危機感を認識・共有するために学部変革の第1ステップは、学部がいかに危機に直面しているかという現状を把握することです。次に、その危機感を学部全体で共有していきます。 このステップは簡単にみえます。実際、IR部署にお願いすれば、データはすぐに集まるでしょう。しかし、前述のコッター教授は、「私がこれまで見てきた企業だけでも、この段階でつまずいてしまうケースが過半数を占める」と述べています。実はこのステップはそんなに簡単ではないのです。 なぜなら、人には「正常性バイアス」があるからです。正常性バイアスとは、心理学の用語で、「自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりするという認知の特性のこと」と説明されます。災害時に人が避難せず、逃げ遅れることがあるのは、危機が直前に迫っていても、「大したことじゃない」と思い込んで現実を直視しなくなるからだと言われています(参考:広瀬弘忠(2004)『人