シェークスピアの小説には、しばしば奇妙な人物が登場する。有名なのがサー・ジョン・フォルスタッフだ。シェークスピアの「ヘンリアド」と呼ばれる4部作に出てくる人物のことだ。 この人物は、表と裏をあわせもち、味方なのか敵なのかわからない。正義を装い、賄賂を要求する。いわば破廉恥漢である。しかし、憎めない性格で、世知辛い世界をしっかりと生き抜く力をもっている。戯曲や小説には、話を盛り上げるためにも、この手の憎めない「輩」が必要だ。 しかし、このような手合いが現実に政治を司るとどうなるであろうか。ちぐはぐを通り越して、てんやわんやになるかもしれない。 戦争の世紀だった19世紀のヨーロッパ 19世紀後半のヨーロッパは戦乱に明け暮れた。クリミア戦争(1853〜1856年)、イタリア独立戦争(1859年)、普仏戦争(1870〜1871年)など、年がら年中戦争をしていたといえる。もちろん、これが産業を潤し、