韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、令状なしの拘束を可能にするなど国民の権利を著しく制限できる「非常戒厳」の宣布という極端な手段に突如、走ったかに見える。だが、今回の動きにつながる独自の政治観と危機意識を就任前からのぞかせていた。 その政治観は3日夜の緊急談話にも表れた。「私は北朝鮮共産勢力の脅威から国を守り、国民の自由と幸福を略奪する従北勢力を撲滅し、憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」 「共に民主党」など野党側は北朝鮮に従う「従北勢力」で「内乱を画策する犯罪者集団」だと非難し、戒厳はそれを一掃するために不可避の措置だという主張だ。 従北勢力が暗躍する社会を正常化させる必要があるとの認識は大統領選への出馬を決めた2021年から見せていた。尹氏が反対論を押し切って日本との関係改善にかじを切ったのも、北朝鮮や従北勢力から国を守るためには、日米韓の安全保障協力が不可欠との強い信念が背