生徒が「これ、何」「なんで」と身を乗り出す教科書を。そう考えた現役教員やOB・OG30人余りが中学の歴史教科書をつくり、検定に合格した。途中、ダメ出しされたのは400件近く。現場の先生から見た教科書とは。初めての検定はどうだったのか。 お金出し合い、出版社設立 「ほっとしました」「やった」。合格の報を受け、執筆した教員らから笑みがこぼれた。6年越しの努力が実った瞬間だった。 現場の教員で教科書をつくる。そんな話し合いが、都内の社会科教員有志の研究サークルで始まったのは2009年秋だった。 これまでの教科書は、重要な語句を太字にし、暗記させるスタイルだ。「それでは生徒が乗ってこない」「子どもがページをめくり、次も読みたくなる本がぜひほしい」。話がどんどん膨らんだ。「教えやすい教科書ではなく、子どものための本をつくる。それが出発点だった」。会の代表で元中学校教員の安井俊夫さん(80)は振り返る