すこし前に読んで書評を書こうと思ったまま、しばらく時間がたってしまった。忘れないうちに、幾つか思いつく点を書いておく。 この本は日本の原子力の歴史に関しては最良の書だろうと思う。戦前からこの本が書かれた時期までを手際よく通観しているだけでなく、大量の情報を扱いつつ、冷静になされたその社会的・政治的分析はお見事としかいいようがない。日本の原子力の歴史に興味のある人は、とりあえずはこれから読むのが良いと思う。ただ問題は、第一に現在品切れ中で、かなり高値の古書としてしか入手できないこと。ただ、図書館で見ることはできるだろう。第二に、ドキュメンテーションがほとんどなく、出典が不明な論点が多いこと。これは学術書としては致命的だが、おそらく著者は、この後によりくわしい決定版を書く予定なのだろう。ぜひとも早く出ることを願う。 この後者の点を除けば、これは技術の社会史的な研究として、傑作であり、いろいろな