著書『日本ファシズム批判』(1932年)が発禁処分をくらうなど、大正デモクラシーきっての評論家・長谷川如是閑が、有志らとともに自ら創刊した雑誌『我等』の巻頭言(1929年1月号)で、デンマーク陸軍大将フリッツ・ホルムが起草し制定を促すべく各国へ配布した「戦争を絶滅させること受合ひの法律案」(「戦争絶滅受合法案」)なるものを取り上げている。たとえホルム大将や法律案起草が架空のものであったとしても、長谷川がのちに貴族院議員として日本国憲法制定に参加したことからして実に興味深い。ここにその巻頭言「戦争絶滅受合法案」(「長谷川如是閑集 第二巻」岩波書店刊)を紹介するが、今もって、けだし妙案であろう。(江原 元) 世界戦争が終つてまだ十年経つか経たぬに、再び世界は戦争の危険に脅かされ、やれ軍縮条約の不戦条約のと、嘘の皮で張つた太鼓を叩き廻つても、既に前触れ小競り合ひは大国、小国の間に盛に行はれてゐる