years. Echoes of Silence, his first film, is a stunning piece of work." - Susan Sontag (ともに、『沈黙のこだま』についてのコメント) ピーター・エマニュエル・ゴールドマン『灰の車輪』(Wheel of Ashes
一昔前は、日本でインド映画といえば後にも先にもサタジット・レイ(「レイ」ではなく「ライ」と読むのが正しいらしいのだが、いまさら言われてもなぁ)のことだった。やがて、『ムトゥ 踊るマハラジャ』でインド製ミュージカル映画の空前のヒットと共にインド映画ブームが始まるころには、グル・ダットににわかに注目が集まり、回顧上映が行われることもあった。そのころには、サタジット・レイは、かつての評価など何かの間違いだったとばかりに完全に忘れ去られていたが、しばらくすると、グル・ダットもほとんど上映されることもなくなり、半ば忘れ去られていく。いつもながらの光景だ。その時々の流行で、誰かに注目が集まると、その陰で、他の重要な作家たちのことはあっさりと忘れ去られてしまう。インド映画に限ったことではない。ニュー・ジャーマン・シネマがブームになったころも、ヴェンダースに注目が集中し始めると、ヘルツォークやファスビンダ
クロード・ファルラド『テムロック』(Themroc, 1973) ★★★ またしても奇妙奇天烈な映画を発見してしまった。いろんな映画を見てきたつもりだったが、まだこんなものが残っていたとは。つくづく映画とは奥が深いものだ。 それにしても、アンダーグランドの底深いところで作られた映画ならともかく、ここにはミシェル・ピコリを始め、『クレールの膝』のベアトリス・ロマンや、ミュウ・ミュウといった名の知れた俳優たちも多数出演しているのだから、なおさら驚く(その多くはカフェ・ド・ラ・ガールの団員である)。ミシェル・ピコリは数々の風変わりな役を演じてきたが(その最たるものは、『最後の晩餐』『Dillinger è morto』などのマルコ・フェッレーリが監督したいくつかの作品である)、この映画のピコリの役は、彼が生涯に演じたあらゆる役のなかで最もエキセントリックなものといえるかもしれない。 見始めてまず
ウジェーヌ・グリーン『La Sapienza』(2014) ★★½ ただの覚書。 ほとんど棒読みのような抑揚のない台詞回し(アルティキュラション、書き言葉的なリエゾン)、カメラに真正面向いて話す俳優たち、そのミニマムな演技。似て非なるものだとあらかじめ断った上で、「ブレッソン的」と言いたくなる禁欲的スタイル(あるいは、『繻子の靴』のオリヴェイラ)。それでいて、ブレッソン作品のような画面連鎖のサスペンスは皆無。要するに、いつものウジェーヌ・グリーン……。 といえばそれまでだが、なかなかに興味深い内容で、最後まで飽きずに見られた。成功作といってもいいだろう。実際、このアメリカ生まれのヨーロッパ映画作家の長編第5作目となる本作は、彼の映画としては例外的に、映画祭などを中心に世界各地で頻繁に上映され、アメリカにおいても、グリーンが本格的に紹介されるきっかけになった。 『La Sapienza』を一
ジョセフ・ロージー『拳銃を売る男』 Imbarco a mezzanotte (Stranger on the Prowl/Encounter) 52 『大いなる夜』撮影時にすでに自分の名前が日米活動委員会のブラックリストに載ることを知っていたロージーは、アメリカから逃げるようにして次作をイタリアに撮影しに行く。それがこの『拳銃を売る男』である。すでにブラックリストに名前が載っていたロージーは、アンドレア・ファルサノという偽名でこの映画を撮ることを余儀なくされた。一説によると、この作品はブラックリストに載った映画作家によって初めて海外で撮られた作品であるという。ロージーの長い長い亡命生活はこの作品とともに始まったのである。 製作会社のリヴィエラ・フィルムズというのはどうやらブラックリストに載せられた作家たちが海外で映画を撮るために作り上げた会社らしいが、詳細は不明である。『拳銃を売る男』は
ジョン・ファロー『夜は千の眼を持つ』(Night Has a Thousand Eyes, 47) 真夜中、鉄橋から線路に身を投げて自殺しようとする女を、恋人らしき男がぎりぎりの瞬間に駆けつけて救い出すところから映画は始まる。「空に輝く星々が千の眼のように自分を見ている。この星の下で自分は死ぬ運命なのだ」と、世迷い言のようなことをつぶやく女。男が彼女を連れてレストランに入ると、まるで2人が来ることを予期していたかのように一人の男(エドワード・G・ロビンソン)が彼らを待っている。女が自殺を図ったのは、実は、彼女は星の輝く夜に死ぬとロビンソンに言われたからだった。ロビンソンは、自分には予知能力があるのだといって、信じがたい話をし始めるのだった……。 コーネル・ウールリッチ原作の映画化。ダークな雰囲気や、回想で始まる語りは、完全にフィルム・ノワールのものだが、お話自体は現実離れしたファンタスティ
セルゲイ・ロズニツァについての覚書 「わたしは何よりも観察者なのです。自分にとって一番重要なのは距離の問題です。キャメラを用いることによってそこに現れ、映画をかたちづくる距離が問題なのです。」(セルゲイ・ロズニツァ) セルゲイ・ロズニツァ(1964- ) ドキュメンタリー作品で知られるウクライナの監督。 64年、ベラルーシ生まれ。キエフに育つ。 87年、Kiev Polytechnic Institute を応用数学の学位を取得して卒業すると、87年から91年まで Kiev Institute of Cybernetics で人工知能に関わる仕事にたずさわる。それと同時に、日本語通訳の仕事もしていたというから、どこかで日本語を身につけていたらしい。 しかし、自分の仕事に虚しさを覚えていたロズニツァの興味は、やがて、文学や芸術や映画のほうに向かいはじめる。ソ連崩壊という社会の大きな転換も、彼
<<映画史のミッシング・リンクを探る(1)>> バーバラ・ローデン 女優で、エリア・カザンの妻。1970年、唯一の監督作『ワンダ』Wanda を撮りあげた直後に病死。 『ワンダ』は一言でいうなら、女性映画ということになるだろう。この映画が撮られたのは、アメリカにウーマン・リヴ運動がすでに定着していた頃だ。しかし、夫と子供をあっさりと捨てた直後に、たまたま知り合った男にすがりつくようにつき従い、ついには強盗まで働いてしまう「受動的」ヒロイン、ワンダはフェミニストたちからも総スカンを食らった。 こうしてこの映画はアメリカ本国ではほぼ黙殺されることになる。しかし、シネフィルの王国フランスで公開されると、『ワンダ』は批評家から高い評価を得る。映画を見たマルグリット・デュラスは、この映画を公開するためならなにを差し出してもいいとまでいって絶賛。デュラスの『ワンダ』についての発言は『緑の眼』 に収めら
映画監督谷口千吉が、先月29日に肺炎のため亡くなった。『ハイ・シェラ』や『死の谷』を思わせる作品構造を持ち、日本のボガートこと三船敏郎を世に売り出すきっかけとなった『銀嶺の果て』など、少なからぬ佳作を撮りながら、同期の黒澤明の陰に隠れて目立つことはなかったひとである。 ところで、谷口千吉が66年に東宝で撮った『国際秘密警察 鍵の鍵』というアクション活劇がある。この映画は、アメリカでは、What's Up, Tiger Lily? というタイトルで知られている。正確に言うと、二つは同じ作品ではない。What's Up, Tiger Lily?は、ウディ・アレンが『国際秘密警察 鍵の鍵』にでたらめな英語の吹き替えをつけて、まったく別の作品にしてしまったものなのだ。 谷口のオリジナルは、実は見ていない。キネ旬のデータベースで調べてみたが、あらすじが詳しすぎて、何度読んでも話がわからなかった。要は
日本ではほとんど知られていないが、幻想映画の巨匠として海外ではかなり有名なベルギーの映画作家ハリー・クメール(Harry Kumel)の映画を2本。Kumel は「クーメル」と読む方が正解である気がするのだが、一般にはこういう表記になっているようだ。 『赤い唇』Les levres rouges (1971) ベルギーの保養地オステンドにある海辺のホテルを舞台に繰りひろげられる吸血鬼物語。旅行でこの土地を訪れた新婚夫婦が、ミステリアスな伯爵夫人と出会ったことがきっかけで、奇妙で不気味な世界へと引き込まれてゆく。 伯爵夫人の名前がエリーザベト・バートリ( ボロヴツィクの『インモラル物語』にも登場する史上名高い連続殺人者で、吸血鬼伝説のモデル)であることをのぞくと、この映画に吸血鬼映画らしいところはほとんどない。「ドラキュラ」はもちろん、「吸血鬼」という言葉も出てこないし、血を吸う場面さえほと
ジャン=クロード・ルソーとの対話 シリル・ネラ [仏 capricci から出ているジャン=クロード・ルソー『閉ざされた谷』の DVD に同封されているブックレットのなかに、ルソーのインタビューが収められている(ちなみに、この DVD には、仏版 DVD としては珍しいことだが、なぜか日本語字幕がついている)。 先日、同志社でルソーの映画を何本か見、そのとき来日していたルソーの話を聞いたこともあり、なんとなく勢いで訳しはじめてしまった。いつものように気まぐれでやってるだけなので、面倒くさくなったら途中でやめるかもしれないが(その可能性は大いにある)、もう少しは続けるつもりである。 インタビューだが、訳文では口語的な表現にはあまりこだわらず訳してある。] ──『閉ざされた谷』の起源はどのようなものだったのですか。映画の出発点となる出来事があるとすればどのようなものでしょう。 出発点となる出来
ポール・ヴェキアリ(「ヴェッキアリ」という表記もあるが〔こちらの方がフランス語の綴り通り〕、どちらが正しいのか)の『Femmes femmes』を約20年ぶりぐらいに見直した。フランスに住んでいたときに図書館でビデオを(当時はもちろん DVD などなかった)借りて見たと思うのだが、ひょっとしたらテレビで見たのかもしれない。いずれにしろ、映画館で見たのでないのは確かだ。 この映画のことを知ったのは、その頃読んだジャン=クロード・ビエットの映画批評集『作家の詩学』によってだったと記憶している。この本の裏表紙に、パゾリーニの『ソドムの市』で『Femmes femmes』の一場面を演じるソニア・サヴィアンジュとエレーヌ・シュルジェールのスチール写真が使われているのを見れば、ビエットにとってこの映画がどれほど重要であったかを推し量ることができるだろう。 「『Femmes femmes』は、道しるべと
このくくりで書くのはひさしぶりだ。今回紹介するのは、ポーランド映画『サラゴサ手稿』(『サラゴサの写本』)(65)。まさにカルト中のカルト映画である。『砂時計』で知られるヴォイチェフ・ハス監督が、18世紀ポーランドの作家ヤン・ポトツキの手になる世紀の希書として名高い同名小説を映画化したもので、ハスを国際的に認知させるきっかけとなった出世作だ。日本ではいまに至るまで正式公開されたことはなく、ビデオ・DVD 化もされていない。わたしの知る限りテレビで放映されたこともないはずである。 『サラゴサ手稿』はブニュエルが溺愛したことでも知られる作品だ。実は、わたしもこの作品のことを最初に知ったのはブニュエルの自伝によってだったと記憶している。そういう人は多いのではないだろうか。手元の北米版 DVD のパッケージには、「ポトツキによる小説『サラゴサ手稿』も、ハスによる映画も、どちらも大好きな作品だ。この映
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『Le monde sur le fil』(Welt am Draht) テレビ向けに撮られた作品で、ファスビンダー唯一のSFといわれている。 巨大な記憶装置によって作り出される仮想現実の世界、《シミュラクロン》を開発した科学者が謎の死を遂げる。主人公である彼の後任の科学者の周りで、奇妙な出来事がつぎつぎと起きてゆく。彼の同僚が突然姿を消すが、誰も彼の存在を記憶していないし、コンピュータにも記録が残されていない。やがて彼は、自分も仮想現実の産物ではないかと考えるようになる……。 『あやつり糸の世界』はしばしば、『マトリックス』や『イグジステンズ』の先駆的作品であるといわれる。コンピュータとつながれたヘッドギアをかぶると仮想現実のなかへ入ってゆける設定になっているところなど、『攻殻機動隊』の世界観と通じる部分も多い。けれども、サイバーパンクSF的とでも呼べ
境界線 ──ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ、ジョン・フォードを語る ──『歴史の授業』を上映後の議論を思い出します。その中で、この作品とホークスの『三つ数えろ』が比較されました。どちらの作品においても、調査をする人物が、もつれた糸をほどき、人々と出会い、彼らに質問をする。これはつまり、あなたの映画ではフォードよりもホークスの存在のほうが、明白で明らかだということです。同意なさいますか? ジャン=マリー・ストローブ(以下、JMS):『歴史の授業』は反ホークス的映画だ。クレーンによる細分化された上下移動は、ホークスとは何の関係もない。われわれが撮った映画の中にホークス的作品があるとするなら、それは『オトン』だ。われわれの映画がフォード的かどうかということについては、答えない。それはうぬぼれがすぎる。そんな役目はチミノやコッポラに任せるよ。フォードと自分を比べるなんてごめんだ。 ─
ツイッターに発表された青山真治による2010年のベストテン 1、ナイト&デイ 2、ゴダール・ソシアリスム 3、シャッター・アイランド 4、ブロンド娘は過激に美しく 5、インビクタス 6、第9地区 7、スプリング・フィーバー 8、クリスマス・ストーリー 9、バッド・ルーテナント 10、ローラーガールズ・ダイアリー (『ナイト&デイ』はわたしも1位です。『シャッター・アイランド』の評価が高いですね。そんなによかったですかねぇ? とにかく予告編が悪かったですよ。あれじゃ見終わったあとにがっかりするでしょ。)
「フィルム・コメント」誌に掲載された蓮實重彦のベスト10 1.刑事ベラミー 2.第9地区 3.ゴダール・ソシアリスム 4.冷たい雨に撃て〜 5.ゲスト 6.ナイト・アンド・デイ 7.アウトレイジ 8.テトロ 9.ブンミおじさん 10.アンストッパブル +何も変えてはならない だそうです(ツイッターからの転載なので未確認)。『第9地区』評価高すぎ。『ゲスト』はたぶんゲリンの作品。
映画批評家ジャン・ドゥーシェの主著の一つ『愛する技法』(L'art d'aimer) の冒頭に収められた同名の評論「愛する技法」を試訳してみた。 ジャン・ドゥーシェは、50年代の終わりに「カイエ・デュ・シネマ」と「アール」誌で映画批評を書き始めた*1。ロメールや、トリュフォー、ゴダールとくらべるとちょっと遅れてやってきたかたちである*2。もっとも、1948年からメッシーナ通りのシネマテークに通っていたドゥーシェは、この頃には彼らとは旧知の仲であり、同じ映画作家たち、とりわけアメリカ映画の監督たちへの愛を共有しあっていたはずだ。 ネガティブな批評は居心地が悪いというドゥーシェの批評の根底には、常に、作品への愛がある。まず作品への愛がなければ話にならない。感性や、直感によって、愛する作品を深いところで理解する。そして、その愛する作品を人に伝えるのが批評の役目だというドゥーシェの姿勢はわかりやす
The summer was hot that year, and with the breaking of the warm weather came the prospect of a full-time job for Richard Grey. His friend at the BBC put him in touch with the head of films at Ealing, the place where his film career had begun, and after an interview he was told that a staff job would be his from the first week in September. Christopher Priest The Glamour 『プレステージ』でSFファン以外にも多少は知られるよう
Delmore Schwartz, In Dreams Begin Responsibilities and Other Stories とりあえず、表題作の "In Dreams Begin Responsibilities" を読む。 自分の父と母が結婚する前(つまりは自分が生まれる前)のある日の光景を、語り手が、夢でも見るように映画館で見ているという摩訶不思議な短編小説。1909年のある日の光景を映しだすそのフィルムは、バイオグラフ社のサイレント映画のようだと、語り手によって形容されている。「珠玉の」という言葉はこの小説のためにあるのかもしれない、と思わせる、実にユニークな作品だ。 この小説もローゼンバウムの本で知った。デルモア・シュワルツは日本ではほとんど無名の作家といっていいだろう。翻訳も数えるほどしか出ていない。このユダヤ人作家は、ほとんどこの短編集一つで、というかこの表題作一
イタリアのホラー映画について書かれた文章などで、"Giallo" とか "Giallo movie" といった言葉をよく眼にすることがある。ホラー映画のサブジャンルらしきことはだいたい文脈から予想がついていたが、ちゃんと調べてみたことがなかった。"Giallo" とはいったいなんなのだろう。お手軽だが、まず Wikipedia をあたってみた。 Giallo (pronounced IPA: ['ʤallo]) is an Italian 20th century genre of literature and film. It is closely related to the French fantastique genre, crime fiction, horror fiction and eroticism. The term is also used to mean an ex
チャールズ・バーネットは、アメリカがもつことの出来たもっとも才能豊かで、もっとも重要な黒人映画作家である ジョナサン・ローゼンバウム いや驚いた。知る人ぞ知る伝説の作品、チャールズ・バーネットの Killer of Sheep の DVD が出てしまった。というか、去年の11月に出ていたことに、いまごろになって気づいた。もちろん米版である。日本で出る可能性はゼロに等しいだろう。 チャールズ・バーネットは日本ではほぼ無名といってよく、スコセッシがプロデュースした「ブルース・プロジェクト」の一作、『デビルズ・ファイヤー』などの近作が1,2本公開されているだけであり、代表作の Killer of Sheep は公開されたこともなければ、ほとんど上映されたこともない。また、いかなるかたちでも、ソフト化されていないはずである。 70年代の終わりに UCLA の学生だったアレックス・コックスは、その数
ダリが描いたハーポ・マルクスの肖像 われわれが見た最初のマルクス兄弟の映画、『けだもの組合』は、私ばかりでなく、誰の眼にも、一つの異常なもの、日常的な語や映像の関係からはふつう生まれ出ない特殊な魔術を、スクリーンという手段によって解放したものと映った。そして、もし、シュールレアリスムと呼ばれる、精神の特徴的な状態、明白な詩的段階があるとしたら、この『けだもの組合』は、まさに完全にそれに加わるものである。 アントナン・アルトー 私の作品に最も影響を与えた人物が3人います。それはグルーチョ、チコ、そしてハーポ・マルクスです。 ウジェーヌ・イヨネスコ ハルポマルクス神の糞より生まれたり 西東三鬼 あなたの肖像写真が手元に届き、歓喜しております。この写真は、すぐにも額縁に入れて、W・B・イエーツやポール・ヴァレリーなど、他の著名な友人たちの写真と隣り合わせに、我が家の壁に飾られることになるでしょう
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